スポンサーサイト
- --/--/--
- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
続・さよなら明日香 その2
- 2007/05/30
- 07:48
裕樹はあゆみの言葉に動揺していた。
いつも明るいあゆみの笑顔、悩みを相談しても強く優しい言葉で励ましてくれるあゆみ。
いつも明るいあゆみの笑顔、悩みを相談しても強く優しい言葉で励ましてくれるあゆみ。
あゆみのことは大好きだ、でも、それは明日香に対する好きとは違う。
「・・・あゆみ」
「もう、何困った顔してんのよ。すぐに顔に出るんだから」
あゆみは泣きながら笑う、化粧が崩れて目もとは黒ずんでいる。
「ふぅー、なんかあたしのほうが飲んで泣いてスッキリしたみたいね」
「そうみたいだね」
裕樹はあゆみの精一杯の優しさに包まれて自然と笑顔になる。
「あーあ、化粧落ちちゃった」
「うん。すごいことになってるよ」
「バカ!」
あゆみの瞳から涙が零れ落ち、笑って言った。
裕樹はその後、ほろ酔い加減のあゆみと駅で別れた。
家まで送ろうとしたけど、あゆみはそれを固持した。
「失恋したのに、送られちゃ困る」
裕樹はあゆみの言葉に吹き出し、あゆみも笑う。
胸がどうしてか暖かい。
あゆみの優しさが裕樹の苦しみを和らげてくれていた。
空を見上げると見える星。
明日香を待っていた昨日、見ていた星は裕樹の心を詰まらせた。
でも、今は違う。星は確かに輝いている。
裕樹はあゆみと別れ、軽くなった足取りで家路についた。
しかし、アパートの路地に入り足が止まる。
入り口には明日香が立っていた。
「・・・明日香」
「・・・裕樹・・・」
裕樹にはそこに立っている明日香が、自分の知っている明日香じゃないように感じる。
たった一度のすれ違いなのに。まるで自分の知らない人のように遠くに感じる。
「・・・どうしたの?」
「・・・裕樹、昨日私のこと探してくれたんだね」
「・・・うん」
「ごめんね」
明日香の身体が震えだし、堪えていた涙が溢れ出す。
裕樹は明日香の涙に切なくて堪らなくなる。
「大丈夫だから」
裕樹は気丈に笑顔で答える。
「裕樹・・・私がキスしたの・・・見てたんだよね」
「・・・うん」
「・・・ほんとにごめんね・・・裏切っちゃったよね・・・」
明日香はその場で蹲り咽び泣く。
裕樹は明日香の小さな身体が震える姿に胸が詰まる。
その場に裕樹もしゃがみ、顔を覆った明日香の手に触れる。
明日香の手は驚くほど冷たくなっている。
「・・・ずっと待ってたの」
明日香は咽び泣きながら頷いた。
「とにかく、中に入ろう」
裕樹は明日香の手を引き部屋に入る。
「ごめんね、ごめんね」
部屋に入ると謝り続ける明日香を目の前にして、裕樹はどうしていいのか分からない。
「もう、いいから。あの日は俺も悪かったから」
「ううん、そんなことない。わたし・・・」
「とにかく落ち着こうよ」
裕樹は明日香に近付きそっと抱き締め背中を摩る。
明日香は裕樹に触れられたとき一瞬びくっと震える。
裕樹は明日香の身体の震えを敏感に感じ、慌てて身体を離す。
二人の間に苦しい沈黙が生まれる。
裕樹は恐かった。聞かなければならない事があるのに恐くて聞けない。
それは、僅かな淡い希望かも知れない。
明日香を忘れようと思ったけど、やっぱり明日香の事が好きで、
だから、恐くて聞けない。
でも、胸が息苦しいほど苦しくて、もう全てを知ってしまいたい。だから、
「・・・明日香、あの男と・・・寝たの・・・」
「・・・ごめんね」
裕樹の抱えていた胸の息苦しさが、刺すような鈍痛に変わる。
明日香の顔を正視する事が出来ない。
明日香が他の男と寝た。
ずっと自分だけの存在だって思っていた。
その明日香が・・・
「・・・わかった。もう、遅いから送っていくよ」
裕樹は平静を装い、搾り出すようにそう言った。
明日香は何も言わず裕樹の言葉に従う。
明日香のアパートまでの道を二人は一言も発さずに歩く。
お互いに何を言っていいのか分からない。
頭に浮かぶ言葉は空虚なものばかり。
アパートの前に着き、明日香は裕樹のほうを見たが、裕樹は俯いたまま黙っている。
明日香はゆっくりとアパートに入っていく。
「・・・明日香」
裕樹の呼び掛けに明日香は振り返る。
裕樹は瞳に涙を溜め、顔は情けなく歪んでいる。
「・・・俺、明日香のこと・・・好きだよ。
でも、今は動揺していて・・・どうしていいかわからない。
だから、気持ちの整理つくまで、待って欲しい」
明日香の瞳に溜まった涙が零れ落ちる。
顔が途端に崩れ、笑顔とも悲哀ともとれぬ顔になる。
「・・・ゆうき」
「じゃあ、また電話する」
そう言うと、裕樹は走り出した。
裕樹はアパートに転がり込むように入ると、ベッドに寝転がり蒲団を頭まで被る。
明日香の事を考えるだけで、苦しくて苦しくてどうしようもない。
明日香が抱かれている姿を想像したくなくても考えてしまう。
他の男の前で裸になり、身体を弄ばれたんだ。そう考えるだけで、気が狂いそうになる。
明日香のことは今でも確かに好きだと思う。
でも、この先明日香を愛する事ができるのだろうか。
明日香をこの手で抱く度にこの悪夢に苛まれるんじゃないか。
裕樹は一晩中、自分がこれまでのように明日香を愛す事が出来るのか自問し続けた。
明日香は鏡の前で腫れぼったい目蓋に冷たいタオルを充てる。
タオルを外し化粧をするが明日香の手はいつものように動かない。
なんとか化粧を済ましリクルートスーツを着てもよしやるぞと気合いが入らない。
昨日裕樹が言ってくれた言葉が唯一明日香を支えてくれていた。
大学の構内を明日香は無意識に歩いていた。
周りの学生達の喧噪も耳に入らない。
彼等の明るい笑顔が今の明日香には違う世界の人間に感じる。
「あ・す・か」
明日香はその聞いた声に怯え振り向く。
辻内がにやけた笑顔で明日香の身体を嘗めまわすように見ている。
「今日も飲みに行かない?」
「・・・ごめん」
「えー。なんでだよ」
「もう、辻内君とは行かないから、辻内君も一回だけって言ってたでしょ」
「ふっ、あんなに気持ち良さそうによがってたのに」
明日香は途端に頬を染め俯く。
「・・・それに彼氏に悪いから」
「何?仲直りしたの」
「そう。だから、もう行けないから」
明日香はその場を足早に立ち去る。
辻内はその後ろ姿を見つめていた。
明日香は辻内に会った事で動揺していた。
もう、裕樹を裏切らない、そう決めたから、辻内には会いたくなかった。
その矢先に辻内にあったことが明日香にあの夜の事を思い出させた。
裕樹以外の人の前で肌を見せ、我を忘れて乱れ感じてしまった自分に後悔する。
その時メガネを掛けた男が俯き歩く明日香をニヤニヤ見つめていた。
明日香は自分を見つめる男に気付き、男の気持ち悪い不快な目付きとにやつきにゾッとする。
明日香は慌てて離れようとすると、男が道を塞ぐように近付いてきた。
「村上さんだよね」
「・・・ええ」
「へぇー、やっぱり君か」
男は明日香の身体を再度確かめるように見る。
「なんなんですか」
「清純そうに見えて、辻内とやるなんてねぇ」
明日香の顔から一気に血の気が引く。
「・・・どうして」
「ビデオで君のエッチな姿すべて見せてもらったよ」
「・・・なんのこと」
「辻内とやってるビデオだよ」
「・・・嘘よ!」
「嘘だと思うなら辻内に聞けば」
男がへらへら笑う。
明日香は愕然とする。まさか。
明日香は無我夢中で構内に戻り、辻内を見つけると駆け寄った。
「おう、戻ってきたんだ」
「どういうこと!」
「どう言う事って何?」
「・・・私とあなたのビデオを見たって・・・」
「あぁ、その事。村上の事一生忘れたくなくて隠しカメラで撮っといたんだよ」
「ひどい・・・私を騙したの。そんなの酷いよ!」
明日香は信じられない事実の突きつけに取り乱し、瞳には涙が溜まる。
「なんだよ、村上も俺とのセックス楽しんでたじゃん」
「ビデオ撮るなんて聞いてない!」
「いいじゃん、減るもんじゃあるまいし、それ見てオナニーするだけだよ」
「じゃあ、どうして、他の人がそのビデオ見てるの!」
「あいつが盗撮に協力してくれたからな。いいじゃん、あいつ童貞だし、
ささやかな幸せに、童貞君のおかずになってあげれば。あいつ喜んでたぜ」
明日香は他人に自分の醜態を見られたことの恥ずかしさが襲う。
「なあ、それより、今日飲みに行こうよ。俺ほんとに村上が好きになったよ」
「いやよ!」
明日香は辻内という男に心底怒りに震える。
「あっそ。じゃあ明日には村上、同じ科の男どものオナニーのおかずになっちゃうよ」
辻内の残酷な言葉が明日香の脆い心を叩き壊す。
「村上も気持ちよかったんだろ、だったらそれでいいだろ、
何も彼氏と別れろなんて言ってないよ。彼氏には黙ってればいいんだから。
それで、おれたちは身体の仲だけってことだ」
「・・・そんなことできない」
明日香はいやいやと首を横に振る。
「まっ、それは村上の勝手だけど。
折角彼氏と仲直りできたのに、また喧嘩する事になってもいいの」
もう裕樹を裏切りたくない、でも、それ以上に裕樹と別れたくない。
「・・・わかったわ。だから、テープは返して」
辻内はにやりと笑う。
「じゃあ、今日またあの店で、そのとき持ってくよ」
手を振ると、辻内は去っていった。
明日香はひとりその場に立ちすくんでいた。
「・・・あゆみ」
「もう、何困った顔してんのよ。すぐに顔に出るんだから」
あゆみは泣きながら笑う、化粧が崩れて目もとは黒ずんでいる。
「ふぅー、なんかあたしのほうが飲んで泣いてスッキリしたみたいね」
「そうみたいだね」
裕樹はあゆみの精一杯の優しさに包まれて自然と笑顔になる。
「あーあ、化粧落ちちゃった」
「うん。すごいことになってるよ」
「バカ!」
あゆみの瞳から涙が零れ落ち、笑って言った。
裕樹はその後、ほろ酔い加減のあゆみと駅で別れた。
家まで送ろうとしたけど、あゆみはそれを固持した。
「失恋したのに、送られちゃ困る」
裕樹はあゆみの言葉に吹き出し、あゆみも笑う。
胸がどうしてか暖かい。
あゆみの優しさが裕樹の苦しみを和らげてくれていた。
空を見上げると見える星。
明日香を待っていた昨日、見ていた星は裕樹の心を詰まらせた。
でも、今は違う。星は確かに輝いている。
裕樹はあゆみと別れ、軽くなった足取りで家路についた。
しかし、アパートの路地に入り足が止まる。
入り口には明日香が立っていた。
「・・・明日香」
「・・・裕樹・・・」
裕樹にはそこに立っている明日香が、自分の知っている明日香じゃないように感じる。
たった一度のすれ違いなのに。まるで自分の知らない人のように遠くに感じる。
「・・・どうしたの?」
「・・・裕樹、昨日私のこと探してくれたんだね」
「・・・うん」
「ごめんね」
明日香の身体が震えだし、堪えていた涙が溢れ出す。
裕樹は明日香の涙に切なくて堪らなくなる。
「大丈夫だから」
裕樹は気丈に笑顔で答える。
「裕樹・・・私がキスしたの・・・見てたんだよね」
「・・・うん」
「・・・ほんとにごめんね・・・裏切っちゃったよね・・・」
明日香はその場で蹲り咽び泣く。
裕樹は明日香の小さな身体が震える姿に胸が詰まる。
その場に裕樹もしゃがみ、顔を覆った明日香の手に触れる。
明日香の手は驚くほど冷たくなっている。
「・・・ずっと待ってたの」
明日香は咽び泣きながら頷いた。
「とにかく、中に入ろう」
裕樹は明日香の手を引き部屋に入る。
「ごめんね、ごめんね」
部屋に入ると謝り続ける明日香を目の前にして、裕樹はどうしていいのか分からない。
「もう、いいから。あの日は俺も悪かったから」
「ううん、そんなことない。わたし・・・」
「とにかく落ち着こうよ」
裕樹は明日香に近付きそっと抱き締め背中を摩る。
明日香は裕樹に触れられたとき一瞬びくっと震える。
裕樹は明日香の身体の震えを敏感に感じ、慌てて身体を離す。
二人の間に苦しい沈黙が生まれる。
裕樹は恐かった。聞かなければならない事があるのに恐くて聞けない。
それは、僅かな淡い希望かも知れない。
明日香を忘れようと思ったけど、やっぱり明日香の事が好きで、
だから、恐くて聞けない。
でも、胸が息苦しいほど苦しくて、もう全てを知ってしまいたい。だから、
「・・・明日香、あの男と・・・寝たの・・・」
「・・・ごめんね」
裕樹の抱えていた胸の息苦しさが、刺すような鈍痛に変わる。
明日香の顔を正視する事が出来ない。
明日香が他の男と寝た。
ずっと自分だけの存在だって思っていた。
その明日香が・・・
「・・・わかった。もう、遅いから送っていくよ」
裕樹は平静を装い、搾り出すようにそう言った。
明日香は何も言わず裕樹の言葉に従う。
明日香のアパートまでの道を二人は一言も発さずに歩く。
お互いに何を言っていいのか分からない。
頭に浮かぶ言葉は空虚なものばかり。
アパートの前に着き、明日香は裕樹のほうを見たが、裕樹は俯いたまま黙っている。
明日香はゆっくりとアパートに入っていく。
「・・・明日香」
裕樹の呼び掛けに明日香は振り返る。
裕樹は瞳に涙を溜め、顔は情けなく歪んでいる。
「・・・俺、明日香のこと・・・好きだよ。
でも、今は動揺していて・・・どうしていいかわからない。
だから、気持ちの整理つくまで、待って欲しい」
明日香の瞳に溜まった涙が零れ落ちる。
顔が途端に崩れ、笑顔とも悲哀ともとれぬ顔になる。
「・・・ゆうき」
「じゃあ、また電話する」
そう言うと、裕樹は走り出した。
裕樹はアパートに転がり込むように入ると、ベッドに寝転がり蒲団を頭まで被る。
明日香の事を考えるだけで、苦しくて苦しくてどうしようもない。
明日香が抱かれている姿を想像したくなくても考えてしまう。
他の男の前で裸になり、身体を弄ばれたんだ。そう考えるだけで、気が狂いそうになる。
明日香のことは今でも確かに好きだと思う。
でも、この先明日香を愛する事ができるのだろうか。
明日香をこの手で抱く度にこの悪夢に苛まれるんじゃないか。
裕樹は一晩中、自分がこれまでのように明日香を愛す事が出来るのか自問し続けた。
明日香は鏡の前で腫れぼったい目蓋に冷たいタオルを充てる。
タオルを外し化粧をするが明日香の手はいつものように動かない。
なんとか化粧を済ましリクルートスーツを着てもよしやるぞと気合いが入らない。
昨日裕樹が言ってくれた言葉が唯一明日香を支えてくれていた。
大学の構内を明日香は無意識に歩いていた。
周りの学生達の喧噪も耳に入らない。
彼等の明るい笑顔が今の明日香には違う世界の人間に感じる。
「あ・す・か」
明日香はその聞いた声に怯え振り向く。
辻内がにやけた笑顔で明日香の身体を嘗めまわすように見ている。
「今日も飲みに行かない?」
「・・・ごめん」
「えー。なんでだよ」
「もう、辻内君とは行かないから、辻内君も一回だけって言ってたでしょ」
「ふっ、あんなに気持ち良さそうによがってたのに」
明日香は途端に頬を染め俯く。
「・・・それに彼氏に悪いから」
「何?仲直りしたの」
「そう。だから、もう行けないから」
明日香はその場を足早に立ち去る。
辻内はその後ろ姿を見つめていた。
明日香は辻内に会った事で動揺していた。
もう、裕樹を裏切らない、そう決めたから、辻内には会いたくなかった。
その矢先に辻内にあったことが明日香にあの夜の事を思い出させた。
裕樹以外の人の前で肌を見せ、我を忘れて乱れ感じてしまった自分に後悔する。
その時メガネを掛けた男が俯き歩く明日香をニヤニヤ見つめていた。
明日香は自分を見つめる男に気付き、男の気持ち悪い不快な目付きとにやつきにゾッとする。
明日香は慌てて離れようとすると、男が道を塞ぐように近付いてきた。
「村上さんだよね」
「・・・ええ」
「へぇー、やっぱり君か」
男は明日香の身体を再度確かめるように見る。
「なんなんですか」
「清純そうに見えて、辻内とやるなんてねぇ」
明日香の顔から一気に血の気が引く。
「・・・どうして」
「ビデオで君のエッチな姿すべて見せてもらったよ」
「・・・なんのこと」
「辻内とやってるビデオだよ」
「・・・嘘よ!」
「嘘だと思うなら辻内に聞けば」
男がへらへら笑う。
明日香は愕然とする。まさか。
明日香は無我夢中で構内に戻り、辻内を見つけると駆け寄った。
「おう、戻ってきたんだ」
「どういうこと!」
「どう言う事って何?」
「・・・私とあなたのビデオを見たって・・・」
「あぁ、その事。村上の事一生忘れたくなくて隠しカメラで撮っといたんだよ」
「ひどい・・・私を騙したの。そんなの酷いよ!」
明日香は信じられない事実の突きつけに取り乱し、瞳には涙が溜まる。
「なんだよ、村上も俺とのセックス楽しんでたじゃん」
「ビデオ撮るなんて聞いてない!」
「いいじゃん、減るもんじゃあるまいし、それ見てオナニーするだけだよ」
「じゃあ、どうして、他の人がそのビデオ見てるの!」
「あいつが盗撮に協力してくれたからな。いいじゃん、あいつ童貞だし、
ささやかな幸せに、童貞君のおかずになってあげれば。あいつ喜んでたぜ」
明日香は他人に自分の醜態を見られたことの恥ずかしさが襲う。
「なあ、それより、今日飲みに行こうよ。俺ほんとに村上が好きになったよ」
「いやよ!」
明日香は辻内という男に心底怒りに震える。
「あっそ。じゃあ明日には村上、同じ科の男どものオナニーのおかずになっちゃうよ」
辻内の残酷な言葉が明日香の脆い心を叩き壊す。
「村上も気持ちよかったんだろ、だったらそれでいいだろ、
何も彼氏と別れろなんて言ってないよ。彼氏には黙ってればいいんだから。
それで、おれたちは身体の仲だけってことだ」
「・・・そんなことできない」
明日香はいやいやと首を横に振る。
「まっ、それは村上の勝手だけど。
折角彼氏と仲直りできたのに、また喧嘩する事になってもいいの」
もう裕樹を裏切りたくない、でも、それ以上に裕樹と別れたくない。
「・・・わかったわ。だから、テープは返して」
辻内はにやりと笑う。
「じゃあ、今日またあの店で、そのとき持ってくよ」
手を振ると、辻内は去っていった。
明日香はひとりその場に立ちすくんでいた。