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平和な日常 (1)

(やってられねえ)
レジを打つ自分が、時々、すごく嫌になる事がある。
伊東継雄は、作り笑顔を客に振りまきながら思った。

高校を卒業後、このコンビニエンスストアへ勤めだし、すでに一年が経つ。
その間、毎日が同じ事の繰り返しだった。
そのため、刺激が欲しいと切に願うようになっている。
そう、胸が高鳴るような、スリルを。

「継雄さん、なんか元気ありませんね」
店内で漫画本を立ち読みしている少年が、そんな事を言った。
髪を赤く染め、いかにも悪童といった感じだが、何かと継雄を慕ってくれるので、悪い仲ではない。
少年の名は、工藤といった。
「退屈なんだよ。いいなあ、お前ら中学生は学校があって」
「そうでもないんスけど・・・まあ、継雄さん、彼女がいないから、たまってるんじゃ?」
「殴るぞ、このガキ・・・おっと、お客さんだ。いらっしゃいませ」
入り口の方を見ると、若い女が立っていた。
それに気がつくと、継雄は露骨に嫌な顔をする。

「よっ、ちゃんと勤労してるかね、青年よ」
女はレジの前へ歩み寄り、継雄に向かって親しげに話し掛けた。
「ここには来るなって、言ってあるだろ?勘弁してくれよ」
「何よ、せっかく見に来てやったのに、その言い草は」
二人のやりとりを、工藤は呆気に取られて見ていた。
それは、女が目も覚めるほどの美女であった事が、原因である。
三枚目の継雄には、大よそ似つかわしくない美貌の持ち主なのだ。

「店番って、あんた一人なの?普通、二人一組じゃないの?」
「表向きはそうだけど、勤務時間の関係で一人になる時が結構あるんだ。
なあ、何も買わないんだったら、帰ってくれないか」
継雄のつれない態度を見て、工藤が前へ出た。

「継雄さん、この美人、誰ですか?紹介してくださいよ」
「あら、美人だって。なに、この行儀の良い子は」
女が微笑むと、継雄は忌々しげに、
「俺の姉ちゃんだよ」
と、言った。

「ああ、お姉さんだったのか。納得」
「どういう意味だ、こいつ」
「たぶん、私をあんたの彼女と思ったけど、そうじゃないんで安心した・・・ってとこかしら」
「そうです。お姉さんは、鋭い」
「ふふっ、誉めてくれてありがとう。お礼に、敦子さんって呼んでいいわよ」

髪をかきあげつつ、敦子は流し目を工藤にくれてやった。
香水がふんわりと漂い、大人の女の匂いが少年の鼻を突く。
「しかし、似てませんねえ、継雄さんと敦子さん」
「でしょう?良く言われるのよ」
工藤が持ち上げると、敦子はすぐさまいい調子になった。
つれない弟の態度に比べると、こちらの方はずいぶん可愛げがあるので、そうならざるを得ないのだろう。
五分もしないうちに、二人はすっかり打ち解けてしまった。

「お姉さん、これからどうするんです?何か予定でも」
「別に。ビールでも買って帰ろうと思ってたトコ。
ついでに、この子をからかいにきただけ」
敦子がそう言って指を差すので、継雄は不機嫌そうに口を結んだ。
もう、何も言わないつもりだった。次の瞬間、工藤の目が怪しく光った。

「じゃあ、お姉さん。俺と酒盛りしませんか?」
「君と?え~と・・・」
「俺、工藤です」
「工藤君か。ちょっと、あなたお酒飲める年なの?」
「えへへ・・・年はともかくとして、酒は飲めます」
「未成年って事ね?それは、まずいなあ」

工藤の態度は、何とか敦子に取り入ろうとする風である。
もっとも、二十歳を過ぎた女が、
中学生をまともに相手にしては始まらぬので、敦子の方ものらりくらりと答えをはぐらかしている。

「第一、どこで飲むの?中学生連れて、入れる店なんてないわよ」
「ここで飲むというのは?奥に控え室があるし、お酒もおつまみも売ってるし」
「あ、それは良いアイデアね」
「そうでしょう?」
二人は揃って、継雄の方を見た。
本来、従業員以外はレジより奥へ入ってはいけない。
もし違反すれば、多大なペナルティが課せられ、ともすれば解雇にされかねないのだ。


しかし、普段から慕われている工藤に、
「ねえ継雄さん、お願いします。奥の部屋、貸してもらえませんか?」
と、乞われれば、嫌とも言えなかった。
どうせ、勤務時間はたっぷり二時間は残っているので、仕事が終われば姉と一緒に帰宅すれば良いという考えもある。

なので、継雄は工藤の顔を見ずに、
「奥の部屋以外は入るなよ」
と、釘をさし、商品の前出しを始める事にした。
幸い、今は客足が途絶える時間である。
金を扱う金庫は床下に設えられ、盗難の心配も無いので、部屋は貸してやっても良かった。

「やった。さすが継雄さん。話が分かるなあ」
「じゃ、さっそくビールを買いますか。工藤君、好きなお菓子とかある?」
「あ、俺、何でも食べます」
「つくづく良い子ね。どこかの誰かさんとは、えらい違いね」
敦子はふふ、と目の前の弟を笑い、工藤と共に飲食物の物色を始める。
一人、蚊帳の外の継雄だが、二人が仲良さそうにする姿を、特に何とも思わずに眺めていた。

「それじゃあ、奥の部屋借りるわよ」
「ああ。汚すなよ」
「分かってますって、継雄さん」
ここは比較的、古い店舗という事もあり、スタッフルームは宿泊を前提とした造りになって
いる。敦子と工藤は肩を並べ、その中へ消えていった。
折から外は雨模様になり、継雄は傘立てを店の前へ設置した。

一時間ほどすると、大学生のアルバイトが店に入った。
年は継雄と同じだが、職場では先輩、後輩の関係なので、いつも敬語を使っていた。

「継雄さん、奥の部屋に誰かいるんですか?」
「あ、俺の姉貴が居るんだ。勤務が終わったら、一緒に帰るよ」
「一人じゃないみたいですね」
「友達連れてるんだ。ごめん、本部には黙っててくれよ」
「分かってます」

このアルバイトも、本来は廃棄するはずの期限切れの弁当などを勝手に失敬しているので、
奥の部屋の事に関しては、特に気にしない様子だった。
だが、継雄は悪い予感がしてならない。何か胸騒ぎがするのだ。

さらに三十分もした頃、いつも工藤とつるんでいる少年が二人、店に現れた。
彼らも、継雄を慕う中学生である。
「チース、継雄さん。俺たち、工藤に呼ばれて・・・奥、いいですか?」
「おう。あまり、派手に騒ぐなよ」
「ういっす」
子供相手に、一端の顔役を気取る訳ではないが、やはり継雄は彼らを部屋に通してしまった。
その様子を、アルバイトの青年は怪訝そうに見つめる。

「奥、静かですね。まあ、騒がれたらまずいんですけど」
「ちょっと、見てくる」
アルバイトに背を押された形だが、継雄はようやく重い腰を上げた。
姉の敦子一人に、少年が三人。
その上、酒が入ればもっと騒いでもいいはずなのだが、奥の部屋は妙に静まり返っている。
継雄ははやる心をおさえつつ、暗いバックヤードを進む。

「おい、早く代われよ」
「急かすなって」
部屋の前まで来ると、少年たちの声が聞こえてきた。扉が少し開いており、
そこから中の様子が窺えそうなので、継雄はそっとその隙間に顔を寄せた。すると──

(あっ!)
六畳ほどの和室に、一枚の敷布団。その上に、素っ裸の敦子がいた。
そして、大きく開いた足の間に、ズボンを下ろした少年が割って入っているではないか。
継雄は目を見開き、体を硬直させた。
「おおっ・・・チンポが蕩けそうだ。やった、脱童貞!」
敦子の女は少年の肉棒を根元まで飲み込み、白く濁った粘液を垂らしている。
それなのに、喘ぎ声ひとつ聞こえてこなかった。

(寝てる・・・酔っ払って寝てるんだ!)
良く見ると、敦子は泥酔して寝入っているようだった。
その隣には、下半身丸出しの工藤がタバコを吸いながら、にやついている。

「良かったなあ、お前ら。こんな美人で童貞捨てられて。俺に感謝しろよ」
「良くやった、工藤。うう・・・オマンコって、こんなに気持ち良いんだ・・・」
敦子に乗っている少年は、腰を二、三回も振ると、全身を戦慄かせて果てた。
すると、脇に控えていたもう一人の少年が、ズボンを下ろしてその後に狙いをつける。

「終わったんなら、代わってくれよ。俺、もうチンポが爆発しそうなんだ」
「せかすなって・・・全部、搾り出してからだ・・・ウッ!」
少年が肉棒を抜くと、敦子の女からドロリと子種が逆流した。
少年特有の、濃い精子である。
「思わず中に出したけど、妊娠しないかな」
「大丈夫じゃねーの?ま、俺らには関係ないじゃん。気にせず、町田と代わってやれよ」
「やっと俺の出番か」
町田と呼ばれた少年は、子種を逆流させる女の中へ、問答無用に肉棒を突き入れた。
その瞬間、敦子はうっと唸ったが、目を覚ます事は無かった。

「ああ・・・あ~・・・オ、オマンコって・・・良いなァ・・・」
「柴崎の精子が残ってても、良いもんかな?」
「まあ、やっちゃえば一緒って事で。俺たち、穴兄弟って訳だし」
何という事か。工藤を始めとして、柴崎、町田と、三人の少年に敦子は犯されているのだ。
しかも、本人の同意は無く、酒に酔っての話である。
この様を見て、継雄は血を逆流させんばかりに怒った。

(あいつら、ぶっ殺してやる!)
そう思って近くにあったモップを持ったが、継雄の足は動かなかった。果たして、中学生と
はいえ、三人も向こうに回して戦えるだろうか。もし、負けたらどうなるのか。そんな考えが
頭の中に浮かぶのである。

武道の心得がある訳ではない。
部屋の中へ飛び込んで行き、三人を叩き伏せる自信はあるのかと自問すれば、継雄の体はぴくりとも動かなかった。
「おお~・・・俺も中出しだ。ウウッ!」
そうしている内に、三人目も敦子の胎内で果てた。
それを知り、継雄の足は店へと向いた。
そして、無理に笑顔を作って、レジに戻った。

「継雄さん、どうでした?奥の部屋は」
「テレビ見てたよ。ハハハ、あいつらガキだなァ」
心苦しい嘘だった。
敦子は──姉は正体を無くして、少年三人に犯されていたではないか。
更に自分はその姉を見捨てて、ここへ戻って来たのだ。笑っている場合ではない。

それから五分ほどして、少年たちが奥から出てきた。
当たり前だが、三人ともきちんと服を着て、継雄に向かって頭を下げた。
「それじゃあ、俺たち帰ります。ありがとうございました」
しれっとした顔で言う工藤。だが継雄はつとめて冷静に振舞った。
「姉ちゃんは?」
「少し遅れてきます。まだお酒が残ってるみたいで・・・」
会話の最中に、敦子も奥から出てきた。
先ほど継雄が見た素っ裸ではなく、もちろん服を着ている。

「姉ちゃん・・・俺、もうすぐ仕事終わるから、一緒に帰ろう」
「あ・・・ごめん。私、ちょっと用事できちゃって。あんた、一人で帰って」
ふらつく足で、敦子は少年たちの後についていく。まだ酒が抜けていないようだ。

「姉ちゃん!」
継雄が叫んでも、敦子は振り向きもせず、ひらひらと手を振った。
そして、工藤たちと共に、雨の中を家とは違う方向へ歩いて行った。

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