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切り取られたページとビデオテープ(3)

私は伝票を取ると支払いをして先に店を出た。
暫く後ろに注意を払った後、藤原の家に向かう電車の駅にタクシーで向かった。
駅前のデパートで見舞いのケーキを買い、電車に乗った。

電車の中でぼんやりと…俺のしてる事って復讐の名を借りた自己満足だな。等と考えると目的意識が薄らいできた。
果たして彼女は喜ぶだろうか?それよりも俺と彼女はどうなるんだ?
考えが纏まらないうちに駅に付き、俺は駅前の地図で確認しながら…
藤原のマンションに向かった。

階下のインターホンを鳴らす。すぐに奥さんらしき人物が出た。
「私、○○の田中と申します、北島からの遣いで参りました。」
奥さんはすぐにオートロックを解除してくれた。
エレベーターを降りると奥さんがドアを開けて待っていた。


奥さんは玄関で丁寧に挨拶をされた。
「主人は先ほど薬を飲み寝た所なんですよ、階段から足を踏み外すなんて恥ずかしいですわ」
俺は促されるままに部屋に入り、藤原の部下を装った。
「部長にはいつもお世話になっておりまして…」
リビングに上がり冷たい飲み物を出され、奥さんと話した。
会話の中から高校生の娘がいる事を知り、大学受験が控えているのにテニスに明け暮れている話等を聞かされた。


俺は暫く奥さんの話を聞いていたが
「ご迷惑でしょうから、そろそろおいとまさせていただきます。」
「部長に宜しくお伝え下さい。社の方は大丈夫ですし、例の件もまだ期日まで日がありますから、とお伝え下さい。」
俺は丁寧に挨拶をして藤原の家を出た…。

一つ片付いたな。
率直な感想だったし、俺自身ギリギリだった。

自分自身、復讐鬼として暴走する事が怖かった。
娘の勉強を見て欲しいと冗談混じりに言われた時には…俺の中の悪魔がざわついたのは確かだった。

当初の目的を逸脱しているのはわかったが、復讐という大義に酔っていた。

帰りの途中俺は何故か欲情してしまい、ヘルスに飛び込んだ。
ヘルス嬢があの手この手で尽くしてくれたが、結局は射精に至らずに時間切れ。

自己嫌悪に陥る。

次の日から溜った仕事があるので疲れていたが、彼女の実家に向かった。
留守なのはわかっていたが、直接見舞いに行くのは度が過ぎている気がした。
見舞いの花束を買い、彼女の実家に行き…チャイムを鳴らした。
誰も出ない、…しかしそれが何故か嬉しかった。
門を開け、玄関脇にそっと花束を置くとメッセージを残して帰宅の徒についた。

夜になり、彼女からお礼の電話があった。途中で彼女の母親が代わり、お礼を言われた。

その日は夕方早くから寝てしまった。
次の日からは普通に仕事に戻り、週末に彼女の父親を見舞った。
彼女は俺に何かを言いたそうだったが、言い出せない雰囲気だった。


それから彼女の父親が退院する迄は平日に待ち合わせして一日、週末に見舞いを含めてのデートを繰り返した。

四か月が過ぎ、彼女の父親が退院をした後の快気祝いの食事会が開かれた。
俺も呼ばれて出席した。
彼女の父親は久しぶりの酒の酔いも手伝って、普段より饒舌になった。そして突然

「君の気持ちが変わらなければ娘を貰ってくれないか?」と切り出された。


俺やみんなが呆気にとられていると、彼女の母親が助け船を出してくれた。
「そういう事は時期がきたら二人で決めるものよ。娘の父親が言うものじゃないわ」

彼女の姉も「お父さんがプロポーズしてどうするの?」そう言い、場が笑いで包まれた。
横目で彼女を見たが、彼女は俯いたままだった。


それから一ヶ月後の彼女の23歳の誕生日。
俺は彼女を恵比寿のイタリアンに誘った。そこは二人で何度も行った店だった。
二人で食事を楽しんだ後、エスプレッソを飲みながら…会話が結婚の話になった。
俺は「まだ準備もしてないけど、エリカが嫌じゃなければ結婚しないか?」って言った。

沈黙に耐えられずに…続けて「プロポーズみたいな重いもんじゃないよ」みたいな事も言った。


「言わなくてもいい事だってあるんだよ。俺はお前の全てを受け入れる覚悟してるから…」

エリカは泣きじゃくっていた。そして「私も同じ気持ちなの!でも、あなたに言わなければ一生後悔する!」

彼女は続けた。「実は会社の…」

俺は彼女の名前を呼び制止させ…「知ってるよ、問題は既に解決してる」

彼女は信じられない…という表情を見せた。


「嘘、嘘でしょ…当てずっぽうでしょ?」彼女は懇願するように俺に聞いた。

俺は少し間を置いてから「藤原だろ?」って答えた。

彼女は冷めた目で俺を見つめ「何で?何で?…」と繰り返し、俺が答えないのがわかると…
「信じられない!」って席を立った。
俺も伝票を取り後を追いかけたが、支払いをしている時に彼女は走り出した。
レジを打つ間が待てなくて「これで足りるよね?」って財布から3、4万を抜き出しマネージャーに渡して後を追った。
エレベーターは既に降りていたので階段を必死にかけ降りた…。


階段を必死に降りながらも後悔していた…と思う。
正直、記憶がなかった。

一階に辿りつき、辺りを見回したがエレベーターホールには人影もなく、エレベーターも止まっていた。

どっちだ?と飛び出した瞬間…

光るモノが目に入ったと思ったのと同時に衝撃が襲った。
身体が跳ねた感覚と暖かい水のような流れと悲鳴や怒声が聞こえていた。

どうやら跳ねられたらしい。

記憶がそこで途切れた。

意識が戻ったのは救急車の中だった。左目がぼやけていたが彼女が泣きながら救急隊員と話をしていた。

死ぬのかな?このまま死ぬのかな…
意識が朦朧としていたから断片しか思い出せなかったが、彼女の名前を呼んだような気がする。


救急隊員が何か言ってる…

覚えてないが、受け答えはしっかりとしたらしい。

そのまま「寝かせて…」俺は気を失ったような眠ったような状態になった。
はっきりと意識が戻ったのは次の日になってからで俺の両親も彼女の両親も来ていた。

結局頭を強く打っての脳滲透だったのと、右手首を折っただけだった。アチコチ痛いしすり傷は沢山あった。

精密検査と療養の為に五日間入院したが、後は通院にした。
事故の相手は徐行に近いスピードだったが一方通行を逆走してしまい慌ててその区間を通り過ぎようとしていたらしい。
事故後の交渉等は父親に任せたので割愛します。

暫くは右手が使えなかったが、俺は左利きだったので問題なかった。
仕事にも影響なく、すぐに戻った。

彼女から状況だけ聞いたが、彼女は俺が支払いをしている間に化粧直しをしていたらしい。
それに気付かずに俺は慌てて追いかけたのだが、彼女はマネージャーからキチンと釣りを貰ったとの事だから、それも本当の話なんだろう。
彼女がエレベーターを待ってる間に俺が事故に遭ったらしく彼女は泣き叫んでいたそうだ。
時間の感覚とかがズレていて、今でも思い出せません。



退院してから暫くして、俺は再度彼女にプロポーズした。

彼女は困った顔をして「でも…」

俺はとぼけて「何の事?」「確かオッケーだったよね?」

「もう一度返事を聞かせてほしい」彼女は今度は嬉し涙ながらに「わたしでよければ…」

その後…二年後に彼女と結婚しました。

結婚後半年が過ぎた頃に何故だか帰宅拒否症になった。
俺自身でも意味がわからなかったし、理由もなかった。毎日朝帰りが続き…それでも彼女は何も言わなかった。



今は謎の帰宅拒否症も当然治まりました。

今年で結婚10年目ですが夫婦喧嘩もありません。

例のビデオはまだありますが、見てはおりません。そして藤原と北島ですが、多少の遅れはありましたが退職しました。退職金は受け取りませんでした。

化粧直しの件ですが、彼女と俺の記憶に差があるのと深く思い出せない、また思い出したくないのでしょう。
事実は違うのかも知れませんが、医者から聞いたのですがその間の記憶がない時には「こうだったよ」って言われるとそのような気がするそうです。

長い時間ありがとうございました。
短文にしたのは文字化けしたら…面倒だとの思いからです。
不快な思いをされた方、申し訳ありませんでした。

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