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『練習』・・・7

『モモちゃん、何で先輩が好きなの?』
もう何度も言った台詞。
見苦しい僕の見苦しい質問。
その度に返ってくる言葉もまた同じ。
「師走先輩のことね、考えてると、幸せな気分になって、心が暖かくなってドキドキするの」
「先輩と一緒にいるとね、それがもっともっと強くなるの」
「だからね、先輩が大好きなの…」
などと、いった内容だ。
そして、
「シュンちゃんもそんな人が見つかるといいね」
と笑顔で続ける。
優しいモモちゃんの残酷な言葉。
が、最近、新しい内容が入るようになった。
「シュンちゃん、私大丈夫かな?」
「何が?」
「最近はね、先輩のこと考えると不安になるの。私、先輩と幸せになれるよね?」
最近、か。
ホテルに一緒に行くことを拒否し、ケンカをしたモモちゃん。
『練習』のためと、僕に騙され先輩と疎遠になったモモちゃん。
そして、仲直りのしるしである髪留めを失ったモモちゃん。
モモちゃんは不安なのだろう、実際。
僕を信じたばっかりに、先輩との溝を深めるモモちゃん。
それでも、僕は止めない。
「大丈夫、全部うまくいくよ」
モモちゃんを抱きしめて言う僕。
先輩とうまくいく、とは言わない。
死んでも言いたくない。



「シュンちゃん、あのね、練習のことだけど、本当にいいのかな?」
『練習』のためにモモちゃんの家にきた僕にモモちゃんは言う。
僕の下劣な欲望にモモちゃんは気付いてしまったのだろうか。
それとも、宝物の時のこと、気付いたのだろうか?
それが、いいのかもしれない。
モモちゃんは本来、僕が汚してはいけないのだから。
「どうして、『練習』を、しちゃ、だめなのかな?」
未練がましい僕。
たどたどしく言葉を紡ぎ、欲望にすがろうとする惨めで哀れで愚かで、何よりも身勝手な僕。
「あのね、ちょっとだけ、本当に、本当にちょっとだけなんだけど」
モモちゃんが『ちょっとだけ』というと大抵たいしたことは無い。
だけど、『ちょっとだけ』を重ねると、かなり大きな問題になっていることが多い。
モモちゃんの僕に対する信頼が崩れ去ってしまったと感じた僕はそれでも、
「話してごらん。モモちゃんの言うこと、何でも聞いてあげる」
見苦しく言葉を繋ぐ。
「時々、本当に時々だけどね、練習中に師走先輩のこと忘れちゃうの」
「え?」
モモちゃんは僕の嘘を問いただしもせず、僕のことを非難もしない。
ただ、感じるのはモモちゃんの不安。
歪みを直すなら、この時でも良かった。
自分の醜さを全て話し、モモちゃんから裁いてもらえば良かったのだ。
だけど、僕はどこまでも醜かった。
「どういうことかな、モモちゃん?」
「あのね、私、いつもね、練習しながら師走先輩にどうすれば喜んでもらえるか考えてたの」
泣きそうになりながら言うモモちゃん。
そんなモモちゃんに対して自分のことを棚に上げ、身勝手な怒りが沸き起こる。
僕に触られて、僕のオチンチンを口にして、僕に汚されながら、
「いつも先輩のこと考えてたの?モモちゃん?」
絶叫しそうになるのを辛うじて、取り繕う僕。
「うん、もちろんそうだよ。でも…」
彼女の声がさらに沈む。
「本当に、本当に、本当に、ちょっとだけ…ちょっとだけだよ?練習中に先輩のことをね、忘れる…ううん」
モモちゃんが首を振り自分の言葉を否定する。
そして、恐れを込めて言う。
「先輩がいなくなっちゃうの。私の心の中から」
僕は先ほどとは違う意味で、叫ぶの堪えた。
モモちゃんが、先輩のことよりも僕との『練習』に没頭している!
「先輩のためにしてるのに、先輩を心の中から追い出しちゃう、私って悪い子なのかな?」
最後はほとんど泣き出しそうになるモモちゃん。
ごめんね、モモちゃん。僕は君をさらに汚すよ。
こんなクズを信じてしまって、本当に、ごめんね。


「大丈夫、何も問題ないよ。モモちゃん。むしろ喜ぶべきだよ」
「なっ何で?私先輩のことを…先輩のためなのに…それに」
反論しようとするモモちゃん。
モモちゃんは何を言おうとしたのだろう?
僕は言葉を挟むことでその答えを知ることはなかった。
「『練習』を僕らはしているんだよね、モモちゃん?」
「え?うん?」
何を言っているのだろう、といった感じで頷くモモちゃん。
「そうだな…モモちゃん、ケーキ、好きだよね?」
「うん、そうだけど…?」
突然、話が変わり付いて行けないモモちゃん。
「勉強中に、ケーキのこと考えていて集中できるかな?モモちゃんは」
「でき…ない…」
「そうだね、『練習』も同じなんだ。」
「同…じ…?」
飛び飛びの話に彼女は混乱してる。
「だからね、『練習』してる時に他のこと…好きなこと…とかを」
「好きな…こと…とかを?」
「考えながら、集中して、『練習』できるかな?」
「集中…できない…?」
「そうだね」
出来の良い生徒を褒めるようにニッコリ笑う僕。
僕の内心を知らない彼女はただ、無批判に僕の言葉を吸い取っていく。
「だから、『練習』中に好きなこととか考えてるうちは集中していないんだよ」
「集中を、してない」
「そう、だからモモちゃんはだんだんと『雑念』を考えないで『練習』出来るようになってきたんだ」
「雑念を考えない…?」
あえて、先輩とは言わないで『雑念』という僕。
「そう、だからモモちゃん本当には集中して『練習』出来るようになってきてるんだ」
「そうなの…?」
「もちろん、まだその入り口だけどね」
「入り口…」
「とは言え…大進歩だよ!モモちゃん」
僕は褒めるよう言う。
混乱している彼女はやはり、その言葉を受け入れる。
「大進歩…?」
「だって、『雑念』を払って『練習』出来るようになったんだよ!」


嬉しそうに言う僕。
こんなことが本当に進歩なわけはない。
先輩が心からいなくなる、と不安を訴えるモモちゃん。
『雑念』を振り払っているという僕。
僕の意見とも言えない言葉の羅列。
それでも、混乱し、僕を信頼する彼女は、
「そっか…」
ほっとしたように、微笑む。
その微笑みに心が痛む僕。
それでも、続きを止めない最低な僕。
「だからね、これからはむしろ『雑念』を払う時のことを意識しながら『練習』しよう」
「『雑念』を払う時…」
「そう、『練習』がどんどん進むよ」
「うん、そうする!」
モモちゃん、君は先輩のために『練習』しているんだよ?
その君が、先輩を忘れちゃ、ダメじゃないか…
「じゃ、早速始めようか…」
「うん!」
元気良くモモちゃん。
「今日は何からするの、シュンちゃん?」
「そうだね…一人で『練習』できるようにしよう」
僕たちは全裸で浴室にいる。
「一人で?」
不思議そうに聞くモモちゃん。
「そう、土日は小母さん達がいるから『練習』ができないからね」
休日はモモちゃんの家に小母さんと小父さんがいるので『練習』はしない。
『練習』は2人だけの秘密なのでさすがに無理だ。
「そうだね、うん、できないね」
「だから、モモちゃん、足をまず開いて」
「う…うん」
恐る恐る足を開いていくモモちゃん。
未だ恥じらいを捨てられないところも可愛いと思う。
「じゃあ、モモちゃん、ここに手を持っていって」
そう言って、僕はモモちゃんの指を股間に持っていく。

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