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遭難事故 (1)

嵐は突然、やって来た。
東の空が薄暗くなってきたなと思っているうちに風が出て、波が高くなっていた。
そうして気がついた時には、プレジャーボートに乗っていた長谷川若菜、恵一の姉弟は、荒れ狂う海に揉まれていたのである。
「ね、姉ちゃん。やばいんじゃない、これ?」
「分かってる!あんたは、投げ出されないようにしてなさい!」
四級船舶士の免許しかない若菜に、大波をしのぐ技術などない。最近のボートは丈夫に
出来ていて、滅多に沈む事もないが、さすがに今の状況は危ないと言わざるを得なかった。

「港、どっちだろう」
若菜は波に揉まれて、方向感覚が狂っていた。コンパスを見ても、
次の瞬間には船の向きが変わるので、どうしようもない。
視界は三十メートルを切り、他船との衝突の危険すら出ている。
湾内からはそう離れていないはずなので、
少しでも晴れ間が出れば、東西南北くらいは分かるのだが、
今も雨は激しく降り続け、風が吹き荒れているために、姉弟は船ごと海に翻弄されるばかりだった。

「恵一、無線で海保に連絡して」
「さっきからやってるけど・・・アンテナが折れてるみたいで、電波が飛ばないんだ」
「携帯は?」
「水を被って、アウト」
「ああ・・・本格的にやばいわね」
大波を被ると、船があり得ないほど傾いた。
すでに若菜も舵を握っているだけで、とても操船しているとは言えない有り様である。
こうなれば後は運を天に任せ、なるようにしかないと開き直るしかなかった。

恵一が空を見上げると、腹が立つほど青かった。
嵐に遭ってからすでに六時間ほど経っているが、
姉弟は自分たちが今、どこに居るかも分からない状態である。

「・・・姉ちゃん、エンジンかかりそう?」
「駄目。エンジンカバーがどこかいっちゃってるから、オイルに水が混じったみたい」
荒れ狂う海と格闘したボートは、疲れ果ててただ波間を漂う筏の如きになっていた。
舵こそ利くものの、推進力がいかれていては意味が無い。

「そうかあ。本格的に遭難だな、こりゃ」
「でも、命があっただけめっけもんよ」
実を言うと、姉弟はあまり悲観的ではなかった。
幸い怪我も無く、水と食料はある程度積んであるし、
無線も携帯電話も壊れてしまったが、この船が離岸した事は港の管理人が知っているので、
そろそろ捜索願を出してくれているだろう。
船が壊れて孤島に流れ着いたならば話は別だが、
ここはそれほど港から離れていない、日本の領海内なのである。
誰にも見つからず、ずっと漂流するという事は、まず考えられなかった。

「パパ、怒るだろうなあ。ボート壊しちゃって」
「俺も一緒に謝るからさ。あんまり落ち込むなよ」
しゅんとする姉を、恵一は励ました。
船は商社を営む父の持ち物で、数千万はする代物だった。
それを、船舶免許を取りたての若菜が借り出し、この有り様となったのだ。
父親は怒るに決まっている。

「くよくよしてても仕方が無いさ。姉ちゃん、お茶でも飲もうよ」
「あっ、私、コーラがいい」
クーラーバックからドリンクを出し、
まったりとする姉弟。陽気が良いので二人とも水着姿だったが、
その様子はどこから見てもバカンス中という感じで、とても遭難しているとは思えなかった。

「ん?姉ちゃん、あそこ見て」
「なあに?鯨でも見えた?あっ、あれは・・・」
船首の右に、微かだが船のような物が見える。
若菜が双眼鏡であらためて見ると、それは貨物船だった。

「恵一、発煙筒」
「あいよ」
運が良い。姉弟は同じ事を思った。
「こっちへ来るよ。名前からして、外国船みたいだ」
「今ごろ望遠鏡で、美人の大和撫子を見て涎をたらしているかも」
「良く言うよ、まったく」
発煙筒が消えぬうちに、姉弟は貨物船に救助された。
これならば明るいうちに帰宅できそうだ。
この時、二人はそう考えていた。

「君たち、無事で何よりだったね」
貨物船の船長は、凄まじく聞き取りにくい英語で、そんな事を言った。
肌が浅黒く、口ひげを生やした五十前後の東南アジア系の外国人だが、どこか人懐こそうな顔をしていた。
「命を救っていただいて、ありがとうございます」
大学で英文科に通う若菜は、美しい英語でお礼を言いながら、船長と握手を交わす。
まだ高校生の恵一でも、挨拶程度の英語は出来るので、姉に続いて船長と握手を交わした。

「あの、それで海保には連絡を取ってもらえましたか?」
若菜が尋ねると、船長は目を泳がせ、
「ああ、しておいた。それで、この船で近くの港に送り届ける事になったよ」
と答え、口ひげを手で撫でつけた。何となく、気になる仕草だった。

「良かった。ありがとうございます」
「本当にありがとう。良かったな、姉ちゃん」
船長は喜ぶ姉弟を、目を細めて見つめている。そして、
「さあ、二人とも。船員用の部屋しかないが、しばしくつろいでくれたまえ。おい、お前、
この子たちを部屋に案内しろ」
近くにいた黒人の船員に、案内を命じたのである。

「こっちだよ」
黒人船員は手招きをし、姉弟をいざなう。コンテナを積む大型貨物船だが、居住スペ
ースは小さく、二人はすぐに部屋へ着いた。
「ありがとう。あなたの名前は?」
若菜が名前を尋ねると、
「ディドだ」
黒人船員は素っ気無く答え、部屋を出て行こうとする。

「あっ、待って。これ・・・少ないけど」
若菜は懐から財布を取り出し、一万円札を船員の手に握らせた。
「これは日本のお金で、米ドルで百二十ドルくらい。案内のお礼です」
米国への留学経験もある若菜は、チップの習慣は世界共通のものだと信じている。
だが、船員は目を吊り上げ、
「馬鹿にするな!」
と、叫んで、一万円札を床に叩きつけた。

「ひッ・・・」
若菜の顔が引きつった。褐色の肌を持つ船員は逞しく、力も強そうで恐ろしげである。
もし掴みかかられでもしたら、姉弟もろともひと捻りにされてしまうだろう。
「お前らアジア人は、俺たちを馬鹿にしているんだろう。あの船長と同じようにな」
「そんな事はありません」
身を竦ませながら、若菜は叫んだ。
普段、多民族との摩擦を経験しない日本人は、こういった時に弱い。
それは若菜だけでなく、恵一も同じだった。

「姉ちゃん、この人、何怒ってるんだ?」
「チップを差し上げたのが、気に入らなかったみたい」
「謝ろうよ。すごく怒ってる」
おろおろする姉弟を見て、船員は正気を取り戻したのか、少し落ち着いた風になり、
「まあ、その事はいい。ああ、言っとくが、港に着くまで、絶対に部屋から出るなよ」
と言い残し、部屋を出て行った。
後に残された二人は身を寄せ合い、ただただ呆然とするしかなかった。

「びっくりしたね・・・」
「うん。黒人って怖いな」
恵一は姉の肩を抱き、粗末なベッドに腰を下ろした。
座り心地は良くないが、あまり贅沢を言える身分でもないので、黙って毛布を姉の膝にかけてやる。

「どれくらいで、港に着くのかな。姉ちゃん、船長さんに聞いた?」
「ううん。でも、数時間程度じゃないかな。日本の領海内だし」
窓が無いのではっきりとは分からないが、貨物船は数ノットで航行しているらしい。
大型船ゆえ、速さは望むべくもないが、それでも今日中には日本へ帰れるだろう。
その安心感が若菜から緊張を解き、気持ちの緩みを誘った。

「・・・おしっこしたいな」
「え、今なんて?」
「おしっこよ。でもこの部屋、トイレが無いわ」
出るなと言われたこの部屋には、何とトイレが無かった。
たとえあったとしても、まさか弟が同室している前で、放尿するわけにはいかなかっただろうが、
ともかく大問題が発生した事には間違いない。

「ちょっと、探してくるわ」
部屋のドアに手をかけた若菜に、恵一が追い縋る。
「俺もついていこうか?」
「馬鹿!あんた、レディの用足しについてくるつもりなの?」
「いや、だって、心配だし」
「子供じゃないのよ。あんたは部屋で待ってなさい」
そう言って若菜は廊下へ出ていった。

「大丈夫かな、姉ちゃん」
恵一はあの黒人船員の言葉が気になっている。
部屋から出るなと言われているのに、もし出ている所を見られでもしたら、また凄い剣幕で怒るかもしれない。
しかし、用を足すというのは生理現象であり、しない訳にもいかないのである。
恵一は一人残された室内で、ただぼんやりと待っているしかなかった。

一方、若菜は狭い廊下をひた歩き、それっぽい場所が無いか探していた。
「あ~ん、漏れちゃうよぉ・・・」
尿意はもうそこまで来ている。
こんな所で粗相をすれば、それこそ大変な事になるではないか。
若菜は必死の思いで、何やら水の音のする部屋の前に行き着いた。

「ここかな?」
耳をすませると、さーっという水音が聞こえてくる。
若菜は意を決し、ドアを開けてみた。

すると──

「あっ・・・シャワー室?」
なんと、ドアを開けるなり若菜の目に飛び込んで来たのは、若くたくましい黒人船員たち
のヌードだった。そう、ここはトイレではなく、シャワー室なのである。
「なんだ?水着の女がいるぜ」
「アジア系だ。日本人かな?」
照明がほとんどないため、彼らの体は闇に溶け込み、目だけがギラギラと光っている。
それを見て若菜は恐怖し、その場に竦んでしまった。

「お嬢ちゃん、何の用だい」
「この船に、女は居ない筈なんだが、まさか密航者?」
船員たちは顔を合わせ、不思議そうに話している。
「密航者だったら、どうするってんだよ」
「そりゃ、お前。ひと昔前だったら、素っ裸にして海に放り込むのさ」
へらへらと笑う船員たち。
中には子供のような若菜を目の前にして、男根を剥きつけてる輩もいた。

「あの、その・・・実はトイレを探してて」
しどろもどろになりつつ説明する若菜。船員は五人も居るだろうか、揃って胸板の厚い、
逞しい男だった。
「トイレ?ああ、ここですればいい」
「そうだ。俺たちが見ててやる」
「そ、そんな・・・」
若菜がまごついていると、不意に後ろでドアの閉まる音がした。
それを合図に、シャワー室の中で人が蠢く気配がして、
気がつけば若菜は誰かに足を掬われ、転倒していた。

「姉ちゃん、遅いな」
用を足しに行くと言って部屋を出た姉は、もう一時間も帰って来ない。
恵一も探しに行くべきかと思ったが、すれ違いになっては仕方が無いので、もう少し待ってみる事にした。
「ちょっと眠るかな」
遭難しかけたせいで、体が疲れていた。
恵一はベッドに横たわると、すうっと眠りに落ちていった。


「誰か助けて!」
シャワー室のドアを叩き、若菜は助けを求めていた。
着ていたはずの水着は毟り取られ、部屋の隅に転がっている。
そして、室内には裸の黒人船員が救いを求める女の姿を見て、笑っていた。

「誰も来ないよ、お嬢ちゃん」
「あきらめな。そんで、俺たちと遊ぼうぜ」
「いや、来ないで!ああ、助けて、恵一ぃ・・・」
勃起した男根を隠そうともせず、迫る船員たち。
いくら叫んでも、ここには若菜を救ってくれる物好きはいない。
か弱き獲物を弄ぶ、獣しかいないのである。

「触らないで!ああッ!」
誰かが若菜の腕を捻り上げた。凄まじい力である。
もとより華奢な女に対し、彼らは腕ずくで悪さをするつもりのようだ。

「アジア人って、小さいな。アソコも小さいのかな」
「今から試せるじゃないか」
「そうだな、さっそく教えていただこうか」
「駄目よ、やめて・・・あッ!」
節くれだった太い指が、尻の割れ目をなぞっている。
若菜は身震いし、そのおぞましさに
思わず失禁してしまった。

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