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変わる関係、移ろう日々 ~10~

 坂上成一には幼馴染がいる。
 浦林宗治と浦林操の兄妹という名前の兄妹である。
 二人は幼稚園のころに成一の近所に引っ越してきて以来の付き合いである。
 いつのころからだろう。
 成一は操のことが好きになり、その想いを持て余すようになった。
 最近、操の兄の宗治に自分の想いを打ち明けていたが、操本人にはどうしても言うことができなかった。
 成一はもし操に振られてしまうのが怖かった。
 そして、幼馴染という心地よい関係が壊れてしまうのかもしれないという恐れが成一の決断を鈍らせていた。
(でも、いつか言わなくちゃな)
 そう、いつか言わなければならない。
 そんなことを思いながら学校へ向かうために家を出る。
 昨日、二人が喧嘩していたことを思い出す。
(ハルがミサオの裸覗いたんだっけ)
 実際に宗治が覗いたのは操の自慰なのだが、成一は操から話を聞いていたので本当のことは知らない。
 昨日は、操はカンカンに怒っていて、宗治と口を聞こうともしなかった。
(仲直りしてるのかな…)
 成一の幼馴染である二人が喧嘩をしているのはあまり嬉しいことではない。
 二人には仲直りして欲しかった。
 どうしたものか、と考えていたら二人と合流した。
 しかし、二人は喧嘩などせずにいつも通り仲良く歩いていた。
「おはよう、セーくん」
「おはよう、坂上」
 二人は成一に挨拶する。
「よお、二人とも仲直りしたのか」
「うん…わざとじゃなかったし、ハルくんだから、特別にね」
「何だよ、じゃあ、俺はミサオの裸覗いても許してくれるのか?」
 冗談めかして操に聞く。
 本当は操の裸を覗きたいのだが、正面切ってそんなことは言えないし、できない。
 だから、冗談で包んで聞いた。
「バカ…わざと覗いたら絶対許すわけないじゃん」
 怒ったような表情で操が軽く睨む。
 成一にとっては操の怒った顔も魅力的に映った。
「ミサオの裸覗いたら絶対許さないぞ」

 宗治も釘を刺す。
「覗きをしたハルくんが偉そうなこと言わない!」
 操は宗治に噛みつく。
「ハイハイ、冗談に決まってるだろ」
 冗談に聞こえるように言って成一が締めくくった。
 二人はどうやら仲直りしたようだ。
(ミサオへの告白、どうすっかな) 
 成一の興味は他へ移っていた。
 成一は喧嘩した二人がどうやって仲直りしたか知らないし、興味もなかった。
 ただ、仲直りして良かったと思うだけだった。
 だから、成一は知らない。
 二人がどうやって仲直りしたか。


 浴室で宗治の放った白濁で汚れた操を見つめる宗治。
 操は呆然とした表情で、顔にかかった精液を指ですくい、見つめる。
 精液をすくい見つめる。
 そんな仕草も宗治の欲望を煽る。
 そのことで、操の指もまた汚れるからだ。
 宗治の白濁で。
 すくった精液を操は自分の鼻に近付けて匂いを嗅ぐ。
「変な…匂い」
 匂いに顔をしかめる操。
「ミサオ…ごめんね…でも、すごく気持ち良かったよ、ありがとう」
 そう言いながら、宗治はボディソープを泡立て始める。
 徐々に操が正気に返っていく。
 ゆっくりと操の顔に怒りが浮かび上がり始め。
「ハルくん…何するん…ひゃっ!」
 浮かびきる前に消えた。
 宗治が泡立てた手を胸に持って行き、舐めるようにいやらしい手つきで操の精液で汚れた胸元を洗い始めたからだ。
「やっ…ハルくん…」
「本当にごめんね、ミサオ。
でもね、ミサオが手でしてくれるのが本当に気持ち良かったんだ。
それに早く綺麗にしないとね、風邪ひいちゃう」
 そう言いつつ、洗面器にお湯を張って操に渡す。
「ミサオの顔も洗わないとね」
「バカ…」
 操はそう言いながらも顔を奇麗にしていく。
 宗治もその間に自分の体のあちこちを洗っていく。
「なんか匂いが落ちない気がするんだけど…ハルくん」
「よく洗わないと匂いは落ちないからね、体は僕が綺麗にしておくよ」

 そう言いながら丁寧に胸の辺りを泡立てていく。
 丁寧に丁寧に。
 綺麗にしているはずなのに、操の胸を宗治の手が舐めていく。
「あっ……ハルくん……ボクは……はぁっ……怒って、るんだぞ……はぁん……」
 そう言いながら操の顔は女の顔をしていた。
 少年のようにいつも一緒にいる元気な家族でも、成一への想いをはにかみながら語っていた少女でもなく、性の悦びを覚えた女の顔。
 怒りが込められるはずの声も欲情の熱が色濃く載せられる。
(ミサオの体…本当に気持ちいい…)
 これほど操は宗治の傍にいたのに、宗治がこの快楽を味わうのは今日が初めてなのだ。
 今までの人生を無駄に過ごしてきたようにすら感じてしまう。
(こんなにミサオって可愛くて、いやらしくて、気持ちいいのに…)
 危うく操を堪能する機会を失うところだった上に、他の男に操を渡すところだったのだ。
(何て馬鹿だったんだよ僕は)
 自分の愚かさと優柔不断を悔やむ。
 それでも、今は操の体に没頭できる。
 そのことだけは賢明だったと心から思った。
 操の胸元を泡立てながら、柔らかさを味わい撫でまわす。
「ミサオ、胸触られるの好きでしょ?
お詫びに気持ち良くもしてあげるね」
「はぁっ……やっ…胸なんて……はぁ……はぁ……そんなこと…そんなこと…ない……やっ……ボクは……んっ…気持ち良く……なんか……ぁっ……あっ…ひぅっ…!」
 声が少し大きくなる。
 宗治が乳首を指先で転がしたから。
「乳首がこりこりするね、ミサオ…可愛い」
 自分の愛撫で乱れるのだら可愛らしくも思う。
「やっ…駄目っ…やあっ……そんなの……そんなの、ボク……あっ……あっ……ハルくん……んっ……胸……はぁ……はぁ……駄目ぇ」
 宗治の胸への愛撫に操は乱れる。
 自分の手で操をここまで淫らに変えることができるのだ。
 そして操のいやらしい喘ぎ声。
 今まで知ることのなかった操を知ることができて愛おしさがさらに募る。
「ミサオのHな声、すごく可愛い」
 操の耳元で囁く。
「はぁ…ハルくんの……はぁん……変態……んっ……んっ…ばかぁ……あん…」
 操の抗議の声も甘やかな音色となって宗治の耳に心地良く響く。

 しかし、宗治は動きをを止める。
「あっ……」
 宗治の愛撫の終わりを惜しむような操の声。
「じゃあ、流すね…ミサオ」
 宗治はシャワーを操の胸元に掛けて行く。
 泡立てられた胸はシャワーによって清められていく。
 そして、操の肌は本来の汚れない白を取り戻す。
 宗治によって汚された白濁ではなく、操の肌本来の白へ。
 宗治が汚し、宗治が清めた。
(ミサオを汚れた姿も綺麗な姿も僕だけが見てるんだ)


 二人は浴室から出てバスタオルで体を拭く。
 そして、二人は未だに欲情の余韻がその顔に残っている。
「うん、綺麗になったよミサオ。
 元から綺麗だけどすごく綺麗だよ」
「バカ、バカ、バカ…ハルくんの…バカ」
「ミサオは怒ってても可愛いや」
 操は恥ずかしそうに「バカ」と繰り返す。
「ミサオ、僕…ミサオとセックスしたい」
 何を最後までするかは操にも当然理解できた。
「…バカ」
 真っ赤になって俯いたまま操が言う。
「僕のこと嫌い…ミサオ?」
 結局、拒絶されてしまうのだろうか。
 成一が良いのだろうか。
 そう思い宗治は聞く。
「……いいよ」
 消え入りそうな操の言葉。
「本当に?やっぱりだめとかじゃないよね?僕とセックスしてくれるんだよね?」
 喜びに満ちた宗治の声。
 操はセックスという露骨な言葉に反応する。
「良いよって言ってんだろ、バカ!
セ、セックスなんて…恥ずかしいこと、何度も言うなよ……」
 宗治に怒鳴る操。
 もっとも後半はその勢いを保つことはできなかったが。
 しかし、宗治の喜びは消えない。
「ミサオ!」
 操を思い切り抱きしめる。
 とっくに力を取り戻していたペニスが操の太ももに触れる。

「もう、こんなにおっきい…」
 驚いたような表情で操が宗治の股間を見つめる。
 宗治も気恥ずかしくなってくる。
「その…ミサオの部屋…行こう」
「うん…」

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