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『練習』・・・10

「ひどい…!どうして殴るんです、先輩!?」
僕ではなく、モモちゃんが先輩を責める。
信じられない、と言った表情で。
そして、次には嫌悪が浮かぶ。
「先輩なんて、嫌いです!もう、顔も見たくない!帰って!」
「俺…俺は…」
モモちゃんになじられる先輩。
モモちゃんに完全に否定された先輩。
未だショックを顔に浮かべながらもそのまま、力なく去っていった。
そして、僕は笑いを堪えていた。
笑いを堪えるのがこれほど大変とは思わなかった。
今日の出来事は良かった。
僕を殴った先輩に感謝してもいい。
そのことで、モモちゃんは先輩に『顔も見たくない』と言い放ったのだから。
打ちひしがれた先輩の後ろ姿を見ながら、歪んだ喜びを得ていた。
「シュンちゃん、大丈夫?」
心配そうに僕に寄りそうモモちゃん。
「大丈夫だよ」
安心させるように、ニッコリと笑う僕。
大丈夫ではない。
自分の醜い笑みを隠すので大変なのだ。
「本当に?無理してない?」
こういうところは少し鋭いかもしれない。
「そうだね…モモちゃんが抱きしめてくれるなら直るよ」
「本当?」
そう言って僕を抱きしめるモモちゃん。
とても、安らぐ。
「そういえば、話って何?」
面白いものを見れたが、これは本題ではない。
話がある、と言われて来たのだ。
「あのね、部屋で話そ…」
そう言って僕を部屋に招くモモちゃん。
僕たちはモモちゃんの部屋に入る。
「あのね…まずは、先輩とお別れしたことを話そうと思ったの…」
その話はたっぷりと今見た。
「他にも何かあるの?」
僕はモモちゃんを促す。
ためらいがちに、顔を赤くしながらモモちゃんが話し出す。
「あのね、今は…シュンちゃんなの」
「何が?」
「シュンちゃんのこと、考えるとドキドキするの。それで、つい一人でね、練習いっぱいしてたの」
『練習』、モモちゃんは僕のことを考えていっぱいオナニーしてたのか。
もじもじと続けるモモちゃん。
「先輩と別れてすぐ、こんなこと言うの、良くないかなって思うんだけど…」
僕は早く続きが聞きたい。


「シュンちゃん、私と恋人になってほしいなって言いたかったの」
もちろんシュンちゃんが良いならだけど、とモモちゃんは締めくくった。
モモちゃんは僕をじっと見つめる。
僕はモモちゃんを抱きしめてキスをした。
「ん!?」
一瞬、驚いた表情を浮かべるが『練習』で慣れたモモちゃんはすぐに応じた。
「ちゅ…ん…んむ…んん…」
互いの口内を味わい口を離す。
唾液が糸を引いて、切れる。
「僕も、モモちゃんが好きだよ。だから、恋人になろう」
「うん!」
そうして、僕らは恋人同士になって、初めてのキスをした。
「あのね、シュンちゃん…」
キスを終えた後、モモちゃんが僕に話しだした。
「今まで、いっぱい練習、したよね」
「そうだね」
「今日は…その……本番……しよ」
途切れ途切れで最後はほとんど囁き声だったが、僕にはきちんと聞こえた。
「わかった、しよう」


僕たちは脱衣所で全裸になり、浴室に入った。
僕はモモちゃんの体を見る。
いつも、『練習』で見ていた体。
それが、僕のものになる。
そのことがいつもより僕を興奮させた。
「じゃあ、体を洗おうね…」
僕たちは念入りに洗った。
オチンチンは射精しないように気をつけて洗ってもらったが、僕はモモちゃんを遠慮なく味わった。
舌をモモちゃんの乳首に口付け、手を乳房に置く。
そして、舌と手でじっくりモモちゃんを堪能する。
「ああっ…シュンちゃん…やあっ…ああん」
初めては痛いというから、たっぷり準備しないと。
僕は今度はモモちゃんの足を開いてその中に指を挿れる。
そこはすでに濡れている。
「あっ…いいよ…シュンちゃん…やっ…もっと…やああ…」
もともと濡れていたが、どんどん潤いが増していく。
僕はこれからのことを考え念入りに舌を使う。
「やん、あっん、ん、んあ、もう、だめ」
「我慢しなくて良いよモモちゃん」
その言葉が合図になったのか、
「ああ、やっ、あああああああああああああああああああ!」
モモちゃんはイった。
ぐったりするモモちゃん。
これからが本番だ。
「じゃあ、準備もできたし、モモちゃんの部屋に行こう」
「…うん」


僕たちはモモちゃんの部屋に戻った。
体をきれいにしたし、モモちゃんも僕を受け入れる準備を整えている。
だが、その前に
「ちょっと待ってて」
「えっ?」
僕は避妊具を用意する。
万一妊娠したら、僕とモモちゃんは引き離されてしまうだろう。
せっかく先輩からモモちゃんを奪ったのだ。
そんなことになったら目も当てられない。
それに、モモちゃんもまだ妊娠など望まないだろう。
「シュンちゃん…ありがとうね」
避妊具をつける僕に感謝を言うモモちゃん。
モモちゃんの初恋を滅茶苦茶にした僕に感謝される資格は無い。
それでも僕は
「モモちゃんのためだからね」
と言った。
お為ごかしとはこのために作られたなのかと思うほど、ピッタリの状況だった。
「じゃあ挿れるね…」
「うん」
少しお互いの声に緊張が含まれる。
初めては大丈夫だろうか。
「あっ」
「うう」
2人の声が重なる。
先っぽが入っただけだが、早くもモモちゃんの体は僕に快感をもたらしている。
ゆっくり、ゆっくりと僕がモモちゃんに入っていく。
そして、
「痛い!」
モモちゃんが痛みを訴える。
モモちゃんの初めてを僕が奪ったのか。
苦痛の声がその実感を僕に与える。
「大丈夫、モモちゃん?」
「うん、平気…シュンちゃんは?」
健気にも僕のことを聞いてくるモモちゃん。
「うん、モモちゃんの中とっても気持ち良いんだ…続けるよ」
「うん…私たち一つになったね…」
痛みに耐えながら、そんなことを幸せそうに言うモモちゃん。
そのまま僕はモモちゃんの中を進む。
この快楽はどこまで続くのだろうか。
「うう…痛……痛いよぉ…」
痛みに耐え切れず涙を流すモモちゃん。
僕はモモちゃんにキスをしてなんとか痛みをごまかそうとする。
そして、最後まで到達する。
僕はゆっくりと腰を動かす。
「モモちゃん、ごめん」
「痛い……いや……ぐっ…」


腰を動かせば動かすほど快楽が僕に押し寄せる。
もっと、もっと、モモちゃんが欲しい。
その欲求に従い、だんだんと腰の動きを強くする。
「いやぁ……あう……痛…」
苦痛と戦うモモちゃん。
モモちゃんの声に構わず僕は快楽を求める。
もう、だめだ。
「モモちゃん、モモちゃん、モモちゃん!」
僕はモモちゃんを呼びながら射精した。
こんなに気持ちのいいことは初めてだった。
僕はモモちゃんの初めてを手に入れた喜びと快感に酔いしれた。
一方、モモちゃんは痛みから涙をぽろぽろ流していた。
そのことすら、僕の満足を深めるものだった。
「ごめんね、モモちゃん」
「ううん、シュンちゃんと一つになれたから…」
だから、いいの。
そう言って微笑むモモちゃん。
僕はモモちゃんを抱きしめる。
「モモちゃん、愛してる…」
「シュンちゃん、私も愛してる…」



そこで、目が覚めた。
夢か。
まったく、しょうもない夢を見る。
昨日は風呂にも入らずに寝てしまったのを思い出す。
時計を見ると、もう両親が出かけている時間だ。
とりあえず、風呂場でシャワーを浴びて僕は頭と体をすっきりさせる。
その後台所に行き、味噌汁などを用意して、遅めの朝食をとる。
「やれやれ、今日はゆっくりしようかな…」
そんなことを考えながら朝食を食べ終える。
ぼんやりとしていると、インターホンが鳴った。
「誰だろう?」


出てみるとモモちゃんだった。
「シュンちゃん、入っていい?」
僕はいいよ、と答える。
「シュンちゃん、どうして家にこなかったの?」
「今日は、ゆっくりとしようかと…」
「じゃ、私と2人でゆっくりしようね…」
そう言ってキスしてくるモモちゃん。
本当に、しょうもない夢を見たものだ。
夢じゃなくてもモモちゃんはいるのに。
「ん……んちゅ……んん」
キスを終える。
「ねぇ、モモちゃん、先輩のこと、良かったの?」
「あんな人の話、もうしないで…シュンちゃん」
モモちゃんの声に乗せられた嫌悪に僕は満足する。
モモちゃんを手に入れたことを実感する。
僕は歪んだまま変わらなかった。
モモちゃんは歪んでしまった。
「じゃあ、しよっか…」
「えっ…今日はゆっくりと」
「私がするから、シュンちゃんはゆっくりしててよ」
そう言って、自分の服を脱ぎ、僕の服を脱がせて、避妊具を僕のオチンチンに被せる。
そして、僕を下にして、モモちゃんが上からまたがる。
中はもう僕を受け入れる準備ができていた。
「んっ……あっ…シュンちゃん…気持ちいい…」
「モモちゃん、すっかりHになっちゃったね」
「ああん…シュンちゃんの、せいっ…だよ…やん」
モモちゃんの初めてを僕が奪ってから1週間。
最初のうちは痛がっていたが、今では僕たちは2人で快感を味わうようになっている。
「ああん…シュンちゃん……いい……やあん……」
「うう……モモちゃん……ああ……最高だよ……」
モモちゃんが腰を動かすたびに僕とモモちゃん双方に快感がやってくる。
僕は結局、幸せになれたと言えるだろう。
初恋を叶えたのだから。
でも、モモちゃんは?
初恋を僕に踏みにじられたモモちゃんは幸せなのだろうか?
僕の犯した様々な過ちはモモちゃんにとって本当に良かったのだろうか?
そんな疑問もモモちゃんから与えられていく快感に消えていく。
「ああん…シュンちゃん…愛して、るよ…やぁん」
「僕も、くぅ…愛してる、くっ、モモちゃん…!」


僕たちの関係は歪んでしまった。
モモちゃんと僕は恋人同士となり互いに悦びを与え合う。
僕の望みは果たせた。
僕は自分の犯した罪と過ちを悔やむことはあっても、正すことは決してしない。


おわり

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