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忍者学園 その1

 クナイは正確に、横一文字に並んだ。
「さすがアゲハ、完璧じゃん」
「あたりまえでしょ、誰が投げたと思ってるの」
 私は答え、声の主の後ろに目をやった。
ひょろりと背の高いあいつが、にこにこと微笑んでいる。


「男でもこうはいかないよな 。すげ 」
 いらいらしてきて冷たく言った。
「あんたはそうかもしれないけど、あんたの後ろはどうせもっと凄いじゃない」
 シロウの背後で、空は困ったような声を出した。
「僕は………」
「確かにこいつは仲間内で一番だけどさ 、女の子なのにすげ よ」
 いらいらの度が増してくる。うさぎみたいに二つに分けて結んだ髪が震えそうだ。
しゃべり続けるシロウと、突っ立ったままの空を無視してその場を離れた。

 私たちは本家の村に集められた忍びの教習生だ。それはとても名誉なことだ。
 教習生は分散された各里で育てられる。
そして中でも特に資質のある者が、14歳の内にここに呼ばれてさらに磨かれる。
女子はその内5名で、私はこのくの一班の長だ。
 男10名のうち、技や頭脳が最も優れているのが空だ。でも、班長ではない。
あの口だけで能力の低いシロウがそれだ。



 山際の林まで走ると、人影があった。水樹だ。
絹よりも艶のある黒髪を揺らして泣いている。そんな様子でも気品があり美しい。
彼女は格の高い役を演じることが上手い。身なりをそのために整えると、
私でも本物の姫に見誤るほどだ。普段の話し方やしぐさもおっとりしていて、
とても忍びには見えない。
「………楓(かえで)のせいね」
 声をかけると、びくりと震えた。そして泣き声が高くなった。

 水樹は同里の出身で幼馴染のハヤトと恋仲だった。
もちろんそれはいまだ子供めいた戯れのような触れ合いに過ぎなかったが。
二人は共にこの本家の里に呼ばれ、先を誓う中だった。
 楓は、集められた女子の一人だ。大きな瞳と端の上がった唇。
細いうなじを見せつけるために短く切った髪。自分の能力や魅力を過信する少女だ。
 その里では男さえもかなわぬほどの技の持ち主だったのかもしれない。
だけどここでは最下位に属す。頼みの美貌も選り抜かれた私たちの中では
人並みに過ぎない。
 楓が、自分の拠り所を他に求めたのはわかる。
努力をしても得られぬ格差は人の心を寒くする。ただ、その相手が問題だった。
 彼女はハヤトに恋心を抱き、彼も子猫のように甘え上手な楓に、
徐々に心を移していった。

「………用事以外で話しかけるな、って言われたの。楓が不安がるからって」
 渡した手巾で涙を拭いた水樹は、言葉をこぼすと再び瞳を潤ませた。
「あいつ、どうかしてるわ」
 水樹に言ってから私は上を向いた。
「そう思わない………風花(ふうか)」
 梢の木の葉が音を立て、合間から年よりも幼く見える彼女が顔をのぞかせた。
風花はふわり、とそこから飛んだ。重さなどないような動きだ。
小柄で華奢だけどそのせいではない。生来の才能だ。
 ほとんど音を立てずに着地する。
色素が薄く、柔らかな髪がふわふわと風をはらんだ。
「気配は消してたのにさすがアゲハ、凄いですぅ」
 気の抜ける話し方だけど侮ってはいけない。彼女はひどく能力の高い忍びだ。
「風花はどう思う?あの二人のこと」
「あのね、人を好きになるのは仕方ないと思うですぅ。
風花が武蔵を好きなように。きゃっ」
 最も小柄な風花は、一番大きくて強面の武蔵となかなか微笑ましい恋人同士だ。
「だけど楓はよくないですぅ。わざと水樹に見せつけるようにしてるから。
誰かの好きな人を好きになってゴメンナサイ、って気持ちが全然ありません。
ちょっとこらしめたほうがいいと思いましたぁ」

「同感だな」
 ふいに長身の影が土の中から現れた。
高く一つに結んでいる髪は、布で包んであったらしく汚れはない。リョウだ。
「あの子は何かと和を乱す。しかもそれを楽しんでいる」
 着物の土を払いながら、水樹に少し視線を向ける。
「その上、今はみんな苛立っている」 
 無理もない。
「わかったわ」
 私はうなづいた。
「お館様のところに行ってくる。楓の件も相談してみるわ」
「ああ、そうしてくれ」
 二人はうなづいた。水樹は心細げに立ちつくしたままだった。


 いざ向かい合って座るといきなりは話し出せなかった。
だからつい、日ごろの不満を口にしてしまった。
「いまだに私は納得できません」
「空はな、口下手で物おじするからのう、人に指示することは向かないのじゃ」
「わかってます。でも、シロウよりはましな相手がいるんじゃないですか」
「確かにあやつは能力的には低い。だが相手の特性を見極めて適切に使うのは
えらく上手い。あれも才能じゃて」
お館様はほっほっほっ、と笑った。なまずによく似た白いひげが揺れる。
「当分はこのままで行こうかいの。他にも何かあるかの」
 本題に入った。
「………あの件で、女子は不安がっています」

 私たちくの一は、性も仕事のひとつだ。男を篭絡し、快楽を与え、虜にする。
しかしもちろんそのためには経験を積まなければならない。
けれどその初めての行為が不適切なものであってはならない。
その後に差しさわりが出るからだ。
 だから私たちは箱入り娘より大事にそれを守り、お館様に奪ってもらうことになっている。
 去年までの先輩たちははそうだった。だが今年はお呼びがかからない。
 お館様はずず、と茶をすすった。七十を越えた翁である彼はゆっくりと動く。
 私はさらに踏み込んだ。
「全員、十五になりました。補助の仕事にもついております。
そろそろご指導をお願いしたいのですが」
 しばらく湯飲みを舐っていたが、ついに声を潜めてそれに答えた。
「実はな………ぶっちゃけ雄が役に立たん」
 私はしばらく口を開けた。それから勢い込んで詰め寄った。
「じゃあ、どうなるんですかっ。ってゆーか、
こんなぴちぴちの美少女たち相手に役に立たないってどーいうことよっ」
 お館様は手をひらひらさせて私をなだめた。
「ぴちぴち美少女も何十年も相手にしとるとな 、流石にちと食傷気味で。
最近じゃむしろ熟女のほうに萌え、というか……」
 この、クソジジイ。

「現役のお頭のコテツ殿じゃだめかの」
「あんな脂ぎった男!絶対いや!」
「じゃ、副長の玄武」
「女はみんな自分に夢中さ、と勘違いしてるあの男!冗談じゃないわっ」
「わしと同じ年頃といえば飯炊きのイヅチ」
「舐めとんのか"""""""っ!!」
 いきりたった私にお館様は平然と二杯目の茶を勧めた。
「いやあの男も闘いで頭を負傷するまではお頭候補の忍びだったのじゃよ」
「今はただの変態じじいじゃんっ!」
「年配の者をそんな言い方するのはいかんなぁ」

 私は深呼吸をして自分を落ち着かせた。
「………とにかく、どうにかして下さい。このままじゃ任務につけません」
「どうにかと言うても名をあげた男はだめなのじゃろ……そうじゃ」
 ぽん、と手を打つ。
「アゲハに一任するからお前が決めてみればよい」
「私がですか」
「うむ。アゲハなら上手く裁量するじゃろ」
 さすが年寄り、逃げるのが上手い。
「わかりました。決めさせていただきます」
「おお。それは助かる。だがもちろん、掟はわかっておるなぁ」
「………はい」
「それを裏切る者には制裁を与えねばならんぞ」
「承知しております」

 恋愛は決して禁じられてはいない。
むしろ次世代の忍びを得るために推奨されているほどだ。
しかし、初めての相手として愛する者を選ぶことはできない。
それ以外の者を受け付けなくなるからだ。
「行為を拒んで抜け忍となり追っ手に打たれた二人を何組も見た。
それを避けるための制度じゃ。心得てくれい」
「わかってます」
 胸の奥でため息をついた。
 気をとり直して話を続ける。
「ところで楓の件ですが…」
「あの勝手な娘じゃ、そろそろ辛抱がきかなくなるじゃろ。
見張っておくがよい」
 了承して屋敷を出た。

 屋敷を出ると、少し離れた所を空が走っていた。
それが遠くなり消えるのをしばらく見つめていた。
「なにぼーっとしてんの、アゲハ」
 シロウが、ひどく太った少年とともに現れた。タイジだ。
「ビ、ビ、ビワ食うか」
 果実を差し出されたがそっぽを向いた。
「いらない」
「だ、団子も持ってる」
「欲しくない」
「そ、そ、そうか」
 彼がここに呼ばれる前、上の人たちは多少もめたらしい。
タイジの能力はほとんどが人並みかそれ以下だ。吃音も激しい。
だけどその力はとても強く、大人でもかなわないほどだ。
 論議が続いている時、先に決定した同里のシロウが直訴に現れた。
どの能力もほどほどに優れた忍びだけより、一芸がことに優れた者を多少
加えておくほうが実際の任務に役立つのではないかと。
 彼の提案は試され、採用された。
一見厚い友情だが、シロウは単に自分以下の男を傍に置きたかっただけだと思う。

「な、な、なら、花、見るか?や、山百合、さ、咲いてた」
 断ろうとしたがふと、思いついた。
「行くわ」
「うひょ、こりゃ珍しい。氷のアゲハが付き合ってくれるとは 」
「あんたじゃないわ。行きましょ、タイジ」
 私はにっこりと微笑みかけた。



 真夜中になった。が、私たちにとって昼間と変わらない。
 宿を抜け出した二つの影は山奥まで走り、忘れ去られたような山小屋に入り込んだ。
「いいのか、楓」
「かまわないわ。あたし、ほかの人じゃなくてハヤトにあげたいの」
「掟が………」
「生娘に化ける方法だって知ってるわ。大丈夫よ……来て………」
 二人は熱く唇を交わす。ハヤトの指が布の合間をくぐり、
やや小ぶりな楓の胸をもみしだく。耐え切れないような吐息がこぼれる。
 耳たぶに唇が当てられる。楓は腕をハヤトの首に巻きつける。
「ああ………ん、ハヤト……あ、あ、ああ……」
 生き物のように帯が流れ落ち、着物が開いて細いからだが露になる。
唇が胸元に移った時、楓は魚のように跳ねた。
「いいっ……あ、あ、ああっ」
 腕は首から相手の背に移っている。ハヤトの舌先がちろちろと動くにつれ、
その指先が立てられ、爪がそこに食い込んでいく。
「…ねぇ、下も早く………まだ誰も触っていないのよ………」
「……うれしいよ、楓。すごく、ここ、綺麗だ…………」
 自分から開かれた太もものさらに奥を、ハヤトは指でこじ開けて眺める。
「蜜があふれてる……」
「ああん、恥ずかしい!……でも、もっと見てェ。そして触って………」
「ぬるぬるだね……欲しがって、震えてる………」
「あ、あ、ああ、あ、いいっ、ハヤトぉ、頂戴っ!!」
 身をのけ反らせて楓は哀願した。ハヤトは、自分の帯を解いた。
「挿れるよ、楓!!!」
「………そこまでよ」
 私の声は冷たく響いた。


 とっさに着物をつかんで飛び上がったのは教習生といえどもさすがに忍びだ。
楓の顔は羞恥と怒りで赤くなっている。
「………何のつもりよ、アゲハ」
「掟破りは承知でしょ。懸念したお館様に監視を命じられていたのよ」
「仲間を売るつもり!」
「私たちは掟のもとで仲間なのよ」
 いきなり手裏剣が飛んできた。軽く避ける。
「あなたの投げ方は見え見えすぎるわ」
「何とでも!逃げるわよハヤト!」
「あ、うん」
 呆然としたままのハヤトの手を楓がつかんだ。

「幻術・百花繚乱!!」
 花の香りが強く漂う。私ではない。でも、彼女が後をつけていたのは知っていた。
ハヤトと楓は口元を押さえたが間に合わなかった。
「……来ない方がいい、って言ったのに」
「ごめんなさい。でも、どうしても我慢できなくて」
 水樹は悲しそうに言った。罪ある二人は声も出ず、身動きもとれず倒れている。
私は二人に告げた。
「まだ一人前じゃないことを感謝することね。これから先はこの程度じゃすまないわ。
………タイジ、出てきて」
 のそり、と彼が姿を現す。
「楓の初めてを奪って」
「い、いやぁーーーーーっ!!!」
 すさまじい嫌悪感に、楓が術を破って叫んだ。
「許してっ!!いやっ、こいつとはイヤーーーっ!!」
「罪には罰が必要なの。ハヤトの罰はそれを見続けること。最初から最後まで」
 幻術を破りきれない彼は必死に首を横に振ったが無視した。縄で柱に結びつける。
「水樹は、帰ってもいいのよ」
「いえ……見届けるわ」
 暗い瞳をハヤトに向け、そのまま壁に寄りかかった。
「じゃあ、始めて。タイジ」
 彼はこくり、とうなづいた。


楓の腕を縛り、細い足首をつかんで、無理に体を開かせる。
さっきの名残でそこはねっとりした液体を滴らせている。
「やだっ!離してっ!」
 タイジはかまわず脚を持つ手を片側だけにした。もう片方で花びらを開き、
そこをゆっくりと、何度も繰り返しなぞっていく。意外なほど繊細な手つきだ。
「ん、あ、あ、あああっ」
 指先はその奥の真珠のような突起に触れる。
「ああああああっ!!!」
 楓の体がはねる。が、タイジは片手だけでそれをいなす。あふれる蜜。
「敏感な体ね」
 私の言葉に、楓はきっ、と怒りのまなざしを向けた。
ハヤトはいまだ声を出すことができない。呆然と、恋人に視線を向けている。
顔色が、紙よりも青白い。
 タイジの指が奥に入り込んだ。楓の太ももがびくびく震える。
 彼女が身をそらすと、まだかたさの残る胸が揺れる。
その中央の紅い乳首に、タイジが唇を当て吸い付いた。
「よ、よせっ!」
 ハヤトがどうにか声を出した。腕を解こうと必死にあがくが身動きが取れない。
「楓っ、楓っ!!」
「いやぁ     っ、見ないで    っ!!!」
 強く拒否しているのに、肌は赤らみ、秘所からの蜜は止まらない。
先程まで恋人にほぐされ、潤った体は待ちかねている。
 楓を片手で触れたまま、タイジは自分の着物を脱いだ。

「まぁ、ご立派ですぅ 」
 傍らにふわりと現れた風花が、タイジの持ち物に目をやった。
「なんとなくちっちゃい様な気がしてたんだけど誤解でしたぁ。ごめんね、タイジ」
 実際、想像以上に大きなモノが、天を仰いでそそり立っている。
先端に蜜を宿すそれを見た私は、目を逸らしたくなった。
だけど仕掛けた私が逃れるわけにはいかない。歯を食いしばって見つめ続けた。
「よせぇ    っ、タイジ、やめてくれっ。女、女が欲しいんだなっ!!」
 ハヤトの叫びにタイジが少し顔を向けた。
「やるっ、そっちの女、水樹をやるから楓は離してくれっ!!」
 壁に寄りかかった水樹はもはや顔色さえ変えなかった。ただ、唇が少し震えた。
「そうよっ、水樹をやりなさいよっ!アゲハでもいいわ!
あんた、アゲハに惚れてるんでしょ!」
 楓がわめく。タイジが私を見つめた。まっすぐに視線を返した。


 昨日、山百合の香の中で私はタイジにそれを頼んだ。
「断ってもいいわ。あんたが私のこと嫌いじゃないと当て込んで頼む卑劣な依頼だから」
 太って、鈍くて、お人よしのタイジ。私は彼を利用しようとした。
 タイジは私を見つめた。さびしい瞳だった。
「………わ、わかった」
 ほっ、と肩の力を抜いた私に彼は告げた。
「か、代わりにく、唇吸わせてくれるか」
 心の臓が凍りついた。
 私たちは体の初めてを恋人にあげることはできない。
だから唇は、唯一の、恋人へささげる贈り物だった。
 しばらく沈黙した。空の顔が浮かんで、消える。
「……………いいわ」
 人を傷つけ、貶める私が無傷でいるなんて許されないのだろう。
 私は目を閉じ、タイジを待った。
 長い時間が過ぎ、触れてこない彼を不審に思って目を開けた。
 彼はひどく優しく微笑んでいた。
「ごまかそうと、しないんだな」
 珍しくどもらなかった。
「とっとけ、アゲハ。じゅ、充分だ」
 そして彼は背を向けた。
 男なんて馬鹿で間抜けで利用しやすい。
なのに、ほんの時たま、女なんか近寄れないほどの高みに飛んでいってしまう。


 軽く苦笑したあとタイジは視線を楓に戻した。
「やめてぇえええ        っ!!」
 ずぶり、と己を突き立てた。
「楓ぇ         っ!!!」
「ひぃいいいいいいいっ」
 絶叫が響いた。
 内股に、血が、滴った。
 ハヤトの目に涙が浮かんだ。

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