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ほのぼの

「課長、大丈夫ですか」
「うむ。大丈夫だ」
青山清一は部下の島田に肩を貸してもらいながら歩いている自分が情けなかった。
今年、三十八歳になる清一は、最近、酒に弱くなっている事を自覚していた。今日も
仕事について若くて有望な部下の島田に助言してやろうと居酒屋に誘ったはいいが、
二時間もしないうちに自分が潰れる始末。助言どころか島田に背負われてタクシー
に乗せて貰った挙句、十二階建てのマンションの一室まで送り届けて貰っている途
中なのである。情けないにも程があった。


「課長、ご自宅に着きましたよ」
「うむ。ああ、すまんな」
汗びっしょりになりながらチャイムを押す島田を見ると、今日びの若者の割にはいい
やつだと思った。それと同時に、
(俺は年だな)
と、しみじみ思う。比べて、二十四歳の島田の若々しさはどうだろう。大学時代はアメ
フトをやっていたそうで、肉体は筋骨隆々、それでいて荒々しさは微塵もない好青年
である。清一は島田と自分を比べると、余計に生きている事以外、勝っている部分は
無いように思えた。



ややあって扉が開き、妻の理恵子が現れ驚いた顔をした。清一とは年が一回りも違
い、今年二十六歳の人妻は、子供がいないせいか実年齢よりも若く見えた。
「おかえりなさい。あら、あなた、どうしたの?」
「奥さん、夜分にすいません。課長、ちょっとお酒が過ぎたみたいで」
何言ってやがる、と思ったが、今の清一にはその一言すら出ない。ただ、島田に対し
てすまなそうな顔をする妻に詫びたい気持ちだった。
「ごめんなさいね、あなたったら、もう」
「中まで運びましょう」
「本当にごめんなさい」
自宅へ帰ったという安堵感からか、清一の記憶は一旦、ここで途絶えた。



だがうつらうつらとするうちに、キッチンのテーブルに向かい合わせで座っている妻と
島田の姿が見えている。
(水・・・)
そう言ったつもりだが二人とも清一の方を見向きもしない。理恵子は島田にコーヒー
を勧めていた。酔い覚ましのつもりかと清一はどうでも良い事ばかり頭に浮かんだ。
そのうちに二人の会話が弾んだ。特に島田と年の近い理恵子は楽しそうだった。
(なんだ、あいつ)
その思いははたして妻に対してなのか、島田に対してなのかは分からない。ただ、
何かが気に食わなかった。


「そう、島田さんっていうの。私は理恵子」
「理恵子さん、ですか。いや、課長の奥様がこんなに若いとは思いませんでした。僕の
方が年が近いですね」
「そうね」
そのやり取りに清一は疎外感を覚えた。女房が若い男とはしゃぐ様が眩しかった。
「うう・・・」
意識が次第にはっきりしてくると、清一は体を起こした。この時、初めて自分が居間の
ソファに寝かされているのに気がついた。



「あっ、課長が起きたみたいですよ」
「水が欲しいみたい。ちょっと待ってて」
妻が水を持ってくると清一は安堵した。それで良い。お前は俺の女房だと心で呟いた。
しかし水を飲むと急激に体から力が抜けていった。そしてそのまま目を閉じてしまった
のである。



朦朧とする意識の中、やっとの事で開けた目に奇妙な光景が飛び込んできた。キッチン
のテーブルに理恵子が手をつき、その後ろから島田が覆い被さるように体を重ねている。
はてこれは夢かと清一は目をこするが、どうもそうではないらしい。おまけに二人は素っ
裸で、キッチンの床には散乱した衣服があった。清一はまず鍛えられた島田の肉体を
凝視した。並外れた筋肉の持ち主である島田の体は美しかった。若いというだけではな
く、自分を節制して鍛え上げた事があの筋肉を見れば分かる。そして妻はその島田に
組み伏せられ、喘ぎ声を上げていた。清一の耳にはおぞましい理恵子の叫び声が聞こ
える。もっと、もっとと。



(何をやってるんだ、お前ら)
一瞬、頭に血が上ったが清一の体は動かなかった。それどころか声も出ないのである。
清一は酔いが過ぎると正体がなくなるのが常だった。そのせいで自分の女房がやられて
いるのに、声ひとつ上げられないのである。
「ああん、ああっ!」
凄い勢いで逞しい陰茎をねじ込まれ、理恵子は喘ぎまくっていた。テーブルはガタガタと
揺れ、上においてあったコーヒーカップは倒れていた。よく見ると上半身にはブラジャー
だけが残っていたが、島田の手によってずらされた為、何の役にも立っていない。それ
にしても理恵子に挑む島田の陰茎の逞しさときたらどうだ。未開人の持つ棍棒のように
大きく、何という凶悪な風貌だろう。それに丈もあり、先端はそれこそ開いた傘のように
なっている。



テーブルのがたつく音と共に、島田の腰が理恵子の尻にぶち当たる音が室内に響いて
いた。そしてそれに合わせ泣く、我が妻の声──
「凄いわ。もっと強くして、ね」
「分かってますよ、奥さん」
清一は歯を食いしばり立ち上がろうとした。だがどうやっても動けない。まるで一服盛ら
れたかのように体が痺れ、指先が少々、動く程度だった。島田が背後から理恵子の乳房
を揉み、乳首を捻った。理恵子はああとかううくらいの事しか言わないが、楽しんでいるの
は間違いなかった。更に言うと清一と同衾中には、あれほどはしたない声は出した事が
無い。



(やめろ)
目は間違いなく見開いているのに、体が言う事をきかない。清一は拷問にでも遭っている
かのようだった。部下に妻を犯され、それを眺めているなどという事ほど惨めな話は無い。
ここで島田を殴らねば男がすたる。しかし、体は動かなかった。
「奥さん、中に出してもいいんですか」
「いいわよ、うふっ・・・」
理恵子は髪を手で漉きながら、色っぽく答えた。
「それじゃあ」
島田は椅子を引き寄せそこへ腰を下ろすと、理恵子の尻を掴んで陰茎の上に座らせた。



「私、こういう格好、初めてなんだけど」
不安げな理恵子を宥めるように島田は笑って、
「僕がリードします」
そうして理恵子は陰茎の上に跨らされ、徐々に腰を下ろしていった。
「ああっ」
理恵子は一瞬、苦しそうに顔を歪めたが、陰茎を下の口ですっかり飲み込むと、ほーっと
ため息を漏らした。そしてすぐに頬を緩め、
「この格好だと、あそこの中が一杯になる感じね。でもちょっとはしたないかしら」
「そうでしょう。僕も人妻相手だから出来るんです」
「じゃあ、私だからしてくれるってわけ?彼女に悪いわね、ふふっ」



先ほどよりも刺激的な体位を取ったせいで、男女の結合部は丸見えとなった。清一の目か
らは肉の杭が妻の中へ打ち込まれているように見え、何かの刑罰でも受けているかとさえ
思った。だが当の本人は苦しむどころかむしろ喜びを感じ、
「ねえ、島田君。動いてみてよ」
と言って、淫靡に笑うのである。
「あまり派手にやると課長に気づかれますよ」
「大丈夫。あの人、寝つきが良すぎて困るくらいなのよ」
二人が自分の方を見て声を揃えて笑った時、清一は全身の血が逆流するのではないかと
思うほど怒った。だが体は相変わらず動かないし、声も出ない。



(島田、てめえ、後で覚えてろよ。理恵子、お前もだ。離婚だ、離婚)
いくら心で叫んでも届くはずも無く、清一は妻が犯される所を見ているしかなかった。
うっすらとしか開かない目のせいか二人は自分が起きている事にも気づかぬようで、
それがまたいっそう清一を苛立たせた。理恵子の中を出入りする陰茎には濁った粘
液が付着し、室内には生肉をこねるようないやらしい音が響く。理恵子は感じている
のだ。普段、夫婦の閨にあれほどの情感が高まる事があるだろうかと清一は自問し
たが、無いという答しか出てこなかった。



島田の物と比べて、清一の陰茎はやや小ぶりだった。そればかりではなく、島田は性
技にも長けていた。相当、女慣れしているようで、この辺も清一には遠く及ばない。要す
るに妻はすけこましに、いいようにされているのである。それは理恵子の顔を見ても明ら
かだった。だらしなく男の上で大股を開き、喘ぐ様はとても我が妻とは思えない。いや、
思いたくなかった。



「奥さん、いきますよ」
「ああっ、きて」
二人はしばらくの間、言葉を交わさず、ただひたすらにのぼりつめる事に専念した。
相変わらずテーブルはガタガタと騒がしいが、島田も理恵子も声を上げないので、
清一はサイレント映画でも見ているような気分だった。
「うっ」
島田が妙な声を漏らすと、理恵子は顔を上げて、ああ、と呟いた。島田は腰を何度か
激しく理恵子の尻にぶつけると、陰茎を抜いた。すると理恵子の中からは白濁液が
小便のように流れ出したのである。



(中に出しやがった、あの野郎)
清一ですら三十歳までは子供がいらないと言っている理恵子の体内に子種を出せる
事は滅多に無い。それを島田はあっさりと成し遂げた。二人は今日、数時間前に顔を
合わせたばかりである。その男に妻が夫にすら認めぬ行為を許すとは、一体、どうい
う了見なのだろうかと清一は怒りに震えた。
「奥さん、良かったですよ」
「私も・・・こんなに興奮したの、何年ぶりだろう」
理恵子は島田の上から降りると、今も隆々と天を突く陰茎の前に傅き、唇を寄せた。
「後始末するわね」
そう言うと理恵子は島田の陰茎をすっぽりと咥え込んだ。それに驚いたのは清一で
ある。



(あんな事、俺は一度だってしてもらった事が無いというのに)
理恵子はこれまで、清一の陰茎への口唇愛撫を拒んでいた。行為自体が汚らしいとい
うのがその理由であったが、それすらもたった今、覆されてしまった。清一はこの瞬間、
ほとんど夫婦生活が破綻したと思った。子種を発射したばかりの陰茎に食らいつく我が
妻の姿を見て清一は絶望した。
(あいつは別に俺が好きで結婚した訳じゃないんだな)
一応、恋愛の末に一緒になったので、少なくとも自分の方には愛があると思っていたが、
理恵子の方は案外、そうでもなかったらしい。そう思うと清一は目に涙が浮かんだ。そ
して気を失うかのように眠ってしまったのである。



「あなた、あなた」
理恵子が自分を呼んでいるのに気づくと、清一はあっと声を上げた。
「お前」
「どうしたの?怖い顔をして」
驚いた妻の顔は、清一にとっては意外な感じだった。
「あれ?」
清一は寝巻きを着てベッドにいた。頭がひどく痛む所をみると、相当、深酒をしたらしい。



「酷い顔してるわよ。顔を洗ってきたら」
「ああ、そうね」
時計は午前七時をさしていた。自分の記憶では確か背広のままソファで寝たはずなのだ
が、きちんと寝巻きに着替えて寝室にいるので、それが清一には不思議だった。
「あ、そういえば」
ここでふと、昨夜、理恵子が島田とよろしくやっていたのを思い出し、清一の頭に血が上
った。そしてとっちめてやらないとと意気込みつつ台所へ向かった妻の後を追ったのだが。



「おい、島田の野郎はどうした」
「島田さん?あなたを送り届けてくれたわよ」
理恵子はシンクの前に立ち、振り向きもせずに答えた。
「それは分かってる。やつはどこにいる」
「あなたを送ってすぐに帰ったじゃないの。覚えてないわけ?」
「え?そうだっけ?確か上がって、お前とコーヒー飲んでたような・・・」
「タクシー待たせてあるからって、玄関で失礼したわよ。いい人ね、彼」
「ああ、そうだな・・・会社でも有望株なんだよ、うん」
おかしな具合である。島田を糾弾するつもりが、褒めちぎっているではないか。清一は
自分の問答にも不可解さを感じた。



「あなたもそんなに若くないんだから、深酒はたいがいにしてよ」
理恵子は濃いコーヒーを差し出しながら、不甲斐ない亭主を睨みつけた。年下の妻に
こうも窘められる自分が愚かでみっともないと思いつつ、清一はコーヒーに口をつけた。
(夢だったのか)
妻が淹れてくれたコーヒーはいつも通りの味である。それが、理恵子には何の隠し事も
無いように清一には思えた。



「ねえ、あなた」
「ん?どうした」
理恵子は少し頬を染めつつ、
「そろそろ、赤ちゃん作ろうか」
「いきなり何の話だ」
「ほら、私、三十までは赤ちゃんいいって言ってたでしょう。あれを撤回したいのよ。あな
たももうおじさんだし、何より手がかかるから今までは欲しくないって言ってたけど、昨日
の事で考え方を改めたわ。あなたに父親の自覚を持って貰いたいと思うの」
「はあ」



「だから今夜は早く帰ってきてね」
「ああ、うん・・・」
清一は自分の頬が熱くなるのを感じた。妻とこういう風に語らうのは、久しぶりだった。
「昨日みたいにへべれけになって帰ってきたら、家に入れないからね」
「分かった。今日は飲まないよ」
それから清一は顔を洗って身を清め、背広を着て家を出た。二日酔い気味だったが足は
軽かった。
「俺が父親か。うん、悪くない・・・悪くない、が・・・」
ここでまた嫌な考えが脳裏をよぎった。もし昨夜、島田が理恵子を抱いたのが事実だとし
たら、の話だ。



普段、夫には許さぬ受精行為を島田にさせ、それを誤魔化す為にそんな事を言い出した
のではないだろうかと思うのである。しかし、それを裏付ける証拠は無い。一旦、晴れた
疑惑が再び沸き起こった。
「どうすりゃいいんだ」
清一は頭を抱えて座り込んだ。結局、何も解決されていないのである。それどころかこの
まま子供を作っても、それが我が子という保証もない。DNA鑑定をすればいいのかもし
れないが、それだと妻を疑ってかかる必要があるだろう。そうすれば、夫婦仲は終わる。
後で他人の子供と分かったらもっと事態は悪くなる。そうして清一は希望と不安を抱えな
がら、とぼとぼと歩くのであった。                         


おしまい

コメント

タイトルのギャップがものすごい

すげー

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