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降りかかる悪夢 1

雨が上がった途端、生ぬるい風が町を舐めるように吹き抜ける。
もう三月も終わりで、世間がやれ花見だ酒宴だと浮かれている時、
古書店を経営する吉井貞夫は、一旦、店内にしまいこんだ本を、再び軒先へと出していた。
「よいしょっと」
六十を目前にし、自分も老いたものだと貞夫は思う。
特に、物を持つときに出るこの掛け声などが、その思いを強くさせる。
もっとも、古書店を営む身であれば、別段、筋骨隆々である必要もないが、それでも体力の衰えを嘆かずにはいられない。

雨が上がってすぐ、正午を知らせる役場の鐘が鳴り、店の奥から娘の声が聞こえてきた。
娘の名は綾乃。貞夫の一人娘で、今年二十七になるが、結婚はしていない。
「お父さん、そろそろお昼にしない?あ、雨、上がったの?」
「ああ。これで、桜も咲くだろう」
親子は店先で空を見上げた。ほこりっぽい春の空も、雨上がりの時だけは澄んで見えるものだ。
貞夫も綾乃も、真南に上がったお日様を眺め、目を細めている。

「いい風情ね」
「お昼がすんだら、パチンコにでも行ってくるかな」
「お父さんは、ちっとも風流を介さない人ねえ」
綾乃は、ふ、ふ、と含み笑いを残し、店の奥へ入っていった。
その後姿を貞夫は横目で見送り、ため息をつく。

午後から店を閉め、貞夫は外出した。
しかし、パチンコには行かず、店の奥にある蔵の中へ引きこもる事にした。
ここには、貞夫秘蔵の書物が山ほどあり、それらを読むための机や椅子も窓際に置いてある。

綾乃には予定通りパチンコに行くと言い、帰りは五時ごろだと告げてある。
その間、貞夫は蔵の中で過ごすつもりだった。
ここは中庭に建てられているので、店も住居も一望でき、何かと都合が良いのであった。
「ん?」
読書を始めてすぐ、住居の方に誰かがやってきた。
見れば、いかにも育ちの悪そうな学生達である。
皆、制服を着崩し、生意気にも咥えタバコで歩いている。
親のすねを齧っている身分のくせに、と貞夫は渋い顔をした。

「綾乃先生」
少年の一人が小声で言うと、
「もう、先生じゃないわよ」
と、玄関から綾乃が現れた。
実は、綾乃は昨年まで、隣の市で高校教師を務めていた。
少年たちはそこの生徒なのであろう、四、五人もいる少年達は皆、一様に綾乃を先生と呼んでいる。
「親父さんは?」
「いないの見計らって来たんでしょう?さっさと、入りなさいよ」
綾乃が、少年達を急かしながら家の中へ引き入れた後、玄関をそっと閉めた。
貞夫は場所を移動して、綾乃の部屋が見える窓際まで歩いていく。

貞夫は、綾乃が時々、こうやって学生達の訪問を受けている事は知っていた。
ただ、教職を退いている綾乃に、彼らが何の用があるのかが気になって仕方がない。
今、綾乃は進学塾の講師を務めているが、教師を辞した理由を貞夫には語っていないのだ。

「こんな時、死んだアイツが居てくれたらな・・・」
娘の扱いに困ると、貞夫はいつも先立たれた妻の事を思う。
妻は貞淑で優しい女だった。
綾乃もそれを受け継いでいる事に疑いは持たないが、それでも──という、思いが胸を過ぎるのであった。


部屋を見ると、少年達が綾乃を中心に車座りになっている。
座の真ん中には飲み物と菓子類、
それにタバコと灰皿が置かれていた。
「綾乃先生、ビール買って来たよ」
「気が利くじゃない。一本、ちょうだい」
少年がビールを手渡すと、綾乃は早速とばかりに缶を開けた。
次いで、置いてあったタバコを咥えると、物憂げに紫煙を燻らせる。
貞夫はその姿を見て、仰天した。

(あいつ、タバコを吸うのか・・・酒も家じゃ一滴も飲まないのに)
綾乃は部屋のカーテンも閉めず、少年達と談笑を始めた。
蔵と店に囲まれた住居部分は、他人の目を気にする必要はないが、それでもこの有り様はいかなる事であろうか。
あまりに奔放な娘の所業に、貞夫は己の顔から血の気が引いていくのを感じている。

「綾乃先生が学校辞めて、みんな寂しがってるよ」
「我が校、随一のオナペットだったからなあ」
少年達がそう言うと、綾乃ははにかんだような笑顔を見せた。

「オナペットどころか、公衆便所って呼ばれてたじゃないの。主に、あなたたちに」
タバコの火を揉み消しながら、綾乃は笑った。その言葉を聞き、貞夫は胸が締めつけられる。
「だって、実際そうだったしなあ」
「バカみたいにやったもんな。それが今でも続いてるけど・・・」
「おまけにそれが噂になって、学校辞める羽目になったし。
私にしてみれば、本当に迷惑なあだ名だったわよ。アハハ・・・」
綾乃を含め、その場に居る全員が大笑いをした。
とても元、教師と生徒との間で交わされる会話とは思えなかった。

(なんという事だ)
教師を辞職した理由を知り、貞夫は眩暈を覚えた。
つい先ほど、春の青空を見て風流だと言っていた娘が、ガキどもの情婦だったのである。
父として、これほど情けなく、かつ怒りを覚える話は無い。
「先生を最初にやったのは、サッカー部だったっけ?」
「そうそう。部室で無理矢理ね」
そんな事を、綾乃はさらりと言ってのけた。
過去の話のようだが、女が無理強いをされて、ここまできっぱりと認められるのだろうか。
貞夫は危うく膝を折りそうになる。

「こんな風にかい?」
一人の少年が突然、綾乃を押し倒し、馬乗りになった。
今出た話題の再現をしようとしているらしい。
「そうね。人数もちょうどこのくらいで・・・」
綾乃は手足をピンと伸ばし、目を瞑った。
その周りを、残った少年が囲む。

「手を押さえられたわね。それで、胸を揉まれたわ・・・」
誰かの手が、衣服越しに綾乃の乳房を掴んだ。
そして、円を描くようにゆっくりと揉みしだく。
「服は知らない間に脱がされて・・・抵抗はしなかったなあ・・・怖くって」
シャツにスカート、そしてブラジャーとパンティが少年達の手で脱がされていく。
ものの一分もしない内に、綾乃は完全に裸になった。

「足を開かされて、アソコに指を入れられたわ・・・ああ・・・」
各手足に少年が一人ずつ付き、綾乃に辱めを与え始めた。
乳房は激しく揉み込まれ、乳首も千切れんばかりに引っ張られている。
もちろん、下半身にも少年達の野性が忍び寄っていた。
「こうやって、やられたんだ」
「そうよ、あんっ・・・」
馬乗りになっていた少年がいつの間にか肉棒を放り出し、綾乃の中へ入っていた。
何となく予想はついていたが、実際、娘が犯されるのを見ると、
貞夫の動悸は激しくなり、息切れさえ感じるのであった。

数時間後、貞夫は何食わぬ顔で外出から帰ってきた。
厳密に言うと帰ってきたふりである。
綾乃は帰宅した父をいつもの顔で出迎え、夕食の準備に取り掛かった。

「ただいま」
「おかえり。何かおみやげ、ある?」
「いや、負けた。もう、二度とパチンコはやらん」
「毎回、同じこと言うのよね」
キッチンに立つ綾乃は、在りし日の妻の姿に似ていた。
そのせいで、先ほど見た物が何かの悪い夢ではないかとさえ思える。
結局、少年達は二時間ほど綾乃の部屋で過ごし、帰っていった。
その間、綾乃は犯され続けていた。数人の少年の中で、まるで玩具のように。

(しかし、紛れも無い事実なのだ・・・)
今一度、娘の姿を見る貞夫。
愛らしい顔は子供の頃からあまり変わらず、熟れた体がいかにも艶っぽい。
少年達はその色香にあてられ、綾乃と情交を持ちたがるのであろう
それは分からないでもないが、やって良い事と悪い事がありはしないか、と貞夫は思うのである。
(女一人に、男が寄ってたかって・・・恥ずかしいとは思わんのか)
そう怒鳴ってやりたい気持ちを抑えて、貞夫は少年達を見送った。
もっとも、老いたこの体で彼らを嗜める度胸があるのか、自分でも自信が無い。


もちろん、娘を我が家で犯されて、黙っている法は無い。
だが、悲しいかな、貞夫の体には少年達と対等に渡り合う力が無いのである。
そうなれば、第三者を介して事態を収拾するか、傍観者を決め込むしかなかろう。
無論、前案は採用できない。すれば、綾乃のしている行為が、世間に知れる事となるのだ。
親として、それを認める訳にはいかなかった。

その日、貞夫は眠れぬ夜を過ごした。
(あらためて考えると、自分は週に一、二度は店をアイツに任せてるな)
綾乃の仕事は夜からなので、自分が昼間、店に居ない事はしょっちゅうである。
それも、パチンコ屋の定休日前と、明けに集中している。

(となると、次にやつらがやってくるのは明後日か)
枕に顔を埋めながら、そんな事を考える。どうする。
習慣を曲げて、明後日は留守居してみるか。
いや、そうなると娘が怪しむかもしれない。
何せ、普段は嬉々としてパチンコ屋に行くのだから。
かと言って、娘を勝手気ままに犯すような連中を、家に上げたくは無い。

(どうすれば良いのだ・・・)
懊悩する貞夫。だが、いくら悩んでも、良い答えが浮かんでこなかった。
そうしているうちに東の空が白んで来て、朝を知らせてくれた。
結局、貞夫は何の解決策も無いまま、過ごすしか無かったのである。

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