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その男、昏睡中につき(13)

添付画像を見るたびに英子は吐き気をもよおした。
一体、山本はいつ、この画像を撮ったのだろうか?
特に、その画像を公開するとか誰かに見せるというような脅迫はしてはこなかった。
山本は何を考えているのか理解できなくなった。

あの事件以来英子は不眠が続いていた。
実家に非難していた時は暖かい家族や地元の友人たちと過ごし、
嫌な事も忘れつつあったが、東京に戻り秀樹と村上がいちゃつく姿を
見かけてしまったり、この山本からのメール攻撃に精神的に不安定な
状態になっていた。
別荘での出来事と山本にレイプされたことはもう忘れようとしている
さなかでの山本からのメールは英子の心を不安定にさせるには十分だった。


英子はこのままでは体が持たないと判断し、医師の治療を受けようと思った。
いろいろと調べてみたが、近所に精神科などはあったが、かかるには不安があった。
自宅近くでは見つからなかったが、隣の区に心療内科で睡眠障害の治療をする
クリニックがあり、そこに通うことになった。


はじめて医師の診察を受ける時はやはり、かなりの抵抗があった。
しかし、決心していざ、医師の診察を受けてみたら、以外にも思っていたような
雰囲気ではなく、普通の病院や普通の医者とあまり変わらなかった。
患者のプライバシーを守るために、完全予約制となっていて、病院のスタッフ以外の
患者などとは顔をあわす事もなかった。


最初の診察の時に、医師から睡眠障害を引き起こすようになった原因に心当たりは
あるかと訊ねられた。
英子は、真実を話すのが恥ずかしくて心当たりはないと答えてしまったが、
医師は、心配しなくても、医者と患者の間には守秘義務があり、医者が患者の事を
他人に話すことは絶対にない、医者と患者の間に信頼関係が築けないと治療も効果
がない等とやさしく諭されて事実を話す事にした。


細かい内容については医師も聞かなかったので事実関係を簡潔に話した。
彼氏と彼氏の友人、その彼女の4人で旅行に行ったが、そこで彼氏が親友の彼女と
浮気をしてしまった事、ショックを受けた英子とその親友は二人きりで帰ったこと。
その帰り、彼氏の友人にラブホテルに行く事を許してしまい、そこで無理やり
やられてしまった事、その後、実家に帰っていたが、夏休みも終わり再び上京
してきたが、彼氏と友人の彼女が付き合っていることを知りショックを受けた事。
そして、彼氏の友人がその後しつこく何度もメールを送ってきて付き合って欲しいと
付きまとっていることなどを打ち明けた。


医師は非常に親身に相談に乗ってくれた。
レイプ救済センターに相談したがお話しにならなかったことも打ち明けた。
ああいうところは、担当者によって対応が極端に違う場合があるという事も知った。
たまたま英子にあたってしまった担当者の配慮が足りなかったのだろう。

山本の件についても医師は英子が山本に明確にNO!と言わないから付きまとっているのだろうと判断した。
その場合も相手は直接姿をあらわしているわけでもないので断りのメールをいれてみることに
したほうがいいと。
それでも相手がメールを止めなかったり行動がエスカレートした場合は大学に相談するか警察に相談するように
したほうがいいとアドバイスしてくれた。


一度目の診察でほとんど全てを語ることができた英子は久しぶりに
肩の荷が下りたような気がした。
こんなことならもっと早く医師の診察を受ければよかったと。
全てを話して気が楽になったのか英子は涙が自然とこぼれだした。
この時も、医師は慌てる事もなく、かといって過剰に反応するわけ
でもなく対応してくれた。


そして、医師は、睡眠障害を治療するためには軽いものの場合は原因を
取り除く事により解決するが、睡眠薬を用いた治療法もあることを説明した。
英子は迷わず、睡眠薬による治療を希望した。
医師の説明によると、はじめは軽いものを処方するので1週間試して欲しいと。
そして、1週間後、処方された薬を用法を守り服用したか、
治療の効果はあったかを確認すると。
ただし、効果があったからと途中で服用をやめることはしない事、
眠れるようになったかどうかは患者の話を聞いて医師が判断するとの事等の注意事項を
聞かされて診察は終わった。


英子は診察後、窓口で処方箋を受け取ると薬局に行って、この処方箋を渡して
薬を受け取るように指示された。
薬局は同じ建物の中にあるのでそこで買ってもいいし、処方をしている薬局なら
どこでも薬を受け取る事ができると説明された。
薬については、薬剤師から再度、説明を受けて必ず用法を守るようにと念を押された。


睡眠薬か・・・
医師は用法をきちんと守れば常習性はないと言っていたが、副作用がない薬はない、
とも言っていた。
副作用が激しい場合は1週間後とは言わず直ぐにでも相談して欲しいと言っていた。
まさか、自分が睡眠薬の世話になるとは思ってもいなかった・・・


英子は同じビルにある薬局に行き、睡眠薬を処方してもらい、薬剤師から
薬の効果と予想される副作用などを聞かされ、再び用法を聞かされきちんと
服用をするようにと言われた。
「睡眠薬ってこんなに厳しく管理されているものなんだな」
英子は説明を聞きながらそう思った。
「これだけうるさくされるなら、ドラマなどで睡眠薬を悪用するというのは
やはり、物語の世界だけなんだろうな・・・」ふとそう思ったりした。


英子は部屋に帰ると山本との決着のつけ方を再度思案したみた。
医師には局部アップの写真がメールに添付されていることなどはさすがに話せなかった。
しかし、このまま山本からのメールを受けつづけるのもごめんだった。
メールアドレスを変えるか・・・それとも携帯を変えるか・・・
しかし、これらは相手が分かっていない場合は効果があるかもしれないが、
山本の場合は違う、その気になればいくらでも接触する手段はある・・・
それに、やはり画像の事が気になった。


山本にメールで付きまとうのはやめて欲しいと伝えよう。
そして、画像も全て破棄してもらうように伝えよう・・・
しかし、あの変質的な山本が素直に画像を破棄して付きまとうのを止めるだろうか?
やはり、警察に相談するのがベストだろうか・・・
テレビのニュースなどでは警察に相談しても何もしてもらえなかったこともありストーカーに
殺害された被害者の事を報じていたこともあった。
果たして警察が動いてくれるのだろうか・・・

英子は考えがまとまらなかったため、この日は医師の処方した薬を服用して
睡眠にはいった。
睡眠薬を飲んだからといって、ドラマのように突然意識が遠のくというような
事はなく、いつもとあまり状態は変わらなかった。
はじめは様子見だと医師も言っていたし、不眠の根本的な原因の山本の件が
全く解決していないしな・・・
一体どうしたらいいのだろうか?


薬が効いてくれないかな・・・
いろいろな事を考えていくうちに時は過ぎていくのみだった。
結局眠れないのだわ・・・
意識するとかえってよくないとも医者は言っていた。
嫌な事も考えずにリラックスして横になるのがいいと。
眠れなくても、規則ただしく同じ時間に布団に入り
起床時間も同じにする必要がある。


時はいたずらに過ぎていった。
とりあえず、明日は新しい携帯電話でも見に行こう。
それからその後の対策を考えよう。
携帯を変えるのもよし、メアドを変えるのもよし、選択肢はいくらでもある。
そんなことを考えているうちにいつのまにかうつらうつらとしてきた。
あー、効いているかも・・・


医師の処方は確実に効果があった。
診察を受けて原因に対応しなければならないことが分かっただけでも気持ちが
楽になったのかもしれない。
英子の睡眠障害は日々よくなっていった。
眠れるようになってからは頭も働くようになった。


英子は2度目の診察を受けた。
やはり、根本的な解決をしたかどうかは聞かれたがそれはまだ、何もしてないと答えた。
医師は、気持ちは分かるがこのままでは根本的に解決しない、今すぐにとは言わないが
相手に迷惑していることを伝えるのは早いほうがいいとアドバイスされた。
睡眠薬の効果は確実に現れていて、副作用もないことからもう1週間処方する事になった。
翌週の状態を見て、睡眠薬の量を減らしたり薬を止めたりするとの事だった。


英子は医師のアドバイスどおりに山本に迷惑しているとメールで伝えようと決心した。
それに、添付されてくる画像は一体何かも聞くつもりであった。
これ以上、付きまとうようだったら出るとこに出ると脅してみようかとも・・・
しかし、変質者の場合は追い詰めると何をしでかすか分からない事が恐ろしかった。
英子は画像を知人に送られたりインターネットで公開されることを非常に警戒していた。


おそらく、山本は携帯についているカメラかデジカメで英子の事を撮影したに違いない。
携帯の場合は、電話機に画像が保存されている。デジカメの場合はやっかいだった。
目の前で画像を破棄させてもパソコンのメモリやCDRなどに保存している事もある。
それらを確認するためには、山本の部屋に侵入して山本のパソコンを調べる必要がある。
しかし、留守宅に侵入することは不可能である。では一体どうすれば・・・


英子は考えた末に結論を出した。
山本の部屋に招待されるしかない。
山本は両親と一緒に住んでいる、
だからあのホテルでレイプされた時も
部屋には連れて行けなかった。
では、どうやったら山本の部屋に行く事ができるのだろうか?


たとえ、山本の部屋にうまく侵入することができても、パソコンが部屋にあるかどうか?
また、パソコンにパスワード設定されていないだろうか?
山本がひと時も英子の側を離れる事がないかもしれない。
そして、山本の部屋で再びレイプされないだろうか・・・
英子の頭の中は錯綜していた。考えがまとまらない・・・


山本の家に行くためには迷惑だとメールを返信する事はできない。
迷惑だと思う相手の家に行くとなれば山本も警戒するだろう。
山本は英子との交際を求めているわけだ。
ならば、交際の条件として、山本の両親に会いたいとか家を訪ねたいとか
いくらでも主張できるのではないだろうか。



先ずは、山本に話をしたいと伝えよう。
それから、山本の部屋に行きたいという方向に持っていこう。
そして、山本はおそらく、からだの関係を求めるだろう、
それをうまくはぐらかせて、肝心な目的を達成するためには
どうしたらいいのだろうか?

英子は数日かけて考えをまとめて山本にメールを返信する事にした。


英子は決心を固めると山本にメールを出した。

山本君とは秀樹の友人として付き合ってきたため今まで恋愛対象として
全く意識した事はなかった。
夏の事件は自分の目の前で起きたことが信じられなくて自暴自棄になって
しまった結果起きたことだ。
その後、秀樹が村上と付き合うことの交換条件として自分を山本君に差し
出したと聞いたが、自分は物ではないので二人の間の取引を私にあてはめ
ないで欲しい。
山本君の希望は取引の結果としてではなくて本心で付き合いたいというの
なら考えない事もない。
添付して送ってくる画像はいつ撮ったもので何故山本君が持っているのか
詳しく知りたい。

だいたい、こんな内容だった。

山本からは直ぐに返信がきた。

別荘での出来事は自分にとってもショックだった。
しかし、翌日の英子と過ごした夜は生涯忘れられない位の最高のひと時だった。
英子の事が忘れられない。英子と付き合いたいというの本心からで、たとえ秀樹
が英子との仲を祝福しなかったとしても心は変わらない。

肝心の画像の事には一切触れられていなかった。


英子は何気ない会話をするように何度かメールをやりとりしたが、
画像の話になると山本は全く触れようとしなかった。
次第に、英子は痺れを切らせて
「あの画像はいつ撮ったものか」答えてくれないのなら付き合うこともできない。
そのようなメールを送った。


山本はかなり返答に困ったのか、そのメールを送ってからは返信がこなくなった。

英子は10分、20分と待つうちにだんだんと腹がたっていった。
山本は肝心なところで逃げにはいる奴だったのか・・・
山本のことを考えてみると、秀樹といる時以外は会ったことはなかったが、
彼は2浪していたので秀樹よりも2歳年上だったが、いつも秀樹の指示に
従って行動をしていた。


そんな秀樹の事を見て頼もしい人だと優越感に浸ったこともあった。
山本は自分の意志で行動をしない男なのかもしれない。
もしかすると、秀樹と山本がぐるになって英子の事をはめたのではないか・・・
ふと、英子の脳裏に浮かんだ。
いや、ありえないことではない。


山本にレイプされた時は写真を撮られた覚えはない。
しかし、その前日と前々日は酔って意識がなかった。
その間に山本と秀樹が交互に私の事をレイプして写真撮影もしたのかもしれない。
しかし、翌日の秀樹が村上をレイプした事は説明がつかない。
ただ単に仲間割れしたのか、秀樹が眠りこけてしまって説明のつかなくなった
山本がドサクサ紛れに秀樹に殴りかかったのか・・・


しかし、移動中の車中やラブホでの山本は秀樹の事をけなしていた。
秀樹が私の事をデブだとかバカだとか言ったとか・・・
それだけでなく、秀樹は山本の事を召使のように扱ういけ好かない野郎だとか
なんとか言っていた。
彼らの間には友情があったわけでなく、いわゆるいじめ関係があったのだろうか?


いわゆるいじめっ子といじめられっこの関係・・・
秀樹は山本をさんざんに利用して下僕のように扱っていた。
これは事実かもしれない。私といる時でさえ、山本をこき使っていた。
別荘でも、山本は気のきくいい人だと思っていたが、ただ単に秀樹のことが
恐くて下働きをしていただけなのかもしれない。
秀樹に言われて車を出したり、私たちの旅行の送迎やアリバイつくりをして
いたのも秀樹を恐れていたから・・・


確かに、秀樹の事を殴っている時の山本の形相にしろ、その後、秀樹を殴った事を
自慢げに英子に聞かせた時の嬉々とした表情。山本は本当は秀樹のことが嫌いだった
のではないだろうか?
そうなると、私に対して酷い事をしたことも秀樹に対する復讐・・・
もしそうだとすると、説明もつく。


しかし、どう考えても、別荘での出来事が理解できなかった。
一日目、4人でお酒を飲み酔っ払う。酔った勢いで秀樹が寝ている私をレイプした。
二日目、山本のとりなしで仲直りをする秀樹と私。夜は再びお酒を飲む。
    翌朝目覚めると秀樹が酔って意識のない村上をレイプしていた。
三日目、山本にあちこち連れまわされた挙句、帰る事ができなくなりラブホに宿泊。
    そこで山本に一晩中レイプされる。
別荘では酔って意識のない女性が2人もレイプされている。
翌日は抵抗する私を山本が無理やりにレイプした・・・


三件のレイプに共通するものは何か?
別荘でのレイプは共に意識のない相手に対するものだった。
しかし、ラブホでは意識のある時にレイプされた。
別荘でのレイプは両方とも秀樹によるものだったが、ラブホでは山本だった。
三件中二件は英子が被害者で一件は村上が被害者である。
三件共に共通するような事はなかった。


ふと時計を見るともう就寝の時間だった。
医師の指示どおり、最近は規則ただしい生活を送っている。
薬の用法もきちんと守っている。
その成果もあり、ここのところはよく眠れるようになっていた。
今日は、山本からの返信もなさそうだし、薬を飲んで就寝しよう。

英子は、いつものように睡眠薬を飲み、床についた。

その時、英子の頭にあることが浮かんだ。しかし、静かに眠りに落ちていった。

翌日、英子は山本にメールを入れた。

山本のことをよくは知らないし、山本君のご両親の事も何も知らない。
この間も、自宅に連れて行くことはできないと断られたが、それでは、
秀樹の時と全く同じだと。もし、付き合うのなら相手のご両親に隠れて
付き合うのはもうイヤだと。秀樹の時は自宅に招待すらしてもらえなか
ったどころか両親に隠れて付き合っていた。あのような付き合いはもう
したくない。

このような内容だった。

山本は自分に都合のいい内容のメールには直ぐに返信をしてきた。

はじめのメールでは自分の両親の事を説明していた。
ここでは細かい内容は省くが、父は医者だと言っていた。
自分は父が年をとってから生まれた子供であるので、
サラリーマンならもう定年退職している年齢だと。
母の事にはあまり触れていなかった。
ただ、地元の文化サークルに入っているため日中は留守が多いとだけ書いてあった。


そのメールの直後に入った内容は、
自分は秀樹とは違い、時がたてば両親にも紹介するし、自宅にも来てもらいたいと。
ただ、田舎に住んでいるため、英子が来るのは大変ではないかとも書いてあった。
最寄の駅からはバスも出ているが駅近くに月極め駐車場を借りて車で駅まで通って
いるので、英子が来るなら車で送迎するが部屋まで送り迎えしてもいいと。


その後、山本のすんでいる街の話や、就職の話、大学入学前の話などを何度かやり取りした。
話がひととおりすんだところで、今度、山本の家に遊びに行きたいとメールをした。

メールだけではなく電話でも話をしたいとも付け加えておいた。


それから、山本から英子に電話がかかってくるようになった。
この時には既に山本は英子と付き合っているつもりになっていたのだろう。
まるでストーカーのように一日に何度か電話をかけるようになっていた。
英子の方から山本に電話をかけることはなかった。
山本がストーカー気質で事あるごとに電話をかけてくるのでその必要がなかった
ことと、山本が言うには、英子は一人暮らしをしているから電話代の負担だけでも
大変だろうと気遣っていることも主張した。


携帯の呼び出し音が英子の部屋に鳴り響いた。
「まただ・・・」
山本からの電話だった。ここのところ朝昼晩だけではなくまるで分刻みのように
電話をかけてきていた。このままだと再び英子の気が変になりそうだった。
そろそろ、目的を遂げる時かもしれない。そう思いながら電話をとった。
「もしもし、英子ちゃん?山本だけれども」
「うん」
「今何していたの?」
「何って、卒業試験の勉強していたよ」
英子はうんざりしながら答えた。


「そうなんだ、僕も勉強していたよ」
だったら電話なんかしてくるなよ・・・英子はそう思った。
ひととおり何気ない会話を交わした後、英子は山本に聞いた。
「ねぇ、そろそろ、山本君の家に遊びに行きたい」
「えっ!ホントに!ぼ、僕の方はいつでもいいよ」
「付き合いだしてから直ぐにでも家に来てもらいたかったけどなかなかきりだせなくて」
「いつでも、大歓迎だよ!今すぐでもいいよ」
「で、でも、両親は仕事があったり地元のなんか集まりがあったりして直ぐにはあえないけど」
山本は嬉々としていろいろな言葉をまくし立てた。


「じゃ、今週末はどう?」
「えっ・・・しゅ、週末・・・週末はちょっと忙しいから・・・」
「そ、そうだ、あ、明日でもいいよ」
「えー明日だなんて急すぎるよ」
「じゃ、来週の月曜日はどう?」
「・・・」英子は少し考え込んだ。
「月曜日はご両親いらっしゃるの?」
「えっ?あっ、あぁ、あーちょっと父は仕事だし、母も出かけていていないけど」


英子はしばらく考えてみた。
山本の両親が留守の方が英子にとっても都合がいいかも・・・
「ふーん、そうなんだ、でも、いいよ」
「えっ、月曜日でいいの?」
「うん、いいよ」
「た、楽しみにしているよ」山本は興奮しながら話していた。
「でも、ちょっと教えて欲しい事があるの」


「うん?なになに?」
「あのさ、山本君さ」
「うんうん」
「前に、画像送ってきたよね」
「・・・」
「ねぇ、聞いてる?」
「あっ、え、うん、き、聞いてるよ」山本はしどろもどろに答えた。


「あれ、私の写真だよね・・・」
「・・・」
「あれ、どうしたの・・・」
「・・・」
山本は電話口の向こうで黙りこんでしまった。
「ねぇ、聞いてるの?」
「・・・」電話からは山本の息遣いのみが聞こえてくる。
かなり呼吸が荒れているようだった。


「なんで、山本君があんな写真持ってるの?」
「・・・」
「ねぇ、聞いてる?」
「えっ・・・あぁ、うん」
「誰が撮った写真なの・・・」
「山本君?山本君が撮ったの?」
「・・・あっ、うん」


「どうして、あんな写真撮ったの?いつ撮ったの?」
「・・・」
「ねぇ、黙ってないで答えてよ!」
英子の口調はだんだんと激しくなっていった。


「他にも写真あるんでしょう?」
「・・・」
「デジカメで撮ったの?」
「・・・」
「聞いてるの?」
「う、うん・・・」
英子が何を聞いても山本はあいまいな返事をするだけで明確な答えを出さなかった。


「・・・」
「私の気持ち分からないの?」
「・・・」
「ねぇ、山本君ってそんな人だったの?」
「ち、違うよ・・・」
「じゃぁ、お願い、処分して」
「わっ、分かったよ」

「デジカメで撮ったの?」
「あぁ、うん、そ、そうだよ・・・」
「お願い、処分して」
「・・・うん・・・」
「私の見てる前で、消去して」
「うん」
「だいたい、いつあんな写真撮ったの?」
「・・・」

「どうして、あんな写真送ったりしたの?」
「・・・」
「なんで、あんな写真撮ったのよ」英子もだんだんとヒステリックになっていた。
「だって、英子ちゃんが綺麗だったから、かわいかったから、どうしても
写真に残しておきたかったんだ」
ようやく山本が口を開いた。
「だからって、あんな写真じゃなくてもいいでしょう」
「ち、ちがうよ、顔写真も撮ってあるよ」
「なおさらイヤよ、全部消去してよ」


「あんな写真撮るような人と普通に付き合えると思うの?」
「・・・」
「ねぇ、答えてよ」
「うん、分かったよ。全部消去するからお願い、別れないで」
「・・・」
困った奴だ、ただメールをやり取りして一方的に電話をかけてくるだけの
間柄なのに既に付き合っていると思い込んでいる。
しかし、そのほうが英子にとって都合はよかった。
このままだと、うまく、全て解決できる。英子は心の中でそう思った。


「じゃ、月曜日に、あたしの目の前で全部消去してよね」
「分かった、うん、約束するよ。だから別れるだなんて絶対に言わないで」
「うん、でも、あの写真、いつ撮ったの?」
「・・・」
「教えてくれないなら、もう、これきりにしてもいいんだよ」
「えっ、そ、それは・・・げ、月曜日に全て、すべて話すよ」
「なんで、なんで月曜日なの?今、聞かせてよ」


「え、英子ちゃんと、はじめて関係した時だよ」
「うそ、あの時、写真撮られなかったよ、それに、山本君カメラもっていなかった」
「か、かばんの中にしまってあったんだよ」
「うそでしょ、だって、海で遊んでいる時も夜みんなで飲んでいる時も写真一枚も
撮らなかったでしょ。カメラ持っていたならなんで、一度もつかわなかったの?」
「あ、ああ、えーうん、あ、あれ、かばんの奥にあって気がつかなかった」
「そ、それが、あの時、着替えを探していて気がついたんだ・・・」
「うそでしょ、だって、あの時、写真なんか撮らなかったでしょ」
「英子ちゃんが気がつかなかっただけだよ、ね、寝ていたでしょ」


あの時、英子は一睡もしなかった。
山本に陵辱されている時に気が遠くなりかけたが、そのたびに山本は
乳首をかんだり、耳たぶをかんだりして英子を覚醒させていた。
まるで、いたぶるかのように。その時の山本は完全に変質者となっていた。
あの時のことは克明に今でも思い出す事ができるくらいだ。
その時のことを思い出すだけで、今でも吐き気がする。鳥肌が立つ。
やはり、山本を許す事はできない。写真さえ、破棄してしまえば・・・


あの時寝ていたのは山本だけだった。しかし、ここで山本を追及しても本当の事
など言う事はない事は分かっていた。とにかく、今は山本の写真を処分する事が
最優先事項だった。
「そうなの・・・」
「う、うん、英子ちゃん、寝ていたから。悪いとは思ったのだけども・・・」
「でも、英子ちゃんかわいいから、魅力的だったから」
山本は必死に言いつくろっていた。いかにも嘘をつきとおそうとしているようだった。
真実はわからない、でも、この男が私の写真を持っているかぎりは・・・


「約束は、絶対に守ってね」
「う、うん。分かったよ、心配しないで」
英子は山本の家にいく打合せをして電話を切った。
当日、お昼に英子は山本の家の最寄の駅に行き、そこまで山本に迎いにきてもらう
ことにした。当日、英子は山本のために弁当を用意するのでそれを山本の部屋で
食べる事にした。
英子が弁当を作るといったら山本は子供のようにはしゃいで喜んでいた・・・

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