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ヘリテイジソフテイルクラシック ~2

射精を実感したことで、気分もすこし落ち着いていた。
ふすまを閉じた私は、未練たらしく、聞き耳を立てている。何故かそうするべきと思ってしまった。
DVDは繰り返し映画のトップメニューを再生し続けていた。いい加減うっとうしいが、止めるわけにもいかない。


「気持ち…よかったです。こんなの初めて」
「そうか。よかったな」
「わたし、どうでした?」
「聞かなくてもわかるだろ」
「ひあっ…う、うれしい。ああっはあ、ちくび、恥ずかしい。あん。俊介、さん。また、こんなに堅くなってます」
兄が、汗や愛液まみれになっている良子の身体を拭いているようだ。時に敏感な部分に触れるのだろうか、良子の声も艶かしい。
「そうだな。でも、もうゴムがないぞ」
「あ…そうか。じゃあ…」
「メシ、フロ、セックスのあとは寝る。だな」
さっきまでにいくつコンドームを使ったのかわからないが、兄が膣内射精だけは控えてくれていたようで、安堵する。
この饗宴もようやくお開きだろうか。私は、夜が明けてからどんな顔をすればいいのだろう。二人はどんな顔をしているだろう。
そんなことを考えていた。

「うっ、ああん、や、いい、ああ指、ゆびが、ああ。意地悪しないで」
「お前がかわいいからだ。どうする?どうしたい?どうしてほしい?いもうとさん」
「ああ…俊介。して…わたし、したい」
「まだし足りないのかい?だろうな。拭いても拭いても、いやらしい汁があふれてくるもんなぁ」
「良子、動くぞ」
「あ、ああっ、おああぁ!…んぅ、んひぃ」
テーブルが静かに軋む。兄が注挿を再開して、良子は一際大きな声をあげた。
寝室で眠りこけている、間抜けな私を起こしはしないかと思ったのだろうか、自分の手を噛んでそれを抑えようとしている。
私はここで嫉妬と焦燥感が頂点に達した。
良子はここがどこで、自分が誰と、何をしているのか。そしてその意味がわかっているのだ。

「スローイン・ファーストアウトってな。ふふ。良子、知ってるよな?ははっ」
「もう…」
「拗ねるなよ。悪かったって。ほら、ここでリーンイン」
「ひ?んあぁ、しゅん…俊介ぇ…すごい。ああ」
「まだイくんじゃないぞ。もう少しだ。わかってるよな?」
「なんでぇ?無理よむりぃ…もう、あ、あっは。そこ、ひゃ嫌嫌いや死ぬ!クリだめぇ!抓っちゃやだぁ!ああ、ダメ、いく…」
絶頂を宣言したというのに、座卓の軋む音は止まらない。座卓に力なく投げ出された良子の手が、ゆらゆらと動く。
「おい、勝手に気を遣ってんじゃねえよ。ほらっ」
「あっあっ、いまだめ。今、あ、はぁっはぁっ。あ、あは、あはははは」
良子がこんなにはしたない啼き声をあげる女だというのを、私は初めて知る。

私とのセックスの時は、吐息を漏らすか、控えめな喘ぎ声を出す程度だった。
それでも良子の秘所は存分に濡れていたし、膣内に射精した時は快楽を感じてひくひくと身体を戦慄かせていた。
心地よい倦怠感の後の、長い抱擁とキス。指を絡ませて愛を囁きあう。おとなしい良子との静かなセックスで、私は満足していた。
「いい、いいよぅ。しゅんくんのちんぽ、ひっく、きもちいいよう。ぐすん。」
「何、泣いてんだよ。うっ、子供、みたいだな。ええ?おい?」
「せんぱいに、おまんこいじわるされるの、ぐす、ずっとまってたのぉ。うれしくて、もっと、もっと。わたし、ずず。ひっく。」
「かわいいやつだな、キスさせろ。涙なめてやるから顔上げろ。鼻水も舐めてやるよ。はは」
兄は、いともたやすくその壁を破り、刺激と快楽を積み重ねて造られた階段を登っていく。
その先にある絶頂の扉を蹴破り、さらにその先へ。二人で手を取り合って。私の妻。良子と共に。


射精を実感したことで、気分もすこし落ち着いていた。
ふすまを閉じた私は、未練たらしく、聞き耳を立てている。何故かそうするべきと思ってしまった。
DVDは繰り返し映画のトップメニューを再生し続けていた。いい加減うっとうしいが、止めるわけにもいかない。
「気持ち…よかったです。こんなの初めて」
「そうか。よかったな」
「わたし、どうでした?」
「聞かなくてもわかるだろ」
「ひあっ…う、うれしい。ああっはあ、ちくび、恥ずかしい。あん。俊介、さん。また、こんなに堅くなってます」
兄が、汗や愛液まみれになっている良子の身体を拭いているようだ。時に敏感な部分に触れるのだろうか、良子の声も艶かしい。
「そうだな。でも、もうゴムがないぞ」
「あ…そうか。じゃあ…」
「メシ、フロ、セックスのあとは寝る。だな」
さっきまでにいくつコンドームを使ったのかわからないが、兄が膣内射精だけは控えてくれていたようで、安堵する。
この饗宴もようやくお開きだろうか。私は、夜が明けてからどんな顔をすればいいのだろう。二人はどんな顔をしているだろう。
そんなことを考えていた。

「うっ、ああん、や、いい、ああ指、ゆびが、ああ。意地悪しないで」
「お前がかわいいからだ。どうする?どうしたい?どうしてほしい?いもうとさん」
「ああ…俊介。して…わたし、したい」
「まだし足りないのかい?だろうな。拭いても拭いても、いやらしい汁があふれてくるもんなぁ」
「それは、だって、あなたが、うう。クリだめいや、またいく…」
良子の声がだんだん熱を帯びてきた。
兄もどうせやる気満々だろうに、白々しくとぼけている。
「おちんちん、舐めればいいの?そしたら、またしてくれるの…?かわいがってくれるの…?」
「フェラしてもらうのもいいが、俺だけ気持ちよくなってもな」

兄の口調が、だんだんと強くなっていく。子供のころ兄に叱られた記憶がよみがえる。あれはキツい。
「ゴムがなくてもハメてやるさ。なにしろ今日初めてお前のまんこを味わったんだからな。俺も、正直まだ堪能したいんだぜ」
「わたしも、もっとして欲しい…ねえ、キスして。しゃぶらせて、おちんちんちょうだい」
「気が早いな。けど、だめだ。良子、おちんちんだと?かわいい呼び方じゃないか。俺のは、そんなにかわいいか?」
「ペニス、おちんぽ、ちんぽ。ああ、はやくぅー、なんで、触るだけなのぉ?お願い、もう」
何かの遊びをしているように、兄は良子を追い詰めていく。良子はたやすく追い詰められ、自ら深みにはまっていく。
今夜も良子はそうやって罪悪感を、羞恥心を剥がされていったのだろうか。

今となってはどちらが先に誘ったかなど、些事でしかないのに。こんな事をしている私が、気にしてもしょうがないのに。
「もう、欲しがってるの、はしたないおまんこが、ちんぽ入れてもらいたがっってるの。ああ、いじわるしないで…
 何でもいいから、俊介さんの好きなところでいいから、ちんぽハメてぇ!」
「そういや便所、長かったなぁ。浣腸してたのか?また学生のころみたいに、ケツでしてもらいたくて、トイレにこもってたのか?
 …ケツでいかされたくて、穴をきれいきれいしてきたのか?」
「あああ!」
「俺のちんぽの味を、ケツが思い出しちまったのか?おや。どうした?なんで自分でいじってるんだよ。教えてくれよ。
 どうして自分のアヌスを、そうやって、気持ちよさそうにいじってるんだ」
「はあ、あっ、あっああ」

おかしいと思っていたのだ。会話の端々から二人は以前から親密な関係にあったのは推測できた。
私と良子は、お互いが初めての相手だった。これは間違いないのだ。それなのに、なぜ、兄は良子の身体をよく知っているのだろうと。
良子は、なぜ兄とのセックスに馴染んでいるのだろうと。
私達が交際を始めてから、兄と良子が会った回数も、両手の指で足りる程しかない。
その僅かの間にこういう関係になったのだろうかと私は思っていたのだが、事実はもっと残酷だった。
良子は言っていた。学生時代の兄は連れている女性が日替わりでローテーションしていた。
成る程、良子が何曜日の女だったかは知らないが、兄は良子が処女のまま、アナルセックスを仕込んでいたという事か。
何人も女性を侍らせていれば、そういう趣向で楽しむための女が欲しくなるのかも知れない。
だが、それが何で、よりによって良子なのか?どうして、私はそんな男の弟なのか!


「ゆびが、ああ、いい…おしり…気持ちいいからです…」
「…へぇ?じゃあ、オナニーでもしてれば?」
「あ、あの」
「何ていえばいいか、わかってるよな。どうすればいいか、覚えてるよな?」
「………わ、わたしは、おまんこにちんぽハメてもらって、はしたなくよがり狂ってしまいました!気持ちよくって、な、何回もイキましたぁ!
 でも、すけべでいやらしいわたしは、全然、もっと、もっとしてもらいたくて、全然足りなくて、気持ちよくなって欲しくて、
 俊介さんのせ、精液を味わいたくて、コンドームから精液を啜って、飲み干したいです!ああ、キスしてもらいながらおまんこに中出しされて
 ひぃ、子宮でイキたい!わたし、わたし、オナニーしてイクところ見てもらいたい!広瀬せんぱいの、俊介さんの…ちんぽで、
 おしり、お尻の穴にちんぽハメて欲しい!ケツ穴にしゃ、しゃ、射精されて、ケツまんこ受精したいでふぅうう!だから!だからお願い!」
「かわいいな。良子。いいさ、全部してやる。精液まみれの口にキスしてやろう。膣で狂わせてやる。まずは、尻で孕め」
「~~~!」

良子の、声にならない悲鳴があがる。アナルに挿入されたのだろう。そしてすぐさまイった。ふすまに耳を当てなくても丸聞こえだ。
それにしても、けつまんこじゅせい。あの良子から、そんな言葉が吐き出されるとは。
自分を中心にして景色がぐるぐると回るような感覚に襲われる。吐き気を催し台所を見た。
食堂の椅子に、ちょこんと座って、私に微笑んでくれている良子の姿が浮かぶ。幻影とわかっていても、私は妻に微笑み返す。

そして妻はその優しい表情で、えくぼのかわいい笑顔で言うのだ。俊樹さん、ちんぽハメて。と。
ささいなことでけんかをした時の、涙目の表情で言うのだ。ねえ、子宮でいかせて。と。
ちょっと拗ねている時の、口をとんがらせた表情で言うのだ。ケツまんこで受精しまふぅぅ!
どの顔の妻も、私が知っているすべての顔が、そんな言葉で語りかけてくる。
「ひあぁああ~、灼ける!おしりやけちゃうぅ、アナル最高!あっ、おまんこいじめないでぇああ。イっていい?ねぇイっていいよね!」
もう、現実がどれなのかここが私なのか夢はどこなのかわからなくなっていた。死のう。とさえ思った。
包丁は、どこにあるんだろう。


そんな私を引き止めたのが、ふすま越しの兄の声だった。
「…というわけだ。いるんだろ?こいよ俊樹」
「へえ?」
さっきまで喘いでいた良子が素っ頓狂な声をあげる。
兄は私がここにいるのを知っているのだろうか。覗いていたのに気付いていたのだろうか。
知っていて、良子を抱いていたのだろうか。全身から汗が吹き出る。
私が開けなくても、兄か良子がふすまを開けば同じことだ。
私は、声を出さない。
なぜなら本当の私は、間抜けな私は酔いつぶれて布団で寝ているのだから。部屋の前に立ち尽くしている私は、夢の中の私なのだから。
そうでなければいけないのだ。これは夢なのだ。私は、淫らで悲しい夢を見ているのだ。
しばらくの沈黙。
沈黙。


ふすまは開かなかった。
「…なんてな。冗談さ。びびったか?悪い。」
「あああ!ああああ…」
兄は明るく言うが、良子は放心しているようだ。喘ぎ声が嗚咽に変わる。
「ほら、落ち着けよ。俊樹が起きているなら、止めに入るだろ。普通」
「わたし…わたし…」
「良子、これはな、夢なんだ。俺たちは酒に酔って、夢を見ているんだ。だってそうだろう?夢じゃないなら、俊樹が入ってくるはずだ」
「うっ。わたし、ううぅう~」
「夢じゃないなら、お前が俺に抱かれているはずないじゃないか」
「あ…」
「「だってそうだろ。お前は俊樹の妻で、俺は、お前の義理の兄なんだ。こんなことあるはずがない。そうだろ?」
「夢…これは、夢…?」
「夜が明ければ、目が覚めれば、何も変わらない、今まで通りの俊樹と、良子と、俺がいるだけさ」
兄の声は私にも聞こえるように大きかった。
「そう…夢、夢なんだ…これは、わたしはゆめをみてる」


「好き…!ずっと、好きだったの!今でも、愛してるの。だから、俊介さん、わたしを、わたしだけを愛してるって言って。
 夢なら、夢の中でならいいでしょ?せめて、お願い。愛してるって言って」
「ああ。愛してるよ、良子。俺が好きなのは、お前だけだ」
「うれしい…しゅんすけ、抱いて。もっと、おっぱいも、おまんこも、おしりもかわいがって。ねぇ、キスして。わたしを愛して」
私たちは夢を見ている。良子にとっては幸せな夢なのだろう。私にとっては悪夢だが。兄は、どんな夢を見ているのだろうか。
夢なら、早く覚めてもらいたくて、私は静かに寝室へ戻る。精液の染みたズボンと下着をはき替えて布団に倒れこむ。
「ああ、いいっ!死ぬ、死んじゃうっ!いく、またイくっひっ、ひぃっ」
タオルケットにくるまり、はやく夜が明けないかと祈りながら、何も聞こえないふりを、気付かないふりをし続けた。



朝になると雨は上がり、照りつける太陽が地面を乾かしきっていた。ゆうべの雨が、本当に嘘のような快晴だった。
「う~ん、やっぱり俺も若くないんだろうか。朝がこんなにしんどいなんて。ツーリングの疲れが溜まってる」
「兄ちゃんまだ30だろ。おっさんくさいこと言うなよ」
「ゆうべは飲みすぎましたね。わたしも寝坊しちゃって」
「すいません良子さん、味噌汁のおかわりいいですか」
ごはんと味噌汁と昨日の残りの簡単な朝食。穏やかな時間が過ぎていく。


「兄ちゃん、荷物ならドライブのついでに車で持っていくよ」
「わかってないな。うちに着いて、荷物を降ろすまでがツーリングなんだよ。風呂に入って、ビールを飲んで、
 濡れたテントを干しながら、ああ、帰ってきたなーって思う。そこがいいんじゃないか」
「うちまで30分とかからないだろ。朝からビールなんてバカみたいだ」
「うるせぇな。揚げ足とってんじゃねぇよ」
軽口を交えながら兄はせっせとバイクに荷物を積んでいく。野営道具一式、着替え、工具、etc…
持ち物一つ一つにこだわりがあるらしく、いちいちそれの自慢というか説明をするので時間がかかった。

テトリスのようだ。と妻は言うが、たしかにこの狭いスペースに上手いこと載るもんだなあと思う。
「ふふ。ねえ俊介さん、もっとゆっくりしていけばいいじゃないですか。どうせなら夕飯まで。ねえ俊樹?」
「そうだよ。急ぐ事ないじゃんか」
「悪い。友達と会う事になってんだ」
「女なんじゃねーの?」
「まあな。織姫と彦星みたいだろ」
ちらりと妻の表情を窺うが、変わらずにこにことしていた。


あの日以来、兄がうちへやって来ることはない。たまに会う事はあるのだが、実家だったり、外食だったりと短い時間だった。
あいかわらず、日本には短期間しか居られず、ツーリングに出る時間がないとぼやいていた。最近腹がでてきてなぁとも。
私は、あの夜の夢を見て以来、妻に恋をした。深く深く愛してしまった。妻の一挙一動がいとしくて仕方がない。
なんなら、もう一度プロポーズしてもいいくらいに。私に抱かれて、静かに吐息をもらし、喘いでいる妻に、
「お前は兄ちゃんの何曜日の女だったんだ?」
「ケツで孕むか試してやろうか?」
などと聞いてみたい衝動にかられるが、結局、できずにいる。
「すごく良かった。愛しているよ、良子」
と言って抱きしめるのがせいぜいだ。
妻は、わたしもよ。と言いキスをしてくれる。
今日は、良子からあの香水のかおりする。兄が土産にもってきた、桃の匂いのする香水。兄の好きなにおい。
そういえば、兄が帰ってきているんだな。と思い、私はますます妻が愛しくなるのだった。





おわり

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