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剣 - 2 -

「君は心配しているかもしれないが、若い娘の事、
店主である君が言えば自分に言い訳も立つし思ったより思い詰めないものだよ。
無論抱かれた事は言えまいが、現に他の町では俺達が泊まった宿の評判が上がって
そこで働く娘さん達が良い嫁ぎ先に嫁いで行ったなんて話もあるみたいだよ。
だから後のことは心配が要らない。」
そんな事まで言う。
心臓がばくばくとして声が出なかった。あまりにあからさまな言葉に我を失いかけていたと言っていい。
うな垂れて動かない俺の態度を了承したと受け取ったのか、アイスベルクは「ははは」と笑った。

「いや、助かった助かった。あいつらは無骨者でさ。こういう役割はいつも俺なのだよ。」
そういって手を振りながらははと笑う。

俺に断る術などなかった。
たとえ勇者の言っているその女が、サクヤの事だったとしても。

その夜、サクヤの処女は散らされた。
後日、アイスベルクが軽い口調でそう言った事で、アイスベルクが相手だった事を知った。


「酒は、2階の僕の部屋にもってきてくれたまえ。」
暫く俺を相手にモンスター退治の冒険譚などを語った後、アイスベルクはそう言って去っていった。

その背中に頭を下げてから台所に入り3人分の酒と簡単なつまみを作る。
2階に上がるのは気が重かった。勇者ハルトの部屋はアイスベルクの部屋の手前にある。
ハルトはアイスベルクと違い、隆々とした筋肉が印象的な正に戦士という呼び名が相応しい30過ぎの大男だ。
大きな斧を振り回してモンスターと戦うという。
額の広いやや下卑た顔をしているが、髭面と体の大きさから将軍と呼ばれても可笑しくないような不思議な貫禄がある。通常の男であれば睨みつけて怒鳴るだけで一たまりも無くなってしまうだろう。

その男に今夜、サクヤが抱かれていると言う。
サクヤが抱かれている部屋の前を通らなくてはならない事がたまらなく嫌だった。

それでも行かなくては為らない。
ワインとつまみである牛肉のジャーキーを盆に載せ、そろりそろりと階段を上がった。
サクヤに気がつかれるのが嫌だった。
もし自分が抱かれている部屋の前を俺が通ったと知ったら。
ただでさえサクヤは決して抱かれた事を俺には言わない。
どうなってしまうか判らなかった。

ハルトの部屋は暗かった。
物音の何も聞こえない事をほっとしながら、同時に立ちくらみを思わせるような心臓の重さを感じて俺は立ち止まった。
この部屋の中で、サクヤが抱かれているのかもしれない。

『もうすぐだ、もうすぐモンスターたちはいなくなると、アイスベルクは言った。』

頭を振り、足を進める。
もう一人の勇者であるヒンメルの部屋には明かりがついていた。
アイスベルクの部屋の前に立ち、ドアをノックする。

「アイスベルク様、お酒をお持ちいたしました。」

その瞬間、
「いやっ!」
という高い声がした。さっと貧血のように血が足の方に下がるのを感じる。胃から血が抜けていくような重み。サクヤの声だった。
盆を取り落とさないようにしろ!と頭の中の誰かが俺に命令し、手に何とか力を入れて再度ドアをノックする。
「おお、ご苦労様。すまないね。」
出てきたのはアイスベルクだった。先ほどと同じ格好のままだ。
入ってその盆を置いてくれたまえとの言葉に部屋の中に目をやる。
さっきの声は?勘違いか?

そう思い部屋に入った瞬間、がつんと殴られるような光景が目に入ってきた。
ベッドの上にはシーツが掛けてあったが、その中に人がいた。
シーツから突き出る半ばまで禿げ上がった頭、後ろから見ても判るような髭面。
山のような大きさの体。その体がシーツの中で上下に激しく動いていた。

そのシーツの、その山のような男の体の下。滑らかな黒髪がその動きにあわせて激しく踊るように動いている
シーツから小麦色に焼けた細く、それでいて柔らかそうな腕が出てきて激しい動きに翻弄されながらシーツを掴んだ。
シーツを持ち上げ上の男ごと体を隠すように引っ張り上げるその動きの一瞬、
シーツの下がちらりと覗け、向こうを向いているサクヤの頭の後ろが見えた。

そ、そんな。
こんな人が2人いるような部屋でサクヤは抱かれているのか。
呆然と立ちすくむ俺にアイスベルクは言い訳をするような口調で言った。
「いや、違うんだ。店主。今日はモンスターの抵抗が激しくてね。
私とハルクが奮戦しなくてはならなかった。
大変だが今日は二人を相手にしてもらおうと、そう思ったんだ。」

「そ、そんな」
こんなサクヤを嬲るような・・・
一人づつが部屋に呼べばよいではないか。
しかも、こんなに激しく動いて、サクヤは大丈夫なのか。
支離滅裂とした思考が激しく頭を切り裂く。
いまだ激しく動くシーツから目が離せず、頭が真っ白になったまま立ち尽くす。

「ほら、ハルト。酒が来たぞ。いい加減にしないか!」
俺が動かないからだろう。アイスベルクが盆を受け取りながら声をかける。

その声を聞いてか、
「む?」
という声の後、激しく動いていたシーツの動きがゆっくりと止まった。
「酒か。」
バサリ、とシーツを捲ると同時に立ち上がる。
一瞬、シーツの下のサクヤの全裸が露になった。
小麦色に焼けた滑らかな腕と太腿、
そしてそれをコントラストを為すような普段日に晒す事の無い胸や引き締まった腹の雪肌が目に飛び込む。
サクヤが慌ててツンと形よく上を向いた双乳を片手で隠し広げた足を閉じるその一瞬前、
正に男に組み敷かれたままの格好が目に焼きつく。

「いやっ!」
そういいながらシーツを体に巻きつけるようにして体を隠す。
頭まで巻きつけ、完全に体がシーツの下に隠れるようにして身動きもしない。


「ご苦労だな。」
横、しかもかなり上の方から掛けられた声に正気に戻った。
自分の体がきしむブリキの人形のように動くのを感じる。
ぎぎぎと音を立てているんじゃないか。と頭の隅で感じながら声を掛けられた方を向くと、
全裸のハルトが銀貨を持って立っていた。
それを数枚、ちりんと俺の左手に置いた。

この男が、今。
いやおうなしに一物に目が行った。
俺のものの優に倍はあるだろうか、正に隆起していると言う言葉そのもののようにそそり立っている。
それがぬとぬとと濡れ光っていた。

俺の視線を感じたのか
「む。」
と照れたように言うと先ほどまで着ていたものだろうか。シャツを手にとってごしごしと一物を擦った。
ぬめりを取るように股間の奥の方まで拭いていく。

「店主、最初はどうなるかと思ったが3週間も経ち、慣れたようだ。」
もうすぐいく事も覚えそうでな。とまるで俺を褒めるように声を掛ける。

い、いくっていうのはサクヤがか。

「あんなに責めたら女はすぐにいくようになってしまうさ。
 なあ。今日は僕もいるんだからほどほどにしてあげなきゃあ。」
ははは、とアイスベルクが混ぜ返す。

ひとしきりハルトと冗談を交わした後、アイスベルクはもう行っていいと言う風に手を振った。
頭を下げて部屋を出て行く。

階段まで到達した所で、盆を忘れた事に気が付いた。
アイスベルクの部屋の前まで戻り、ノックをしようとして部屋から漏れてくる声に思いとどまった。

「いつまでシーツをかぶってるんだ?こちらに来て酌をしてくれ。」
「ひ、酷い、ひどう御座います。勇者様。そんな、私見、見られて・・・」

「ふふふ、ノックされた瞬間、きゅっと締まったぞ。サクヤの良く締まるあれが。」
「いやあ・・・」
「ふふ、こいつ枕を噛み締めながら必死で声を抑えおってな。」
「ははははは」

ノックしようとした手を下ろし、そっと踵を返した。
音がしないように階段を下り、部屋へ戻る。
ドアを閉めた後、左手に握り締めていた銀貨を力の限り部屋の壁に投げつけた。

くっくっと笑うような声が自然と部屋から沸き起こり、
それが自分の喉から出ている事に暫く気が付かなかった。

よろよろと部屋を彷徨うように歩きながら袋の下に隠された剣を取り出す。
バケツの水を掬い、ぴかぴかと光る剣に振り掛ける。


砥ぎ石に剣を下ろし、両手の力を入れて前後に動かす。
もう、研ぐ場所も無い位に鋭く尖った剣を。

自分の口の中の呟きが頭の中でリフレインする。
「まだ尖っては、いない。」
「まだ充分ではない。」
剣に水を掛け、手を前後に動かす度に金臭い匂いと共にシュイっという鋭い音が部屋の中に響き渡る。

もう、判っている。俺が勇者に切りつける事など出来ない。
俺に出来るのは鋭く尖り、ぴかぴかと光っている手元の剣を砥ぎ、呟き祈る事だけ。

「まだ尖っては、いない。」
「まだ充分ではない。」

そう、祈るだけだ。

モンスターがいなくなる事を。





作者:量産型うに氏のページ! →Affair With A Mouth

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