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小学校の頃、俺は中路唯(なかじゆい)という娘が苦手だった。
いや、引け目を感じていた、という方が正しいかもしれない。
俺は小学校当時、虐められていた。
別に虚弱であったり、気弱であったりした訳ではない。
そういう努力次第で何とかできる問題ではなく、もっと根本的な部分、
『要領が悪かった』のだ。
勉強でも、運動でも、コツを掴むのに人の数倍の時間がかかる。
そのせいで要領のいい連中からからかわれていた。
それを救ってくれたのが唯だ。
「あんた達だって、偉そうなこと言える立場じゃないでしょ?」
唯のこの一言で、俺を虐めていた連中は黙り込んだ。
唯は学級委員にしてスポーツ万能、成績優秀、クラスの男も女もまとめて従えるボスだ。
おまけに…そう、あくまでおまけにだが、器量もいい。
小学生にしてすでに大人の目を引くスタイルと、ツリ目の涼やかな可憐さを備えた彼女には、
誰も反論ができなかったのだ。



虐めの一件以来、俺は唯を意識するようになった。
しかし唯の方は、逆の意味で俺を意識していたらしい。
『中路ってさ、なんかお前のことすげぇ嫌ってるらしいぜ』
友人からそう伝え聞いたことがある。それは全くもって事実だったろう。



やがて互いに中学生になっても、その距離感は変わらなかった。
唯にもかつてほどの勢いは無くなったとはいえ、やはりグループの中心におり、
俺は球技がダメだからせめて、と入った水泳部で黙々と練習するだけだった。



バレンタインの事は印象深い。
中学にもなれば俺にも数人の女友達がおり、いくつか義理チョコが貰えた。
しかし本当に欲しい相手の唯はというと、ツリ目をさらに冷ややかに細めてこちらを睨み据えるのだった。
『誰がお前などにやるものか』
その目は、俺にそう告げているように見えた。



高校もやはり互いに同じ所、しかし唯との距離は縮まらず、俺はもう半ば諦めていた。
知り合った年月でいえば幼馴染といっていいかもしれないが、決して交わることのない相手だ。
そう割り切れば、周囲にも他の魅力的な女子は沢山いたし、通算6年続けることになる水泳部もそれなりに面白かった。
決して記録が凄いわけでもなく、単にまぁ泳げるという程度ではあったが、継続は力なり…そんな気休めを感じるのに打ってつけだったのだ。
だから必死に頑張った。
18歳のバレンタインも、そんな行事すら忘れ、温水プールでひたすら泳いでいた。



しかし世の中はわからない。諦めて初めて手にするものがある。
プールから顔を上げたとき、俺は何か周囲の様子がおかしいと気づいた。
特に男が、ある一点を見て落ち着きなくしている。
その視線の先を辿り……視点からいってその人物の足しか見えなかったが、それでも俺は、
その締まった脚だけで誰なのか解ってしまっていた。



「…下手くその割りに、練習だけはしてたのね」
唯は制服のスカートを翻して俺の傍により、手にした箱から茶色い欠片を取り出した。
「運動の後には糖分補給よ、ほら」
俺の視線はその白い指を追い、俺の口に欠片を押し付けて恥ずかしげに歪む眉に止まった。
興奮で背筋がそそけだったのを覚えている。
温水から出た寒さとはまるで違う、痺れるような感覚。
人形のような唯の顔をそれほど間近で見たのは、実に12年間で初めてだった。
「ホワイトデー……待ってるから」
唯はそう言い残し、怒ったような顔でプールを後にする。



手にした箱に目を落とせば、チョコ生地の若干の粗さから、それが手作りの物らしいとわかった。
味は高級店さながらであったのに、だ。
俺は気付いた。
彼女は、誰よりも俺のことを見ていたのだ。
プールサイドに立つ男が口笛を吹いたのが聴こえ、俺はすぐにプールをでて目を洗いにいく。
涙が止まらなかった。
俺はまだ、こんなに唯のことが好きだったんだ、と溢れ出る涙の量で思い知った。



大学では俺たちの関係は一変していた。
バイトやサークルなど人目があるところでは余所余所しく、周囲に不仲を心配されさえしたが、
2人きりとなると甘すぎるほどの関係になる。
「おいで!」
唯はやはりお姉さん気質で、すぐに腕を広げて俺を抱きたがった。
俺は何度やっても、何十度やっても、その胸に飛び込むときに至福を感じた。
頬に当たる柔らかな感触、石鹸か柑橘系のさわやかな香り、髪を撫でる手のひら。
視線を上にやれば、ツリ目の涼やかな美貌が面白そうに俺を覗き込んでいる。
「これ……夢じゃあないんだよな……。」
「ふふ、当たり前でしょ」
そんな会話も何度交わしたか。



初めて身体を合わせたのは20歳のバレンタイン。
付き合い始めてちょうど2年後だ。
随分と初心なことだが、男の方の性欲が薄いとそんなものかもしれない。
唯が処女だったことに、失礼な話、俺はひどく驚いた。
中学・高校と、彼女は少なくとも4人以上と交際をしていたはずだ。
とっくにそういう経験は済ませたものと思っていた。



「い、い痛いぃぃッ!!」
らしいというか、唯は“その時”にまるで声を殺さなかった。
「お、おい、ちょっと!」
場所が古いアパートだったので俺は随分と焦った。
というより、あまりにきつく乾いていたので、俺自身のものも痛かった。
「こんなの毎日する人がいるなんて……世の中Mだらけね」
「あぁ、すげぇ疲れるんだな……」
お互いに股間を押さえながら呟いたのが、初めての体験談。



それでも、好きな相手とならばまたしたくなるのが本能だ。
結合こそあまりしなかったが、唯は好んでフェラチオをしてくれた。
曰く、「顎が疲れなくて舐めやすいサイズ」なのだそうだ。
また彼女は、俺に乳房や淫核を撫で回されるだけで幸せにイける、とも語った。
俺たちは浅いまぐわいながら、存分に愛を交し合った。



しかし、幸せは長くは続かない。
社会人になって3年目。俺は自分の本質が何ら変わっていない現実に打ちのめされる。







『君にとっての最善の選択を…』
『我が社が現状を打破するために……』
どういう言葉が使われようと、3年目のその日、上司から告げられたのはリストラだった。
理由を考えるまでもない。何も変わっていない。
俺は相変わらずの要領の悪さで社会に切り捨てられたのだ。
俺だって必死に頑張った。
休まず遅刻せず、手を抜くこともなく。
でも変わらないのだ。俺は以前から、適当に生きていたつもりはないのだ。



しかも今は、昔のように惨めで済む話ではない。
家に帰れば、専業主婦となった唯が笑顔で迎えてくれることだろう。
その温もりのある料理を、俺の甲斐性なさで冷え切らせてしまう。
その罪悪感。



「ごめん……もう………別れて……くれ………。」
俺は唯に項垂れてそう告げた。
今は職なし、仮に後年決まったとしても派遣だ。稼ぎは少ない。
唯が今でも好きだからこそ、俺は彼女と共に歩みたくはなかった。
器量がよく、気立てがよく、要領もいい。こんな女性が、もっと幸せにならずにどうする。
手切れ金は俺の持ち金の全てだ。これでやり直してくれ。
そんなことを言った気がする。
身勝手だ。怒るだろうな。そう思った。
事実、彼女は首がはじけ飛ぶほどのビンタを喰らわせてきた。
でも、その理由はまるで違う。



「ふざけないでっ!!あんた一人で一体どうできるってのよ!!
 苦しいなら、なおさらあんた一人じゃどうしようもないでしょうが、馬鹿ッ!!」
彼女は烈火のごとく怒って、泣いた。
俺を罵倒する言葉を散々吐きながら、その怒りは、俺を通り越してその向こうに向けられていた。
その余りの怒りに、俺は先ほどまで渦巻いていた虚しさが消し飛び、
唯を抱きとめながらようやく泣くことができた。



ひとしきり泣いた後、すんと鼻をならして唯は言った。
「あんたじゃすぐに仕事は見つかんないでしょうし、私が働きに出るわ。
 だからあんたは家のことをお願い、主夫ってやつね。……こっちの方が、私達らしいか」
俺はああ、と笑って答えるしかなかった。



不安は確かにあった。
だがこの時の不安は、まだ彼女の体調を案じてのものでしかなかった。



唯はさすがのもので、それから3ヵ月としないうちに大手金融会社への入社を決めた。
俺が入った会社よりも数段上の企業だ。
業務はかなり忙しいと見え、月曜から金曜は朝から晩まで働き詰めで、日曜にも頻繁に休日出勤の電話が鳴る。
だから今の俺達が以前のような時間を過ごすのは、一週間のうち土曜だけだ。
俺はこの時を本当に楽しみにしていた。
唯も純粋に楽しみにしてくれていると思っていた。



「…どうしたの?早くきて……」
唯がネグリジェ姿のまま、布団で催促する。俺も表面上は笑みを浮かべてそれに近づく。
ネグリジェの前をはだけると、白い乳房がこぼれ出た。
スレンダーな体型の邪魔にならないよう縮こまったような膨らみ。
その先端は赤く尖っている。
「もう、興奮してるんだ?」
俺が聞くと、唯は潤みきった瞳で二度頷いた。
俺は彼女へと重なりながら濡れ光る唇へ吸い付き、舌を差し入れる。
「んうう~…んっ…ン」
ほんの僅かに硬いその舌を口の中でこね回すと、唯は鼻からなんともいえず甘い息を吐いた。
耳がぞくっとする。
それは何というか、人妻のそれだった。彼女も妻なのだから間違いではない。
しかし、俺の中の唯は、普段澄ましているが性に関してはもっと奔放だった気がする。
処女を失ったときに場所も忘れて叫んでしまう、くすぐるときゃあきゃあと騒ぐ、
そんな可愛らしい女性ではなかったか。
今のこの舐るような艶やかさは……何だ?



茂みを掻き分けて潤みに指を差し込めば、そこももう熱く蕩けきっている。
ありえない。
あれほどに濡れが悪く、挿入の際にお互い痛い思いをしたというのに。
「ぐちょぐちょじゃないか」
「うん、一週間ぶりだから…たまってるのかな」
唯は涙さえ浮かべた瞳を薄く開けて、代わりに内腿を閉じて俺の指を奥深くにくわえ込む。
 ぐちゅっ
なんという卑猥な音が立つのだろう。
確かに色気があるし、雄としてそそられる。
それでも………そこにいる彼女は、12年見知ってきた唯のどれでもない。



俺はそれを恐れていた。昨晩から、ずっと。








家のことを任せる、と言われはしたものの、俺も仕事を探してはいた。
唯の稼ぎだけに頼りたくはなかったからだ。
半年にわたる職探しの末、決まったのは郵便輸送の下請けで、なんと唯の勤務先にも郵便を配達することになった。
同じ地域なので当然といえば当然なのだが、当初はそれに運命を感じた。
これは影ながら彼女を励ませ、ということなのだと。
そして俺は、自ら進んで唯の勤務先へ郵便を届けた。
出くわすと若干気まずいだろうが、一度働いている姿を見たかったからだ。
だが、俺は結局4年間、一度も社内に彼女の姿を見かけることがなかった。
この時点でもっと訝しむべきだったのかもしれない。



そして昨日の金曜日。俺は仕事に関わるメモを唯の勤務先に忘れ、それを取りに戻った。
時間にして夜の八時頃、社内の電気はほとんど消え、閑散とした空気が漂っていた。
俺はメモのあるだろう貨物搬入口へ向かう途中、ふと妙な音が聞こえることに気がついた。
「あ……ああ!!」
叫ぶような女の声。
「う~ん?どうしたんだ、そんな声を上げて」
少し上ずった男の声。続けてまた女がああ、とうめく。



あの場所は…第一会議室だ。社長以下重役のみが立ち入りを許可される。
深夜の会議室、男と女の声…。
これの意図するところがわからないほど、俺も子供ではない。
俺はそっとドアに近づいた。鍵穴から覗くと、室内には電気が灯っているようだった。
しかし狭い鍵穴からは大きなテーブルが見えるのみだ。
だが、俺は中を覗く方法を思いついた。
会議室の上方に開いた換気扇、あれが貨物搬入口から繋がっていたはずだ。
俺は音を立てないよう貨物搬入口に進み、脚立を使って換気扇を覗く。
ビンゴだった。
そこからは上から見下ろす形で、室内の全てが見渡せた。



室内ではちょうど会議のように、テーブルを挟んで豪奢な椅子に数人が腰掛けていた。
中年男が2人、俺と変わらないほどの若手が2人。
そして上座…社長の席と思しき黒革張りの椅子に“2人”が腰掛けている。



男に抱えられるように腰掛ける女は何も纏っていない。
テーブルの上に彼女のものと思われるOLスーツが畳んで置かれている。
女は素晴らしくいい身体をしていた。
無駄な肉がない、磨かれた弓のような体型。
身体の線をなぞるだけで『瑞々しさ』というものが実感できる。
彼女は後ろ手に縛められ、脚を大きく開かされたまま背後の男に秘部をくじり回されているらしい。
指が蠢くたびに水音が立ち、女がうめく。
それはひどくそそるものだった。
しかし、女の艶めいた黒髪が揺れ、顔が覗いた瞬間、俺は脚の力が抜けて脚立から落ちそうになった。



それが他ならぬ唯だったからだ。



そう解れば、すぐに記憶が繋がった。あの胸も、腰も、脚の膨らみも……間違いない。
唯が蹂躙されている。
その事実に、脳の内側を冷め切った汗が流れ落ちた。



「うわ、その子凄い感じてるじゃないですか。武山さんって上手いんすね」
唯の足が跳ね上がったのを目ざとく見つけ、若手の一人が言う。
「ったりめぇだ。そのおっさん、顔だけは優秀な生意気女をゴマンと甚振ってきてるからな。
 そこらの女一人蕩けさすくらい、車の運転よりラクにやっちまうぜ」
中年が答えたのに笑い、また別の男も言う。
「考えてもみろよ。そんな奴の膝乗っけられて、手ェ縛られて、脚も目一杯に開かされて、
 碌に抵抗もできないまま弄繰り回されるんだぜ?
 おれが女の身になったら、たまったもんじゃねぇやな」
「あはは、確かに」



若手と中年達がしきりに嘲り笑うなか、唯を抱く男は指を鉤状に曲げ、そのまま根元までねじ入れる。
「あっ!ああぅ、うああ…っ!!」
唯は顔を仰け反らせ、白い喉を晒して喘いだ。なんと苦しそうな声だろう。
「おぉい、あんまり蜜垂らして社長の椅子汚すんじゃねぇぞ。
 あのジジイ潔癖だから、見つかるとコトだぜ?」
誰かが茶化すと、唯はツリ目をきつく瞑り、唇を噛み締める。
必死に堪えているのだろう。
しかし手が封じられ、脚も閉じられない彼女に一体何ができるというのか。
「先生ー、蜜がどんどん出てきまーす」
後ろの男はますます図に乗って唯の中をくじりまわす。
遠く上方から覗く俺にさえわかるほど、白っぽい飛沫が舞っていた。




唯の脚は一瞬強く閉じかけ、しかしその後に力なく左右に開く。
ぐったりした細い身体は、あまりにも解りやすく蕩けていた。



ようやく男の手から開放された時には、すでに唯は腰が立たなくなっていた。
脚がひどく痙攣し、四つんばいになった髪から胸から、滝のように汗が流れ落ちてカーペットを黒染めにした。
「やれやれ、やっとかよ。待ちくたびれたぜ」
中年の一人が腰を上げるのを、もう一人の中年男が止める。
「おい、待て。先にこいつらに犯らせてやろうや」
男は若手2人を示した。彼らはいずれも股間を激しく屹立させきっている。
「マジっすか!?」
「ええ、本当にこんな可愛い娘としていいんですか?」
若手が舞い上がるのを、中年はさも可笑しそうに眺めた。



「ああ、好きにしろ。特別な学歴も経歴もなしに、本気でウチに通ってると思った馬鹿女だ。
 それにこいつ自身もとっくに納得済みだぜ。
 唯一、ウチの品質に適った顔で仕事が貰えるんだからな」
男は力なく倒れ伏した唯を仰向けに寝かせ、その脚を開いてみせる。
遠くからでは良くは見えない。しかし間近の彼らには、鮮やかなピンク色をしたそこが息づいているのが丸見えだろう。
「……へ、へへ、そうっすよね。俺ら頑張ったご褒美っすよね。…おい、いくぞ!」
若手はたちまち強気になり、唯を組み敷いた。
「う…!」
唯の声が聞こえる。覆いかぶさったままでよく解らないが、姦通されたのだろう。



「ああ、すげえ!すげえっすこの女!!めちゃ気持ちいいし、はは、いい表情する!!
 こんな点数高い女とやったの初めてっス!」
若手はすっかり我が物顔で唯を抱き起こし、抱え上げて、口づけをしながら突き上げる。
駅弁、とかいうスタイルだ。
後ろで縛られた唯の小さな手が揺れ、時おり結合部から、目を疑うほど若々しい怒張が覗く。
精力の塊という感じだ。
おそらく、彼らは若手の中でも才気溢れる方なのだろう。
出来が悪くて切られた俺とは真逆で、会社に信用され、重宝される存在。



「何回やっても良いが、中出しは極力避けろよ。次に良いのが入ってくるまで、長く愉しみたい」
「まだちとキツいが、アナルにも入るぜ。一度突っ込んじまやぁ前より具合も良い」
「へぇ、また変態ですねぇ」



唯を囲んでにぎやかに盛り上がる声を聞きながら、俺はやっとの思いで脚立を降りる。
そして静かにうずくまり、壁を背にして、
泣いた。


          END


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良いですよ~

次回作、期待してます!

良い

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