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弟の願い事 ~5~
- 2008/06/17
- 22:42
ほっとした秀雄はそのままパジャマを見る。
白いシンプルなパジャマだ。
そんなものでも恵理沙の美しさを引き立てているように思えた。
しかし、今の秀雄にとっては邪魔だ。
恵理沙のパジャマにゆっくりと手を伸ばす。
白いシンプルなパジャマだ。
そんなものでも恵理沙の美しさを引き立てているように思えた。
しかし、今の秀雄にとっては邪魔だ。
恵理沙のパジャマにゆっくりと手を伸ばす。
彼女に触れなければ服は脱がせるのではないか?
秀雄は妄想を繰り返す中でそんなことを考えたのだ。
そして、今それを実行しようとしている。
手が振るえ、喉がカラカラになる。
恵理沙の純白のパジャマに手が掛かる。
何ともないようだ。
(やった!)
心の中で喝采を叫ぶ秀雄。
そして、なおも震える指で恵理沙のパジャマのボタンを一つだけ外す。
彼女の肌が微かに露わになる。
ごくりと秀雄の喉がなる。
やはり何ともない。
そのまま、全てのボタンを外していく。
(ふ、ふふふっ)
心の中で笑いながらボタンを外し終える秀雄。
そして、彼女の肌が露わになる。
ほっそりとした体で腹部は引き締まっており、なだらかな膨らみをブラジャーが包む。
(綺麗だ…)
ブラジャーで乳首は見えないのが残念だが、彼女の肌が見れたのだ。
秀雄の中で何かが満たされていく。
しかし、これを誠司もまた見ているのだ。
しかも何の障害もなく、下着に邪魔されることもなく。
そう思うとあまりの理不尽さに笑い出してしまいそうになる。
だが、今見ているのは秀雄だ。
ブラジャーを彼女が寝たまま外すのは断念した。
それでも
(俺にはこいつがある)
デジタルカメラの中に彼女を写していく。
恵理沙の美しさをこの中に収めるのだ。
結局、彼女は目を覚まさなかった。
秀雄は自分の部屋に戻って、画像をパソコンに取り込んでオカズにした。
その結果、いつもより気持ち良く抜くことができた。
自慰の余韻に浸りながら、それでも秀雄の中にある形のとれないもやもやは解消されなかった。
むしろ、快楽の去った後には惨めな気持ちばかりが残った。
ここ最近見ることの無い恵理沙の笑顔。
いや、違う。
自分に向けられることの無い恵理沙の笑顔だ。
そして、彼女の笑顔は誠司ばかりに向けられる。
それを思い出すと、秀雄の中に悲しみがこみ上げる。
自分にはもう向けらることのないものだろうか。
(畜生、畜生…)
やり場のない怒りから逃れるためにさらにモニタを眺めながら自慰を繰り返す。
その度に訪れる快楽と怒り。
こうして、秀雄の一年は始まった。
--------------------------------------------------------------------------------
吉岡家は正月三が日は込むということで初詣はずらしていくことになった。
三が日は何をやっていたかというと。
「ここはこう解くのよ」
「ふ0ん、そうなんだ」
絵里沙と誠司がこたつの中で顔を寄せ合っている。
誠司の宿題を絵里沙が手伝っているのだ。
「これで合ってるかな?」
「そうね誠司君、良くできました」
絵里沙が微笑みながら頭をなでる。
「へへ」
嬉しそうにそして、どこか得意そうに笑う誠司。
何の他意も無いはずの無邪気な笑みも今の秀雄にとっては自身に向けられた嘲笑に映る。
秀雄の心は荒んでいた。
(あいつら…くそっ)
「正月くらいゆっくりしたらどうだ」
勉強でなく寄り添う二人に苛立ちを覚えてそう言った。
「毎日こつこつやらなきゃだめだよ、兄ちゃん」
毎日こつこつ。
それはつまり、この光景を冬休み中見せられてきたということだった。
そして、冬休みの間見せられ続けるのだ。
そう思うだけで秀雄は惨めになる。
「絵里沙も嫌がってるんじゃないか?」
「あら、私は大丈夫よ。毎日ほんの少しずつだもの。それよりもまじめに宿題をして偉いわね、誠司君」
「うん、僕がんばるよ!」
せっかく絵里沙のために言ったつもりがあっさりと流され、おまけに絵里沙は誠司を褒め始める。
(ふざけやがって…せっかく絵里沙のためを思って言ってやったのに)
さらに。
「ん……お姉ちゃん…」
こたつで寄り添って眠る二人。
誠司は絵里沙の薄いが柔らかそうな胸に頬を寄せて心安らかな表情を浮かべている。
きっとその胸に絵里沙の匂いを胸一杯に吸い込んでいるのだろう。
そして絵里沙。
そんな誠司を包むようにして、眠っている。
偶然だろう。
偶々、手の形がそういう風になっただけなのだ。
そう思っても秀雄には絵里沙が誠司を抱きしめて眠っているように見えた。
(何で…正月からこんな思いをしなきゃいけないんだよ…)
このような具合だった。
そのため、新年だというのに秀雄は酷く不快な気分だった。
そして、三が日が過ぎ、ある程度空いただろうということになり家族で初詣にいくことになっていた。
男性陣は寒さを防げれば良い、という考えだったので見た目より防寒をもっぱら考えている。
そのため、参拝のため歩いていると目が行くのは恵理沙の方だった。
安岡(今は吉岡)恵理沙の格好を吉岡秀雄はじっと見る。
オレンジを基調として花の模様が描かれている着物を着て、白い帯を身に着けている。
その上にコートを羽織って防寒している。
よく、似合っていた。
秀雄は心からそう思った。
「恵理沙お姉ちゃん、綺麗だね。お姫様みたい」
感動したような口調で誠司が言う。
何がお姫様、だ。
(ガキのくせにお世辞なんか言いやがって)
だが、恵理沙は嬉しそうに笑う。
「ふふ」
ふざけた女だ、と秀雄は思う。
こんな子供のお世辞に喜ぶなんて。
「ねぇ、秀雄はどう思う?」
突然、恵理沙が話を秀雄に振ってくる。
何がどう思うのだろう。
「何が?」
「私の着物よ」
似合っている、と言うべきなのだろう。
事実、着物は恵理沙を美しく引き立てていた。
しかし、秀雄には先ほどの誠司に向けられた笑顔が心に残る。
ここで褒めたら、恵理沙のご機嫌取りをしているように思いそんなことを言う気になれない。
ここで、媚びるの訳にはいかない。
秀雄はそう思った。
「お前には似合わないんじゃねえか」
気のない声で答える秀雄。
その返事に微かに顔を曇らせる恵理沙。
「そう…」
「そんなことないよ、恵理沙お姉ちゃんにとっても良く似合ってるよ!」
横から元気な声が割り込む。
「兄ちゃんには見る目が無いんだよ!」
「ありがとうね、誠司君」
誠司の頭を撫でる恵理沙。
そういった2人のちょっとした触れ合いにも秀雄は苛立ちを覚える。
(ふざけやがって…)
そのために、秀雄は恵理沙にそっぽを向いていた。
だから、秀雄に悲しげな表情を向ける恵理沙に気付くことは無かった。
せっかく着物を着てみたのに秀雄は褒めてくれなかった。
クリスマス以降、秀雄とは喧嘩ばかりしているような気がする。
だから、着物を着て秀雄に褒めてもらいたいというのは贅沢なのかもしれない。
それでも恵理沙は淋しい、という想いが湧いてくる。
着物姿を見せた時は上手くいったと思ったのだ。
秀雄は自分に見とれているように見えたのだ。
だが、恵理沙の着物については秀雄は何も言ってくれない。
誠司は真っ先に褒めてくれたし、秀雄の父の清介も「似合っている」と言ってくれた。
なのに、秀雄は何も言わない。
何も言ってくれない。
とうとう我慢できず、恵理沙から聞いてみれば気のない声で「似合わない」と言っただけ。
どうしてこうも上手くいかないのだろう。
恵理沙は心の中で溜息を吐いた。
「恵理沙お姉ちゃん、元気ないね」
心配そうな声で誠司が聞いてくる。
秀雄も気付かないのに自分を心配してくれたのか。
嬉しいと同時に、こんな子供にまで心配をかけているのだと思うと恵理沙は自分が情けなくなった。
「何でもないわ、誠司君」
彼女は気付かない。
自分が誠司に笑顔を向ける度に秀雄の不快感が増していくことに。
何も知らない恵理沙は、誠司を心配させないためにまたも笑顔を浮かべる。
「やっぱり神社に来たらおみくじを引かなきゃいけないと思うのよ」
恵理沙のその言葉で子供達はおみくじを引くことになった。
去年は散々な最後だった。
今年こそいいことがあればいいが、凶など引いたら目も当たられない。
そう思い、秀雄は最初反対したが、結局恵理沙と誠司に押されて秀雄はおみくじを引いた。
去年は散々だったし今年もどうなるか分からない。
それでも、さすがに凶を引くことはないだろうと思って引いてみたのだ。
(というより、凶なんて引く奴はさすがにいないだろ)
大吉だった。
(ふん、こんなのあてになるかよ)
そう思ったものの悪い気持ちはしなかった。
今年は良いことがあるのではないか、そんなことを思ってしまう。
「私は大吉ね」
次に引いたのは恵理沙だった。
下らないことだが秀雄は(恵理沙と一緒か)などと思ってしまう。
「あら、秀雄も一緒ね」
恵理沙が笑みを浮かべる。
久方ぶりに秀雄に向けられた笑み。
それだけのことに秀雄は喜びを覚えた。
「ああ、そうだな」
秀雄も恵理沙に笑みを返す。
ひょっとしたら今年は本当にいいことがあるかもしれない。
秀雄の中にそんな期待が生まれてくる。
最後に誠司がおみくじを引く。
「僕…」
誠司の表情が暗い。
秀雄と恵理沙は誠司の引いたおみくじを見る。
「まぁ…」
恵理沙が声をあげる。
凶だった。
本当に凶を引く奴がいたのか、とまず秀雄は思った。
そしてすぐにいい気味だ、と思った。
自分から恵理沙を奪ったのだ、弟ながら憎らしいと思っていたが、多少は溜飲が下がる。
自分と絵里沙は仲良く大吉。
そう思うと誠司を仲間はずれにできたという思いも生まれる。
(今年は本当に良い年かも知れない)
暗い喜びに浸る秀雄。
調子に乗った秀雄は誠司を脅す。
「俺の友達が凶を引いた知り合いが交通事故に遭ったって言ってたなぁ」
そんなことをこれ見よがしに言ってみる。
するとたちまち怯えた表情を誠司は浮かべる。
「僕…交通事故に遭っちゃうの?」
その様子に秀雄は心の中で喝采をあげる。
(そうさ、お前なんか交通事故に遭えば良いんだ!)
「さあな、日頃の行いの結果なんじゃないか」
秀雄にしてみれば自分から恵理沙をうばったのだから、誠司など万死に値する。
秀雄は妄想を繰り返す中でそんなことを考えたのだ。
そして、今それを実行しようとしている。
手が振るえ、喉がカラカラになる。
恵理沙の純白のパジャマに手が掛かる。
何ともないようだ。
(やった!)
心の中で喝采を叫ぶ秀雄。
そして、なおも震える指で恵理沙のパジャマのボタンを一つだけ外す。
彼女の肌が微かに露わになる。
ごくりと秀雄の喉がなる。
やはり何ともない。
そのまま、全てのボタンを外していく。
(ふ、ふふふっ)
心の中で笑いながらボタンを外し終える秀雄。
そして、彼女の肌が露わになる。
ほっそりとした体で腹部は引き締まっており、なだらかな膨らみをブラジャーが包む。
(綺麗だ…)
ブラジャーで乳首は見えないのが残念だが、彼女の肌が見れたのだ。
秀雄の中で何かが満たされていく。
しかし、これを誠司もまた見ているのだ。
しかも何の障害もなく、下着に邪魔されることもなく。
そう思うとあまりの理不尽さに笑い出してしまいそうになる。
だが、今見ているのは秀雄だ。
ブラジャーを彼女が寝たまま外すのは断念した。
それでも
(俺にはこいつがある)
デジタルカメラの中に彼女を写していく。
恵理沙の美しさをこの中に収めるのだ。
結局、彼女は目を覚まさなかった。
秀雄は自分の部屋に戻って、画像をパソコンに取り込んでオカズにした。
その結果、いつもより気持ち良く抜くことができた。
自慰の余韻に浸りながら、それでも秀雄の中にある形のとれないもやもやは解消されなかった。
むしろ、快楽の去った後には惨めな気持ちばかりが残った。
ここ最近見ることの無い恵理沙の笑顔。
いや、違う。
自分に向けられることの無い恵理沙の笑顔だ。
そして、彼女の笑顔は誠司ばかりに向けられる。
それを思い出すと、秀雄の中に悲しみがこみ上げる。
自分にはもう向けらることのないものだろうか。
(畜生、畜生…)
やり場のない怒りから逃れるためにさらにモニタを眺めながら自慰を繰り返す。
その度に訪れる快楽と怒り。
こうして、秀雄の一年は始まった。
--------------------------------------------------------------------------------
吉岡家は正月三が日は込むということで初詣はずらしていくことになった。
三が日は何をやっていたかというと。
「ここはこう解くのよ」
「ふ0ん、そうなんだ」
絵里沙と誠司がこたつの中で顔を寄せ合っている。
誠司の宿題を絵里沙が手伝っているのだ。
「これで合ってるかな?」
「そうね誠司君、良くできました」
絵里沙が微笑みながら頭をなでる。
「へへ」
嬉しそうにそして、どこか得意そうに笑う誠司。
何の他意も無いはずの無邪気な笑みも今の秀雄にとっては自身に向けられた嘲笑に映る。
秀雄の心は荒んでいた。
(あいつら…くそっ)
「正月くらいゆっくりしたらどうだ」
勉強でなく寄り添う二人に苛立ちを覚えてそう言った。
「毎日こつこつやらなきゃだめだよ、兄ちゃん」
毎日こつこつ。
それはつまり、この光景を冬休み中見せられてきたということだった。
そして、冬休みの間見せられ続けるのだ。
そう思うだけで秀雄は惨めになる。
「絵里沙も嫌がってるんじゃないか?」
「あら、私は大丈夫よ。毎日ほんの少しずつだもの。それよりもまじめに宿題をして偉いわね、誠司君」
「うん、僕がんばるよ!」
せっかく絵里沙のために言ったつもりがあっさりと流され、おまけに絵里沙は誠司を褒め始める。
(ふざけやがって…せっかく絵里沙のためを思って言ってやったのに)
さらに。
「ん……お姉ちゃん…」
こたつで寄り添って眠る二人。
誠司は絵里沙の薄いが柔らかそうな胸に頬を寄せて心安らかな表情を浮かべている。
きっとその胸に絵里沙の匂いを胸一杯に吸い込んでいるのだろう。
そして絵里沙。
そんな誠司を包むようにして、眠っている。
偶然だろう。
偶々、手の形がそういう風になっただけなのだ。
そう思っても秀雄には絵里沙が誠司を抱きしめて眠っているように見えた。
(何で…正月からこんな思いをしなきゃいけないんだよ…)
このような具合だった。
そのため、新年だというのに秀雄は酷く不快な気分だった。
そして、三が日が過ぎ、ある程度空いただろうということになり家族で初詣にいくことになっていた。
男性陣は寒さを防げれば良い、という考えだったので見た目より防寒をもっぱら考えている。
そのため、参拝のため歩いていると目が行くのは恵理沙の方だった。
安岡(今は吉岡)恵理沙の格好を吉岡秀雄はじっと見る。
オレンジを基調として花の模様が描かれている着物を着て、白い帯を身に着けている。
その上にコートを羽織って防寒している。
よく、似合っていた。
秀雄は心からそう思った。
「恵理沙お姉ちゃん、綺麗だね。お姫様みたい」
感動したような口調で誠司が言う。
何がお姫様、だ。
(ガキのくせにお世辞なんか言いやがって)
だが、恵理沙は嬉しそうに笑う。
「ふふ」
ふざけた女だ、と秀雄は思う。
こんな子供のお世辞に喜ぶなんて。
「ねぇ、秀雄はどう思う?」
突然、恵理沙が話を秀雄に振ってくる。
何がどう思うのだろう。
「何が?」
「私の着物よ」
似合っている、と言うべきなのだろう。
事実、着物は恵理沙を美しく引き立てていた。
しかし、秀雄には先ほどの誠司に向けられた笑顔が心に残る。
ここで褒めたら、恵理沙のご機嫌取りをしているように思いそんなことを言う気になれない。
ここで、媚びるの訳にはいかない。
秀雄はそう思った。
「お前には似合わないんじゃねえか」
気のない声で答える秀雄。
その返事に微かに顔を曇らせる恵理沙。
「そう…」
「そんなことないよ、恵理沙お姉ちゃんにとっても良く似合ってるよ!」
横から元気な声が割り込む。
「兄ちゃんには見る目が無いんだよ!」
「ありがとうね、誠司君」
誠司の頭を撫でる恵理沙。
そういった2人のちょっとした触れ合いにも秀雄は苛立ちを覚える。
(ふざけやがって…)
そのために、秀雄は恵理沙にそっぽを向いていた。
だから、秀雄に悲しげな表情を向ける恵理沙に気付くことは無かった。
せっかく着物を着てみたのに秀雄は褒めてくれなかった。
クリスマス以降、秀雄とは喧嘩ばかりしているような気がする。
だから、着物を着て秀雄に褒めてもらいたいというのは贅沢なのかもしれない。
それでも恵理沙は淋しい、という想いが湧いてくる。
着物姿を見せた時は上手くいったと思ったのだ。
秀雄は自分に見とれているように見えたのだ。
だが、恵理沙の着物については秀雄は何も言ってくれない。
誠司は真っ先に褒めてくれたし、秀雄の父の清介も「似合っている」と言ってくれた。
なのに、秀雄は何も言わない。
何も言ってくれない。
とうとう我慢できず、恵理沙から聞いてみれば気のない声で「似合わない」と言っただけ。
どうしてこうも上手くいかないのだろう。
恵理沙は心の中で溜息を吐いた。
「恵理沙お姉ちゃん、元気ないね」
心配そうな声で誠司が聞いてくる。
秀雄も気付かないのに自分を心配してくれたのか。
嬉しいと同時に、こんな子供にまで心配をかけているのだと思うと恵理沙は自分が情けなくなった。
「何でもないわ、誠司君」
彼女は気付かない。
自分が誠司に笑顔を向ける度に秀雄の不快感が増していくことに。
何も知らない恵理沙は、誠司を心配させないためにまたも笑顔を浮かべる。
「やっぱり神社に来たらおみくじを引かなきゃいけないと思うのよ」
恵理沙のその言葉で子供達はおみくじを引くことになった。
去年は散々な最後だった。
今年こそいいことがあればいいが、凶など引いたら目も当たられない。
そう思い、秀雄は最初反対したが、結局恵理沙と誠司に押されて秀雄はおみくじを引いた。
去年は散々だったし今年もどうなるか分からない。
それでも、さすがに凶を引くことはないだろうと思って引いてみたのだ。
(というより、凶なんて引く奴はさすがにいないだろ)
大吉だった。
(ふん、こんなのあてになるかよ)
そう思ったものの悪い気持ちはしなかった。
今年は良いことがあるのではないか、そんなことを思ってしまう。
「私は大吉ね」
次に引いたのは恵理沙だった。
下らないことだが秀雄は(恵理沙と一緒か)などと思ってしまう。
「あら、秀雄も一緒ね」
恵理沙が笑みを浮かべる。
久方ぶりに秀雄に向けられた笑み。
それだけのことに秀雄は喜びを覚えた。
「ああ、そうだな」
秀雄も恵理沙に笑みを返す。
ひょっとしたら今年は本当にいいことがあるかもしれない。
秀雄の中にそんな期待が生まれてくる。
最後に誠司がおみくじを引く。
「僕…」
誠司の表情が暗い。
秀雄と恵理沙は誠司の引いたおみくじを見る。
「まぁ…」
恵理沙が声をあげる。
凶だった。
本当に凶を引く奴がいたのか、とまず秀雄は思った。
そしてすぐにいい気味だ、と思った。
自分から恵理沙を奪ったのだ、弟ながら憎らしいと思っていたが、多少は溜飲が下がる。
自分と絵里沙は仲良く大吉。
そう思うと誠司を仲間はずれにできたという思いも生まれる。
(今年は本当に良い年かも知れない)
暗い喜びに浸る秀雄。
調子に乗った秀雄は誠司を脅す。
「俺の友達が凶を引いた知り合いが交通事故に遭ったって言ってたなぁ」
そんなことをこれ見よがしに言ってみる。
するとたちまち怯えた表情を誠司は浮かべる。
「僕…交通事故に遭っちゃうの?」
その様子に秀雄は心の中で喝采をあげる。
(そうさ、お前なんか交通事故に遭えば良いんだ!)
「さあな、日頃の行いの結果なんじゃないか」
秀雄にしてみれば自分から恵理沙をうばったのだから、誠司など万死に値する。