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バレンタインデー 1

ついにこの日がやってきてしまったか、俺は意を決して家を出た。
向かうは当然に学校、何故か胸がドキドキと高鳴っている、おかしいよな?
「さぁ今日は普通の平日、何にもない日だけど頑張って学校に行くか!」
そう自分に激励をし、いつものように通学路を歩き出す、
するとだ…背後から凄い足音が近づいてくるような…
「何を朝から現実逃避してるのよ馬鹿始!」
「うごぉっ!!」

バキィィィ!!!

激しい衝撃が後ろから響いてくる、痛い…
気持ちの良い朝に背後から飛び蹴りを喰らってしまった!
俺が知る中で、こんな乱暴な事をするのは一人だ。
「何をするんだよ宏美!」
「朝から馬鹿な事を言ってるからよ」
ベーっと舌を出して馬鹿にしてるように笑うのは、
俺の幼馴染である坂井宏美だった、
こいつ…昔から俺の事を直ぐに蹴っ飛ばすような乱暴な奴で、
子供の頃は何度こいつの我が侭で泣かされた事やら。
「ん?何?何か文句あるの?さ、早く学校に行くわよ!」
「わかってるよ…まったく乱暴者め、うげぇ!」

バキィ…ッ!

また今度は殴りやがった、たく…俺には半ば理解できないが、
この宏美はそれなりに男子には人気あるらしい、ショーットカットの髪にスポーツは全般的に得意で、
時に乱暴な言動をするというような男ぽいようななところあるのに、それに胸だって小さいし…
あと妙に頼りになるところを見せてるせいで、まぁ女子にも人気あるまでは理解できるが、
いやいや世の中には物好きな男子も居るもんだよな?。
確かに顔は可愛いが…昔から一緒にいる俺としては信じられないよ。
そうそう彼女と俺は腐れ縁なのか、高校まで一緒の学校どころか、
クラスまで同じ事が多かったのである。
「そういえば今日は2月14日ね?何の日だったかしらね」
「何だったかな?でも確か宏美には関係ないイベントだよな」
「ほ?あんたにもでしょうが!」
「うぐぅ!!」
わ、わかってるさ…そうだよ俺にも毎年の事ながらに関係ない日さ!
バレンタイン…どっかのお菓子業界の連中が作ったらしいイベントだ、
それがまた今年もきやがったんだ…
これって世の駄目組と勝ち組がハッキリ分かれる日でもあるんだよな…
そういえば、宏美は毎年たくさん貰っていたっけな…同姓にだけど。
「始も義理くらいは一個でも貰えばいいのにね、まぁ無理だろうけれど」
「うっさいな!見てろよ?」
憎まれ口を叩きやがって…と俺は宏美を見る、
するとある気になるのが見えてしまった。


「なぁ…どうしたんだ、その手の絆創膏?昨日は無かったように見えたけど?」
「な、なんでもないわよ!」
それを指摘すると急に慌てて手を隠す、何だか頬も赤くなってるけれど…何だ?
何かドジでもやらかしたのだろうか?
「ねぇ、そういえば今日の放課後…用事あるの?」
「ん?いや特にな…」
「じゃあ決定!ちょっと私の部活が終わるまで教室で待ってなさい!」
「へ?おい…部活が終わるまでって、どれくらい待てばいいんだよ!!?」
「うるさいうるさい!いいから、私の言う通りにすればいいのよ…昔みたいにね」
昔か…はぁ、俺はいつまでも宏美の弟分かよ、
ちょっと俺の中の男のプライドに傷がついた気がする。
確かに予定はない、でもな…何の用なんだか、
その日の授業中ずっと気になっていた、まぁどうせ大した事じゃないと思うけれど。
もしかして宏美が今日貰ったチョコレートを俺に持たせ家まで運ばせるつもりか?
それは無い…いやあるか、去年なんか結構な量あったし。

そして放課後だ、ちなみに今日の成果は…まぁ聞くまでもなく0だった。
な…泣かないぞ、はは…うちの学校がそういうイベントに興味を持つ連中が少ないだけなんだ、
きっとな…あっ、でも昼休みに一緒に弁当を食っていた悪友の島田のやつ、
四角く茶色い塊を嬉しそうに食ってたよな…あれなんだっけ?
あぁ…なんか傷心の気分だ、クラスでのモレナイ組順位上位組には、
やはり関係ないイベントだったのか今日は!
なんか考える程に、落ち込んでしまう気がする…こんな気持ちの時に、
宏美の我が侭な命令に付き合うなんて…
ふと俺はその命令に反抗心を持ってしまった、そうだよ素直に聞く必要はない…
「どうせならちょっと反抗してやるか!」
俺はふとそんな考えをもった、とはいえ帰るつもりは無い、
悪戯気分で隠れて脅かしてやろうと思ったのだ、これくらいならいいだろう?
なんか子供じみた抵抗だな…とも思ったけれど、気にしない気にしない。
というわけで教室の後ろに置かれた掃除用具入れのロッカー内に身を隠す、
ちょうど隙間から教室内の様子も見れるし、丁度いい場所だ。
まぁ悪臭は漂ってるけれど…そんな鼻にダメージを感じつつ、しばらく身を潜めると、
誰かが教室に入ってきた音がした、もう授業が終わってから時間が経ってる、
こんな時間に教室に戻ってくるという事は…
「始??!えっ…居ないの?」
やっぱり宏美か、はは不思議がってるみたいだ、それはそうだな。
今まで俺があいつに反抗した事はあんまり無いし…
「あの馬鹿…まさか帰っちゃったの?嘘…」
さてさて…いつ飛び出して驚かしてやるか、
俺はそのタイミングを計る…そろそろいいかな、なんか宏美の奴が黙って静かになってるし。
そう思い、俺はロッカーの扉を開こうとした…と、その時だ!
別の誰かが教室に入ってきたのは…
「あれ?斉藤君?」
「あ…坂井さん?」
おっ、あれはクラスのモテナイ組順位不動の一位とも言われる斉藤君じゃないか、
別に彼は悪い奴じゃないが、外見と気の弱さから女子人気は低いらしい。
「教室に忘れ物しちゃって…あはは」
「そうなんだ…」
別に聞かれてもいないのに、斉藤は教室に戻ってきた理由を説明してた。
これが気の弱い所なんだよな…ん?


宏美はそんな斉藤をジッと見つめてるようだ、どうしたのだろうか?
すると…ゆっくりと斉藤に歩み寄る、持っていた学生鞄から何か包みを取り出して…
「ねぇ斉藤君…今日、誰かにチョコ貰った?」
「えっ!も、貰ってないけれど…」
「そう、やっぱり…じゃあコレあげるわ」
「えっ!?」
そう言って手渡したのは、可愛らしいリボンで縛った何かを包んだ袋だ、
あれってまさか…まさか!?
「これってもしかして…チョコ?」
「他に何に見えるの?」
「あ、あのさ…中を開けて、食べていいかな?」
「別にいいけれど…不味かったらゴメンね」
「!もしかして…手作り!?」
う、嘘だろう…あいつ、手料理なんてタイプじゃないのに、
まさかそれでか?手にあんなに絆創膏を貼ってたのって!
俺は心底驚く…普段のあいつを知ってるから余計に、でも一番驚いたのは渡した相手だよな。
「…どう?」
「お、美味しいよ…とっても」
「そ、そう…」
素っ気無い態度に見えるが、宏美の頬は赤く染まり、
いかにも照れて恥ずかしくなって赤面してるのが丸分かりだ。
斉藤は斉藤で夢中で宏美の手作りのチョコレートを食べ、
それを静かに見つめる宏美…んっ?
なんか斉藤…震えてるよな、すると今度は唐突に宏美と向き合うのだ!
「で、でもさ…まさか坂井さんが僕と同じ気持ちだったなんて…」
「えっ?」
「坂井さん!!」
「!?きゃっ!ちょ…んぐぅぅっ!!!」
その時だ、斉藤がガバッと宏美に抱きついたのは!
そしてそして…強引に唇を奪ったのだ!!
「んんんっ!!んん??!!!」
ここからじゃ、イマイチ詳しく見れないが…
しかもだ…長い、もしかしてかなり大胆なキスをしてるんじゃ!
とてもあの弱気な斉藤とは思えない行動だった、あの強気な宏美にあんな事をするなんて…
「んん???んはぁ!ちょ…え、何を…きゃっ!」
宏美も流石に驚いてるらしく、呆然としてるようだ…
そしてあいつは、そのまま…教室の床に宏美を押し倒したのだ!
「きゃぁぁ!!さ…斉藤君…んぐぅ!!」
俺の視界の下…ようするに教室の床に倒れこんだから分かりにくいが、
暴れてるような音がする…それに声が途切れたのは、
またキスをされたからだろうか?
「坂井さん…ぼ、僕も…好きだったんだ!」
「えっ!ちょ…あぁ!やだ…あっ…」
「はぁはぁ…いいよね、だ…誰もいないし…」
「だ、駄目…斉藤君…かんち…あぁ!!」
やっぱりここからじゃ見えない…見えて上げられた足と手くらいか、
だけど声でわかる、ヤってるって…
「そこ触っちゃ駄目!あ…駄目ぇ!!」
宏美の悲鳴が教室に響いてる…その声が不思議と色っぽく聞こえるのは俺だけだろうか?
あいつ…あんな色っぽい声を出せたんだな。


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久々に鬱になる作品悪寒

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