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変わる関係、移ろう日々 ~1~

 始まりは、ある寒い冬の日。
 ピピピッ。
 目覚ましの音が聞こえる。
 浦林宗治(うらばやしむねはる)は左手で目覚ましを探し当てて、うるさく鳴り響く音を止める。
 カーテンを開けて光を取り入れると光が部屋を満たすしていく。
「ううっ…」
 太陽の光が宗治の意識を覚醒させていく。
 目をこすりながらゆっくりと起き上がると大きくあくびをした。
「ふ…ぁあ」
 こうして宗治の一日が始まる。
 宗治は部屋を出ると、すぐ左にある扉に立つ。
 そこには「ミサオの部屋 まずはノックして!」と書かれているプレートが掲げられていた。
 まだどこかぼんやりとした頭でドアをノックする宗治。
 いつものことだが返事はない。
 溜息をついて宗治はドアを開ける。
「ミサオ、入るよ」
 ランプの明かりがぼんやりと部屋を照らしていた。
 ベッドには人一人分の膨らみがある。
「朝だよ、ミサオ」
 とりあえず声を掛けるがベッドにいる膨らみは反応を見せない。
 いつものことなので宗治はそれを無視して窓際に歩み寄り、カーテンを開ける。
 部屋の中に光が満ち溢れていく。
 宗治は部屋を見回し、投げ捨てられていた目覚ましをまず回収する。
 そして、目覚ましを持ったまま、ベッドに近づき耳元で音を鳴らす。
 ジリリリリッと宗治の部屋にあった目覚ましよりもはるかに耳障りな音を立てる。
 その音に、ベッドの膨らみは若干の反応を示すが、再び動きを止める。
「ミサオ、ほら、起きて」
 目覚ましがうるさくなる中で、宗治は布団を剥いだ。
「寒いよ…ハルくん…」
 そんな声と共にパジャマを着た少女が丸まった状態で現れる。
 宗治の「妹」の浦林操(うらばやしみさお)だ。
 全体的にほっそりとしている体形で、特に胸に栄養がいっていないように宗治には思えた。
 ただし彼女にそのことを言うと怒るのだが。
「早く起きないと遅刻するよ」
 髪は短く切っておりどこかやんちゃな少年のような印象を宗治は彼女に持っていた。
 今でもそれは変わらないはずだが、時として操が女の子であると感じてドキリとすることがある。
「ん~、わかったよ……ハルくん、いつもありがと」
 そういって寝ぼけた声で宗治に抱きつく操。

 パジャマ越しに感じる操の体は細くても柔らかかった。
 女の子の甘い匂いが宗治の鼻腔を刺激する。
 昔は全く気にしなかったのに、いつから操はこんなに変わってしまったのだろう。 
「ほら、早く起きて!」
 理性を奮い起こし操の体を離して操を振り払う。
「ちゃんと起きなよ」
 以前、二度寝したことがあったから一応そう言ってから部屋を出ていく。

 
 部屋を出てダイニングに向かうと宗治の母の洋子が朝食の準備をして、父の健吾は新聞を読んでいた。
「お早う」
 宗治の挨拶に両親が挨拶を返す。
「お早う、宗治」
「お早う、ハルくん」
 洋子はまだ若く、30になっていないはずだ。
 友達を家につれていくと「浦林の母さんって若いな」と羨ましがられることが何度もあった。
 正確に言うと洋子は宗治の義母である。
 洋子は父子二人で暮らしていた宗治の父と結婚したのだ。
「お早う…父さん…母さん」
 眠そうな表情の操がやってくる。
「お早う、操」
「お早う、ミサちゃん」
 操は洋子が16の時に産んだ娘で、宗治とは血の繋がりはない。
 それでも家族4人で仲良く暮らしている。
 

「「いってきまーす」」
 宗治と操が声を揃えて玄関を出る。
「いってらっしゃい」
 洋子の声を背に二人して並んで中学校へ行く。
「いつも朝ボクのこと起こしてくれてありがとうね、ハルくん」
 操が笑顔を浮かべて感謝の言葉を言う。
「まあ、僕が兄だからね」
 その言葉に操が頬を膨らませ、不満そうな顔をする。
「ハルくんは同い年だからなぁ…お兄さんって感じしないな」
 二人はたまたま同じ日に生まれていたので、当然年も同じであった。
 一応宗治が兄ということになっているが、良くも悪くも周りから兄扱いされた覚えがない。

「朝起きらんないのに、何言ってんだか」
 宗治が軽く文句を言う。
「むっ」
 その言葉に操がにらんでくる。
 しばらくにらみ合うが、やがて。
「ぷっ」
「あははは」
 どちらからともなく笑いだす。
 そんなやり取りをしながら二人で歩く。
 途中で宗治と同じ制服を着た少年と合流する。
「お早う、坂上」
「お早うセーくん」
 宗治と操の幼馴染の坂上成一(さかがみせいいいち)も手を軽く上げて挨拶を返す。
「よお、ハル、ミサオ」
 成一は宗治と操の幼馴染で小学生の頃から3人でよく遊んだりした。
 中学もこうして一緒に通っている。
 先日のドラマが死ぬほどつまらなかったなど、たわいない雑談をしながら3人で学校へ向かう。
 いつも通りの一日。
 この日々が崩れるなど宗治には知る由もなかった。


 それは学校が終わり帰宅しているときのこと。
 宗治は水泳部に所属しているが、夏場以外は筋トレなどの体力づくりを中心にすることになっている。
 だが、さほど部員は熱心ではないので、冬場はプールサイドや用具室で適当に集まってなんとなく解散ということが多かった。
 操は女子のグループと帰っているので、宗治は家が同じ方向の成一と二人で歩いていた。
 たわいのない話を話していた時。
「なあハル」
 成一が改まった様子になって宗治に話しかけてきた。
「なんだよ」
 成一の様子に不信を思いながら、宗治は応じる。
「その、さ。ミサオって彼氏とかいないよな」
「はぁ?」
 思わず気の抜けた声を出す宗治。
 宗治の返事に成一はムッとした表情を見せる。
「こっちは真剣に聞いてるんだぞ」
「いないんじゃないかな、お前だってミサオといるんだからわかるだろ」
 操から彼氏がどうとかいう話は聞いたことがなかったので宗治はそう答えた。
 しかし、本当にそうなのだろうか?
 家族としていつも一緒にいるが、実は宗治に隠れて付き合っている男がいるかもしれない。
 宗治はそんな不安を押し隠して平静を装う。
 彼氏はいないという言葉にほっとした表情を見せる成一。 
 その様子になぜか、宗治の胸がざわつく。

「その、さ」
 成一が言いにくそうな様子で切り出す。
「なんだよ」
 宗治は成一にいらつきながらも続きを促す。
 成一は意を決したのか、ゆっくりと宗治に目を合わせて言葉を発した。
「俺、ミサオが好きなんだ」
「ふぅん…」
 成一の言葉に対して出せた言葉はそれだけだった。
 しかし、宗治の心の中は激しく乱れていた。
「おい、それだけかよ!」
 一見、熱のないように見える宗治の返答に成一が顔を赤くしながら抗議する。
「俺は親友でミサオの家族のお前だから言ったんだぞ!」
「やっ、そんなこと言われてもね…」
 宗治は何と返すべきか言葉が浮かばない。
 応援するよ、という言葉がどうしても出ない。
「ミサオには言ったの?」
 言ったはずはないと思いながらも微かな不安を打ち消すためにあえて宗治は聞いた。
「い、言ってねぇよ!」
 成一の返答にほっとする宗治。
「ミサオには俺から言うから、ハルは絶対に言うなよ!」
 だったらなぜ黙っていないのだろう。
 そんなことを思ったが、宗治は頷いた。
 その後も成一は手伝ってくれよ、どうすればいいかな、などと話しかけてきたが、宗治は上の空であいまいな返事をすることしかできなかった。

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名前の読みがなが()内に書いてあるだけで一気に読む気が失せるな

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