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忍者学園 その2

 翌日、事情を知ったリョウに責められた。
「確かに楓はこんなことでめげるような玉じゃないが、あんまりだろう。
あんたも恨まれるし、第一水樹が……」
 ばたり、と戸が開いた。

 凄惨な姿の水樹が部屋に入ってきた。
「初回、済ませてきました」
 着物は裂かれてぼろぼろで、白く大きな胸がそこからあふれている。
体のあちこちに血が滲み、噛み傷も多い。
 息を呑んだ。
 リョウが彼女に飛びついた。
「いったい、誰がこんな……」
「イヅチ、です。でも、自分で頼みました。最低の抱き方をしてくれって…」
 下卑た視線を向けてくる頭の調子のおかしい老人、イヅチ。
「最低の相手と最低の経験をすれば、忘れられるかな、って思って。
もちろん、今後の任務に差し障りは……」
 声が乱れて涙になった。リョウが彼女を支えたまま、鋭い目を私に向けた。
「結果がこれだ」
「大丈夫。アゲハのせいじゃないわ。全部自分で選んだこと」
「話すな……湯殿に行こう」
 守るように彼女を抱えて、リョウは部屋を出た。

 残された私は水樹に何かしてあげることもできない。訓練に戻った。
硝石を使って火薬を調合していると、誰かの手がそれをとめた。
「入れすぎだよ。それじゃ危ない」
 空の手の温もり。
 それ以外の世界のすべてが消える。
「アゲハにしちゃ珍しいね」
 空の声。空の微笑。
 なのに私は冷たく言葉を返す。
「あんたと違って私はこの程度だわ」
 彼の顔が曇る。臆病な私の心。
「ごめん」
「謝るようなこと、言ってないわ。いつも自分が悪いことにして逃げるのね」
 彼の手が離れる。心のどこかが切り裂かれる。
 どうにかそれを修復しようとする。
「…でも、量を教えてくれるとありがたいわ。硫黄のにおいが嫌で苦手なのよ」
 返された笑顔。優しい声。かけがえのない時間。
何度か手が重なり、心の臓が飛び出しそうになった。それを隠すために無表情を装った。
至福の時間は、扉が開いてシロウが来るまで続いた。


 夜に、宿舎の私の部屋を再びリョウが訪れた。
「……水樹は?」
「落ち着いてる。怖いぐらいに冷静だ。まだ無茶しないほうがいいんだが、
頭より体を使いたいと体技を鍛えている」
「そう」
 それ以上何も言えなかった。話題を変えるためか彼女は尋ねた。
「われわれの経験は結局どうなる?まあ、あと3人だけだが」
「なるべくご希望に沿うようにしたいわ。もちろん一番好きな人以外でだけど。
それと、今度みたいなことを避けるために立ちあわせてもらうわ」
「あんなことやるのは水樹ぐらいだと思うがな。まあ、いい」
「リョウは決めているの?」
「いや。少し考えさせてくれ」
 そういえば彼女の思い人を知らなかった。尋ねると少し、苦く笑った。
「その答えも後だ。ごまかして捧げたりはしないから安心してくれ」
 言ったことは彼女は守るだろう。そういう女だ。
「風花には伝えておく。ああ、それと楓だがな、心配しなくていい。
義務は果たしたとばっかりに、あちこちでハヤトと盛っている」
「見かけたわ……少し自重して欲しい」
「そのうち落ち着くだろう……邪魔した」
 一瞬のうちに彼女の姿は消えた。

 明け方、なんだか嫌な気分で早めに目が覚めた。
妙な不安感が胸を占める。布団から飛び起き身構えると、急に床が割れた。
すさまじい爆発音。私の寝ていた場所は吹き飛ばされた。
 人々が集まってくる。その中に空の姿があった。
「大丈夫?!アゲハ、いったい何が…」
「こっちが聞きたいわ」
「アゲハっ!無事かっ!」
 シロウが駆けつけてきた。
「胆冷やしたぞ」
「無事よ」
 空が私の手をとった。
「本当によかった。女子の部屋だって聞いて、僕は…」
 胸にじんわりと喜びが広がる。けれど手を振りほどく。
「他を調べなくちゃ」
「だよな。アゲハが狙われたのか、他か、無差別なのかもわかんねーし」
 シロウが口を挟む。
「………私よ、多分」
 予感があった。



 楓は私を見ると、思いっきり舌を出した。
「こらこら」 お館様がそれをなだめる。
「お前はアゲハを恨んでいるのか」
「当然よ。だ    いっ嫌い」
「制裁ならわしが頼んだのじゃよ」
「以前から気に入らなかったのよね。冷たくて、見下してて。何さまよ」
 彼女はきっ、と眦を上げた。
「だけどね、殺そうとは思わないわ。てか、どーでもいいわ、もう」
 傍らのハヤトに体をすり寄せる。
「あたしにはハヤトがいるし」
「昨日の夜はどこにいたのじゃ?」
 彼女は誇らしげに胸を張った。
「ハヤトの部屋。一晩中。もちろん明け方まで」
「証明できるのはハヤトだけかな?」
「もちろん。あ、隣のシロウなら声が響いてたかもしれないけど」
「後で詮議する。これから仕事の話があるでの。二人は帰ってよろしい。
あ 、ちと待て楓。ハヤトと仲良しは結構じゃが、
経験者はこれからその手の訓練が入るぞ。覚悟はできてるかの?」
「もちろん」
 きっぱりと彼女は答えた。
「ハヤトとの暮らしのためならどんなに辛くても耐えるわ」
「なら、よし。行きなさい」
 彼女は今度は私に向かってアッカンベーをし、それからハヤトと出て行った。
お館様は苦笑した。
「楓やハヤトとも思えぬな。他に心当たりは」
「ありません」
 私は答えた。



 一人になるとシロウが寄ってきた。
「なあ、証言してやろうか」
「なんのこと」
「おまえ、楓嫌いだろ。声なんかしなかった、って言ってやろうか」
「けっこうよ」
 冷たく言う。
「別に楓のこと嫌いじゃないし」
「おまえの役に立ちたいんだけどな」
「必要ないわ」
「アゲハ」
 珍しくまじめな声で彼は言った。
「………空のこと、好きなのか」
 怒りが沸いた。何の権利があって私の心を暴こうとするのか。
「さあね。……そろそろ戻るわ」
 腕をつかまれた。
 ふいに唇を奪われた。
 血が凍る。
 シロウの頬に残る私の手形。
「あんたなんか、死ぬほど大嫌いよ!!」
「その方がましだな」
 苦い表情で、彼は言った。

 井戸水でいくら洗っても、唇の感覚は消えなかった。
胸の痛みが重過ぎて、山の上の泉まで走った。
冷たい水で唇をすすぎたくて。
 でも、それさえもかなわなかった。
 水は汚れていた。
 醜く膨らんだ死体のせいで。



 私の件とは別に、事故として処理された。
 イヅチはいてもいなくてもいい飯炊きの老人だったし、
しょっちゅう酔っ払ってふらついていた。
 たまたまある日、その度が過ぎて泉に落ちたとしてもありえる話だった。
もし、彼に恨みを持つ者がいたとしても、それが能力のある忍びだとしたら
そのために裁くのは惜しい。形だけの問い合わせがそれぞれにあり、それだけで終わった。
 私は思わず水樹の様子を伺ったが、何の感情も表していなかった。

「ついてないですねぇ、アゲハ」
「そうね」
 風花に短く答えて、その目を見る。
「ところでそろそろ相手は決まった」
「………武蔵じゃだめなんですよね?」
「だめ」
 はぁ、とため息を一つついた。
「もうちょっと、もうちょっとだけ考えさせてぇ、ください」
 ふわふわとした髪を揺らして、彼女の姿は消えた。

 夕暮れにリョウの姿を見かけたので、声をかけると片手を挙げた。
「決めた」
 あっさりとそのことを告げる。
「誰?」
「………武蔵だ。頼み込んだ。今夜村はずれのお堂で」
 驚いた。確かに彼は彼女と同村の出身で、いとこ同士でもある。
「風花には?」
「悪いが黙っててくれ」
「ずっと好きだった、ってことはないの」
「まさか」笑いとばした。「その手が一切ない相手だから選んだ」
 風が少し冷たくなっている。私は彼女の選択を否定しなかった。
「………邪魔にならないようにするわ」
「いやいい。どうせそのあとは人前での訓練もある。堂々と見ていってくれ」
 澄んだ美貌に影はなかった。
 承諾して別れた。


 夜更けに出かける前に、うっかり小屋の前を通りかかってしまった。
水樹の声が響いていた。お頭のコテツが相手らしい。
嫌な気分になった。確実に私も受けることになる訓練だ。
初回だけはわがままが通るが、その後は拒否できない。
黙ってすばやく横を通り、木の合間を渡ってお堂へ向かった。
二人は先に座っていた。
「おう」
 武蔵がうなづいた。私は中に入り、問い質した。
「本当にいいの?風花を泣かせるかもよ」
「俺にもその種の任務は来るだろう。互いに必要なことだ。
それにこいつは妹みたいなもんだから、辛い相手は選ばせたくないな」
「妹とはしないでしょ」
「まあな。そして俺たちは基本的にくの一の頼みは断らん」
 命も危うく、性さえも利用される立場への哀れみ。
自分たちも近い立場だが、その制度の頂点に立つこともできる。
「じゃあ、始めるか」リョウはこくり、とうなづいた。



 薄い布団が用意してあった。二人はそれを挟んで向かい合い、深々と礼をした。
「それでは」リョウがずい、と武蔵に寄った。
「うむ」答えた彼は彼女の着物をぐい、と剥がした。
 思ったよりは大きな胸がぷるん、と現れた。
「……成長したもんだ」
「だろう。二度と貧乳とは言わせん」
「いや、まだ成長の余地はあると見た」
 もみながら彼は言った。
「私もそう思う。…おい、強すぎだ。もう少しやさしく扱え」
「すまん」
 そっと唇を近づける。舌先がちろちろと、柔らかく乳首を舐める。
「あ……」
 片手は彼女の背に当てられ、もう片方の手は彼女の肩を撫ぜている。
リョウも女性にしては大きいが、武蔵はさらに大きいので楽々と扱う。
「ああ、あ、あああ」
 唇を胸に当てたまま、指は次第に下に下がる。そしてそれは彼女の叢に埋められた。
「はうっ」
 彼女はいったん跳ねたが、武蔵が指を動かしていくと抗議した。
「力を抜け。蝶の羽に触れるような感じだ………そう、その調子だ……いい……」
 ゆっくりと彼女の背がしなっていく。
 武蔵の唇は、うなじや肩に移動し、また胸に戻る。
そこで十分に彼女を喘がせて、今度はわき腹をなぞり、内股へ降りる。
「あ、バカ、あうっ、あ、あああっ」
 猫が水を飲む時のような音がした。リョウはわずかに腰を揺らし、武蔵の髪を掴んだ。
そのままがくがくと震えている。武蔵は自分の頭から彼女の手をとって指を外した。
「ちゃんと、濡れたようだな。もう、いいか」
「わかった。来るなら、来い!」
「……気が削がれるので言葉は話さなくていい」
 彼は着物を着たまま捲り上げ、それを晒した。
 そして、彼女の中に滑り込んだ。
「ううっ」
 息がこぼれる。
 その瞬間の彼女は、ひどく艶めいていた。
 武蔵も引き込まれるようにそれを見つめ、彼女を抱きしめた。
それから、貪るようにがつがつ、と腰を打ち込む。
「あ、あ。武蔵……」
「う、う、リョウ……凄くいいぞ!」
 快楽に引きずられた彼が忘我の表情を見せたとき、背中に冷気を感じた。




「…………そういうことなの」

 硬直したその時に、二人は達した。
私は振り向いた。
 風花は、ひどく大人びた表情で彼らを眺めた。
「す、すまん」
「ひどい」
 頬を伝う涙が、部屋の隅にともした灯りを受けて光る。
「風花、風花」
 武蔵が、必死な声で叫んだ。リョウは体を外し、懐紙で腿を拭いている。
「せめて……話してくれればいいのに」
「言えなかった」
「馬鹿!」
 風花は一瞬のうちに武蔵のもとにより、その頬をぶった。
それからリョウに冷たい視線をぶつけると、急に振り返り、私をにらんだ。
「アゲハは知っていたのね!」
「……………」
 彼女はくっ、くっ、と少し笑った。
「あなたが悪いわけじゃないってわかっている!でも、抑えられないの    っ」
 たぶん、理不尽な怒り。
「初めての相手に、空を指名するっ!!」
 言葉は矢のように私を射った。

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