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悪魔の尻尾10

正直、100万と言われても信二は金を惜しまなかっただろう。仕事だけが取り柄の信二が見つけた初めてのやり甲斐だった。
「相手の例の美人の奥さんには予め連絡して後をつけるんだな」
店主が最後のアドバイスをする。
「初めっから浮気だとは言わない方が良いよ。相談したい事があるって言ってホテルの最寄で待ち合わせるんだ。衝撃が大きければ大きいほど崩れ落ちる相手の奥さんが、あんたに堕ちる可能性も高くなる」

「え?」
店主の意図を理解できず聞き返す信二。
「ばっか!仕返しするんだろ?こっちも寝取るってやんなきゃ何の為の仕返しだよ」
「寝取るって・・・」
あのモデル顔負けの杉野の妻が自分に抱かれるなんて事は思いもよらない事だった。
(俺が・・・あの杉野の奥さんを・・・)
信二は心の中で何度も復唱した。
「グッドラック!」
店主が信二の肩を叩き親指を立てて見せた。呆けた表情で弱々しく信二も親指を立てた。

夕方、とりあえず仕事を早く引けた信二は約束のホテルへと急ぐ。何やかやで仕事が長引き時間がぎりぎりになってしまった。港近くの某ホテルへ着いたがどうやら間に合ったようだ。佐和子はまだ来ていないようだ。時計を確認し辺りを見回す信二。外人や格好よく着飾った男女が行き交っている。
(どうも居心地悪いな・・・)
信二は場違いな疎外感を感じていた。ふと見ると右前方に、ひと際目立つ美女が立っている。黒いフォーマルなドレスを着ている彼女は、人を待っているのか退屈そうに灯が入り出した港の向こうの高層ビルを眺めている。ぼーっと見つめる信二。肩まで伸びた黒髪が海風になびきかき上げる彼女。

(すげぇな。やっぱこういう所は女の質も違うわ)
信二はすっかり彼女のとりこになり腕組みをしながら関心している。往来する男達の何人かが、やはり彼女が気になるらしくわざとらしく近回りして彼女の顔を確認している。
(あぁいう女を横にはべらしたら、鼻が高いだろうなぁ畜生~)
そう思いながら信二はふと杉野の妻を思い出していた。
(彼女なら、あの女にも引けをとらないだろう)
変に対抗意識を燃やし、もう一度たたずむ女の方を見る信二。あまり凝視する信二に気付いたのか、彼女がこっちに振り向いた。

(やばい!)
即、目を逸らす信二。だが彼女はまだこっちを見ているようだ。
(おいおい、見てただけで因縁つけられるんじゃないだろうな?)
信二は目を合わさず体をこわばらせて相手の視線が反れるのを待った。が、一向に反れる気配がない。それどころか腰に手を当てまだこっちを見ているようだ。それどころかツカツカとこっちに歩み寄って来る。
(何だよぉ見てただけだろぉ?不細工な俺じゃ見られただけでも汚れるってか?)
必死で気付かない振りをし、そっぽを向く信二。が、もう1メートル圏内に彼女は近付いている。
(絶体絶命だ)
信二はかんねんして彼女の方に振り向く。

(ごめんなさい)
そう言おうとして信二が彼女を見ると、
「あなた!来てるなら言ってよ!もぉ~」
聞き覚えの有る声がする。
「へ?」
素っ頓狂な声をあげて彼女を凝視しる信二。・・・・・・・佐和子だった。
「あれっ!あれぇ?佐和子だったのか!全っ然分からなかった!」
驚きの声をあげる信二。元々素材が良いのは知っていたが、我が妻の事ながら、まともに着飾ればこれ程の美貌の持ち主だったとは思わなかった。
(女はこれが有るから恐いよなぁ・・・)
繁々と妻を見つめる信二。
「なによぉ」
あまりに見つめられて恥ずかしそうにモジモジする佐和子。夜の街の明かりに反射しピアスが光る。信二は思わず見とれてしまった。
「いや、馬子にも衣装だと思ってさ」
照れ隠しに思わず失言する信二。
「いててて!」
怒った佐和子が夫の足を踏みつけた。

「さ、行きましょ」
佐和子はそう言うと夫の手を取りホテルへ入った。
「あっいて!」
ギクシャクと途中の階段でコケそうになる信二。
(これじゃまるで囚われの宇宙人だな)
あまりのアンバランスさに信二は少し悲しくなった。

港の夜景が見えるホテルのスカイラウンジで食事をとる二人。佐和子はワイングラスを片手に外を見ている。信二は果たして目の前の女が自分の妻なのかと思うほど映えていた。家事や育児に付きっ切りにさせていた自分に若干の自責の念を感じる信二。
「そう言えば全然子供が生まれてからどっか連れてった事なかったな」
信二がつい本音を洩らす。が、信二は妻の誘いが杉野との残酷な策略だという事にまだ気付いていない。佐和子にとっては夫の偽りの子種を受ける為の一世一代の賭けなのだ。
「そうよぉ、初めてよぉ。もっと奥さんを大事にしてねっ」
上目遣いで信二を見る佐和子。口元がワインでしっとり濡れている。
「ごくっ」
その唇の動きに思わず唾を飲み込む信二。

ふと信二の脳裏にテニスコート裏で杉野に抱かれていた佐和子がよぎる。
(しかし、前は俺の同僚に抱かれた。それは許せない)
幾分冷静になる信二。佐和子はそんな夫の心を見透かしたのか否か、口元についたワインをぺろりと舐める。その舌先の動きが妙に艶めかしい。信二は再びいつになく妖しい魅力を放つ妻に溺れそうになる。
「ねぇ、今日はこれからどうするの?」
濡れた瞳で夫を見つめる佐和子。
「ど、どうって?」
吸い寄せられそうになりながら、どぎまぎと問い返す信二。
「このホテル部屋空いてるって」
佐和子は、ちょっと悪戯そうに言った。

「あ、空いてるってお前。陽一はどうするんだよ?」
思わぬ妻の誘惑に動揺を隠せない信二。
(待て待て!これは何かおかしい!何かある!)
理性の信二が自制を促す。
「大丈夫よ陽ちゃんは母さんが見てくれてるんだからぁ」
ちょっと悲しそうな顔で信二を見つめる佐和子。こういう顔に男は弱い。
「だ、だけど・・・高いんだろぉ?こういうとこって」
思わず無粋なことを言う信二。ハッと気付くと佐和子が泣きべそをかいている。
「いいわよもう!帰るわよぉ私は家事をやってれば良いんでしょ?どうせ」
そう言うと席を立ってしまった。
「あ、ちょちょっと待って」
慌てて後を追う信二。
(どうする?この場を諌めるには要求を呑むしかない)
信二は葛藤する。

支払いを済ませ信二はエレベーターに乗ろうとしている妻を追いかけた。どうにか閉まるまでには間に合った。荒い息をしながら信二は妻を見る。
少し間を置き
「ごめんね無理言っちゃって、何か急に我がまま言いたくなっちゃったの」
ちょっと後悔したのかすまなそうに謝る佐和子に信二はホッとした。
「いや、良いんだ。確かに俺も今までお前に構わなすぎたよな」
とりあえず場が治まったことを良しとする信二。
「ううん。あなた仕事でいつも大変だもん」
妻にかいがいしい事を言われ、つい同僚とのあやまちの事を忘れそうになる信二。
(とりあえず仕切りなおしだ。今後の作戦のこともある。ここはやり過ごそう)
何とか妻の妖しい魅力から逃れる事が先決だと理性が信二に言い聞かせる。

妻の方を見ると胸元から豊かな胸の谷間が見えている。信二は必死に目を逸らそうとする・・が、悲しい男の本能には勝てない。
ついついそっちに目が行ってしまう。気付くと佐和子がそんな信二の表情を見ている。
「ちょっと開きすぎてるかしらこれ?」
少し胸の部分を開いてみせる。
「あ、いや。良いんじゃないかな。うん」
慌てて目を逸らす信二。豊かな胸・・揉み心地の良さそうな胸・・・そもそも佐和子は自分の妻。揉む権利が自分にはある。いや、この魅力的な女を抱く権利が自分にはあるのだ。信二の心の中の悪魔が少しずつ信二の理性を侵食していった。

エレベーターが開き二人はとりあえずホテルの外に出た。街はすっかり暗くなっている。アルコールで上気した体が熱い。信二は海風を深く吸い込んだ。見ると佐和子も海を見ながら大きく伸びをしている。夜風が佐和子の服を吹き抜け彼女の均整のとれた肉体が強調された。ごくっと唾を飲み込む信二。どうにも取り込まれてしまいそうな佐和子の艶っぽさに信二は動揺を禁じえない。今妻を抱いたからと言って、これからの自分の作戦に大きな支障が起きるだろうか?信二は既に自分の欲望を満たすための言い訳を自分でしている事に気付いていない。
「あ~いい気持ち!あなたちょっと歩きましょうよ」
佐和子が一人でテクテクと歩き出した。

信二は灯に集まる虫のように佐和子の後に続いて歩く。ホテルの先の道は華やかなそこまでの街とは違い一変して船の積み下ろし用の運送会社が港に並列して続いている。時折走る大型トラックと遠くで荷を積んでいるらしいフォークリフトの音だけが聞こえるだけだ。街灯もまばらでかなり薄暗くただ大型貨物船とコンテナの影だけが夜の中に不気味にそびえている。
「お、おい!どこまで行くんだよ!」
信二はちょっと心配になって声をかけた。
「ほら!あそこ!あそこ!」
と佐和子が指をさす。信二がつられてそっちを見ると、お台場の観覧車が派手な光を放って輝いている。どうやら佐和子はそれをなるべく近いところで見たいという事らしい。だがしばらくすると道は行き止まりになってしまった。この先は工場の所有地らしい。だが佐和子は諦めない。何と鉄柵の横にある人一人やっと通れるような隙間からスルスルと通り抜けて入っていってしまった。

「お、おい!やばいって!関係者に見つかったら・・・」
信二が慌てて止めるが、佐和子は全く意に介していないようだ。
「だいじょうぶよ。早く早く!」
と手招きしている。信二は深く溜息をつくと
「しょうがねぇなぁ・・・」
と言って佐和子の後に続いた。工場を恐る恐る通り抜ける二人。窓からは夜勤の従業員が何人か残っているらしく明かりが灯っている。
「何だかわくわくしてくるわね」
悪戯そうな顔で佐和子が言った。
「好きだねぇお前も・・・」
だが信二もまんざらでもなかった。工場を過ぎると急に視界が開けた。目の前が小さな湾になっている。そこに何席かの貨物船が停泊しているようだ。貨物船の一つはまだ中に人が残っているのか小さな明かりが一つ灯っている。見つかったら明らかに自分達は不審者だ。二人はじっと船に人影がないか様子を窺った。

どうやら大丈夫らしい。二人は湾のこそこそと歩いた。とりあえず一番観覧車が良く見える位置を探すと、佐和子がズリズリと
運送用の木枠を運んできた。
「何するんだよ?そんなの」
腰に手をあて呆れて言う信二。
「何って座るのよ椅子よい・す」
と言って木枠をハンカチでパンパン叩いている。
「はい、できた。座って」
と言ってかけろと促す佐和子。とりあえず言う通りに座る信二。
「綺麗ね~」
うっとりと遠くを見つめる佐和子。
「あぁ・・・」
生返事をする信二。信二はどうしても佐和子の胸の谷間が気になってしまう。薄暗い街灯でも白く映える佐和子の肌・・・。くびれた腰・・・。思わず肩に手をまわしたくなってしまう。いや、待て!亭主の俺が肩に手をまわして何が悪い?

自問自答する信二。それを見透かしたのか佐和子が信二を見た。
「なに?」
信二を見つめている。
「いや」
とっさに目を逸らす信二。見透かされたようで萎縮してしまう。
「キスしよっか」
いきなり佐和子が信二に言った。
「へぇ?」
いきなりの妻の誘惑に間抜けな返事をする信二。
「キスしましょうよ。ね?」
更に誘惑を繰り返す佐和子。艶めかしい唇が信二の目から離れない。佐和子は信二に寄り掛りながら目を瞑り魅惑的な唇を信二の顔に近付けてきた。


コメント

は、早く次を頼む…

なんか結末に対するやな予感が…
バッドエンドものか?

ハァ~

悪魔の尻尾は未完成だす。

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