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その男、昏睡中につき(2)

俺は村上と約束の日に会ってヴィトンのバッグではなくて
伊勢丹でコムサ・デ・モードのスーツとワンピースを買わされた。
金額的には10万円程度だった。ヴィトンのバッグよりは安上がりだと思った。
俺はかなりやけくそになっていた。鶏がらカラスのような村上の体型には
コムサのスーツがよく似合っていた。
「これで色が白かったらちっとはかわいく見えるかもな」
俺はそんなことをふと思っていた。
村上はでっかいバッグにワンピース、スーツに合わせたシャツと
スーツの上着を入れてもらい(パンツは直しに出した)非常に
上機嫌だった。


俺はこの時かなりやけになっていた。
山本には無視される、英子の部屋の合鍵は使えなくなっている。
当然、英子の携帯は非通知はもちろん俺の自宅、俺の携帯、公衆電話からの
着信を拒否設定しているようだった。
そんなこともあり、俺は上機嫌の村上を歌舞伎町裏のホテル街に連れ込んだ。



そこで、今度は本当に村上とやってしまった。
今度はさすがになかだしはしなかったがなまはめのフィニッシュは腹射だった。

ついに、俺はこれで名実ともに村上の彼氏になっちまったのかな。
そう思うとかなり鬱だった。
顔は不細工で色黒、鶏がらみたいに痩せていて乳はおそらくAカップで乳首も黒い。
なんだか骨ばっていて抱きごこちもよくない。これで性格も悪いと着たらいいところは
何もなかった・・・
そういったら少々言いすぎだが、村上にもいい点は一つだけあった。
頭だけは非常によかった。



村上の協力のおかげで卒論の下準備は完璧だった。
資料もばっちり。構想にも相談に乗ってくれた。
夏休みの間にもう十分準備はできてしまった。
あとは執筆するだけだった。
夏休みの間にゼミの飲み会や自主研究会で俺と村上が仲良くしているのを
ゼミの中間達はみているので、山本が夏休みの間に一度も顔を見せないのは
俺と村上ができてしまってそれがショックだからだと皆は思っているようだった。



この時点までだと、俺が山本の彼女を寝取った話ということになっている。
事実、俺は伊勢丹での買い物帰りに俺の意思で村上をやっちまった。
確かに山本の彼女を寝取っている。別荘での事件でも確かに山本の彼女を寝取っている。
それに、大嫌いだった村上にもだんだんと情も湧きつつあった。
しかし、あいかわらず、英子に対する愛が失われたわけではなかった。
所詮、村上とやったのはやけになっていたわけだし、コムサの服を買ってやったんだから
それくらいしても罪にはならんだろうという軽い気持ちだった。

そして夏休みも明けてついに後期が始まった。
4年になると授業はほとんどない。
必修の課目が数科目あるだけであとはゼミがあるくらいだ。
1週間のうち学校に行くのは2日くらいだ。
しかし、俺のゼミは割と自主研究が多くて週に4日間くらい学校に行く事もあった。


あいかわらず山本は自主ゼミには出なかったがゼミには出席してきた。

俺は、ゼミが終わると真っ先に山本の下へ駆け寄った。
「話したい事があるから頼むからきいてくれ」
「お前とはもう口をききたくない」
「お前の気持ちは凄く分かる、どんなに謝っても許してもらえるとは思わないが
謝らずにはいられない」
「じゃ、勝手に謝ってろよ」
山本は冷ややかに言った。
「しかも、お前は村上とよろしくやってるみたいじゃねぇかよ」
「・・・」
俺は二の句も次げずにいた。


「違うんだ・・・」
「何が違うんだよ、お前の顔など二度と見たくない」
山本はそういうと部屋を出て行った。
「もう、山本なんか放っておきなよ」
村上は俺の腕をつかむとそう言った。
他のゼミ生たちは好奇の目で俺たちのことを見ていたのが気になったので
俺は村上の手を振り解いて山本の後を追った。
村上が何か言っていたが俺は何も聞いていなかった。

俺は山本が階段を下りているところで奴に追いついた。
「頼むから聞くだけでも聞いて欲しい」
「忙しいんだよ」
「殴りたければ好きなだけ殴ってもいい、だから俺の話を聞いて欲しい」
「俺は忙しいし、お前の事など殴る価値もない」
「お前の気持ちは分かるが頼むから聞いて欲しい」


俺があまりにもしつこいから奴もとうとうじゃ、歩きながら話せよといってくれた。
俺は、まず、あの別荘での事件の事から話し始めた。
モノポリーをやりながら飲んでいるうちに急に眠くなったので眠気覚ましに
デッキで潮風にあたりながらタバコでも吸おうとした。
タバコをくわえながらデッキチェアーに腰掛けたとこまでは覚えているがその後は全く記憶にない。
何故、そこから2階の部屋に行ったのかも覚えていないと。不思議でしょうがないと。
1日目も何故、いつのまにかに部屋に帰ったのか覚えていないと。


「一日目はお前が酷く酔っ払って、同じく酔った英子をお前が抱えて部屋に行ったんだよ」
山本は面白くなさそうにそう言い放った・・・
英子?こいつ、何故、俺の英子の事を呼び捨てにしてやがんだ???
俺は少々というかかなりむかついたが、その後の事も奴に聞いた。
「2日目はデッキチェアーでお前が寝ちまったから、俺と村上でお前の事
2階まで運んだんだよ」
「その後はしばらく3人で飲んでいたんだけれどもいつのまにか俺たちも寝ちまって
気がついたら俺と英子だけがリビングでひっくり返って寝ていた。俺は嫌な予感がして
2階に上がったら思ったとおり真っ裸でお前らが寝ていたんだ」


「ちょっと待ってくれよ、俺が先につぶれて寝ていて、村上が俺の寝床に
忍び込んだという事は考えられないか?」
俺は何とかならないかとよく考えずに軽口をたたいてしまった。
「お前は、ここまできてまだしらばっくれるつもりかよ!」
「お前はお前の部屋に寝かしたんだよ。ちゃんと服も着てた」
「だが、翌朝お前は真っ裸で隣の俺らが寝る部屋にいたんだよ」
「どう考えてもお前が村上の寝ている横に忍び込んだとしか思えないだろ」
山本の怒りは本気のようだった。


「ごめん、本当に申し訳ないことをした」
「お前は村上とよろしくやってんじゃねぇか」
「イヤ、そんなつもりじゃないんだ。お前と村上の間をとりなおしてやるから
頼むから許してくれ」
「いまさらあんな女とやり直す気は毛頭ない」
「そんなこというなよ、あいつ、頭はいいし、卒論とか手伝ってもらえるじゃんか」
「俺はお前と違って卒論なんて既に終わってんだよ、まぁ村上には手伝ってもらったがな」
「そうだろ、村上がいればいい論文がかけるよな。卒試も教えてもらえるだろ、考え直せよ」
「お前に汚された女にはもう用はねぇよ」
「・・・」


「お前もしつこい奴だな、俺にはもう新しい女ができたんだよ」
「・・・」
俺はこの時非常に嫌な予感がした。
まさか・・・
「・・・お前、まさか、え、英子と付き合ってんじゃないだろうな」
「そのとおりだよ、お前にはもう関係のない話だがな・・・」
「ちょっと待てよ、いくらなんでもそりゃないんじゃないか?
お前は俺の一番の友達だと思ってんのにお前、よくそんな事できるな」
「何言ってんだか」


この時の衝撃はかなり酷かった。
しかし、言う事は全て山本のほうがまともだった。
確かに、俺の方が山本の彼女に手を出した。
しかも英子と一つ屋根の下で過ごしていたにもかかわらず・・・
当然、その現場にも山本もいた。
お互い裏切られたもの同士、かなり落ち込んだ状態で車で行動を
ともにしていたらそういう関係になるのも無理はない。
俺に山本を批判する権利などなかった。
しかも、その後、俺は自分の意志で村上と寝ている。



「何言ってんだか」
山本のこのセリフはかなり堪えた。
俺はバカかもしれない。
自分の事ばかり考えていた。
英子の気持ちも山本の気持ちも考えていなかった。
英子にしてみれば自分の彼氏が自分というものがありながら
しかも同じ空間にいたのに他の女と真っ裸で寝ている姿を見たのだ、
ショックはかなりでかかっただろう。

山本も信じていた自分の親友に彼女を寝取られたのだ。怒って当然だ。
それをどの面下げて彼女との仲を取り直してくれと頼めるのだろうか・・・
しかも、山本と英子が付き合っているとは・・・
俺は悲嘆にくれた。英子とはここのところものすごく親密になってきたし
卒業して仕事にも慣れたら婚約してもいいなぁとか思ったりしていた。
山本とは卒業後も一生付き合える友達だと思っていた。


俺はこのままかけがえのないものを二つ同時に失うのは我慢できなかった。
「二兎を追うものは一兎も得ず」俺はこの時点で英子の事はきっぱりと諦めて
山本との付き合いを大事にしたいと思った。
「山本、本当に許してくれ。俺は、英子の事はきっぱりと諦める。
英子にも本当に申し訳のないことをしたと伝えて欲しい」
「・・・」今度は山本が無言になった。
「俺は、女のことで山本との友情をこわしたくない。村上に手を出した
俺が言うのもずうずうしい話だが、俺のことを許して欲しい」
「お前・・・」
さすがに山本も言葉が出なかった。
「ずうずうしいにもほどがあるぞ・・・」
山本はやっとのことでそう口にした。
「分かっている。本当にずうずうしいと思う、でも、お前との友情を
こわしたくない。英子とお前の事も心から祝福したい」
「お前・・・なんて奴だ!」


「何が祝福だ!」
山本は顔を真っ赤にして怒り出した。
「お前は自分が何をしたか分かってないようだな」
「気に障ったなら勘弁してくれ」
俺はとにかく謝るしかなかった。
こびへつらってでも山本との友情は壊したくなかった。

「許す許さないの問題じゃないんだよ」
「俺がゼミ生の間でなんて呼ばれているかお前知ってんのかよ」
山本は瞬く間もないくらい早口でまくし立てた。
「負け犬とか寝取られとか捨てられ君とか言われてんだよ」
「皆、別荘での事件を知らないから、俺が村上に捨てられたとしか思われてないんだよ」
どうやら山本は村上に捨てられたと思われているようだった。
確かに、事情を知らない奴らから見ると村上が俺に乗り換えたくらいに思えるだろう。


俺と山本を比べると成績はどっこいどっこいだけれども、教授受けは俺のほうがいいし
俺の自宅は都内のまぁ、割と高級な部類に入る住宅街だが奴の自宅ははっきり言って
郊外は郊外でも本当の田舎だ。いわゆるチバラギ。容姿も俺のほうが勝っている。
そんな奴が誇れるのは奴のまめまめしく動き回るところと誠実な人柄。
いわゆる「いい人」であった。裏を返せば「毒にも苦にもならない男」。
面白みにはかける。しかし、俺は奴にはいろいろと借りがあった。
これからも奴には世話になりたいと思っている。

奴はあらゆる条件で俺にコンプレックスを抱いていたのかもしれない。
今考えてみると、奴も、友人の女遊びのアリバイに使われたり等、
やつのプライドを今まで踏みにじってきたのかもしれない。
俺は、そんな自分勝手な自分に嫌気がさした。
「頼む、許して欲しい」
俺は、はじめて屈辱感に満ち満ちて奴に許しを乞った・・・


「お前、マジで謝っているのか?」
山本は俺が涙目になって謝っているのを見て少々戸惑っているように見えた。
「お前が俺に何でそんなに謝るんだよ」
奴はだんだんしどろもどろになってきた。
物凄く挙動不審に見える。
しかし、俺はかまわず続けた。
「村上との事は本当に申し訳ない」
「お前の気のすむような幕を引くつもりだ」
俺は山本のご機嫌を取るように続けざまに言った。
「お前が気のすむようにする、だから俺たちの関係も元に戻したい。
今すぐという訳じゃない。あんなことがあったんだ。
時間をかけて元に戻したいと思っている」


「お、お前、何で、俺なんかに・・・」
山本は目をきょろきょろさせてせわしなくハンカチで汗を拭いたり
めがねのレンズを拭ったりしている。
こいつは何故、急に落ち着きがなくなったのだろうか?
俺には分からなかった。
言葉もどもり気味になってきている。
「お、お前の気持ちはわわ分かったよ、そこまで言うならちちちちと考えてみるよ」
いよいよ山本の挙動は不審になってきた。
周りの人たちも俺たちのことを訝しそうに見ているのが分かった。
「ととととにかく、これくらいにしてくれよ」
「よかったらどこかでもっと話せないか?」
「お、お前も知ってんだろ。おおお俺の家は遠いんだよ」
「すまん、でも、まだ時間も早いし、いいじゃないか」
「だダメだっつて言ってんだろ」
「しつけぇよ」
山本はそう言うとまだ人もまだらな駅の改札へと消えていった。


「あいつ、何をあんなに慌ててんだ?変な奴だな」
「しかし、英子とあいつじゃ釣り合いがとれねぇよな」
「とりあえず、奴を手なずけておけば後は何とかなるだろ」
俺はそんなことをひとりごちていた。
奴が挙動不審になっていくうちに俺は落ち着きを取り戻し、
しおらしい気持ちもいつしか失せていた。
再び、山本を使って英子とやり直ししたいと思うようになっていた。
俺はマイルドセブンを取り出し一服した。
にやりと笑いながら煙をゆっくりと吐き出した。
「話は終わったの?」
後からいきなり肩をたたかれて心臓が止まるほどびっくりした。
後には村上が立っていた。
「今更山本に謝って何してんのよ」
「男には男の事情ってもんがあんだよ。お前には関係ねぇよ」
俺は冷たくそう言った。
「何よーもうー」村上はじゃれ付くように俺の頭をぽこぽこたたいた。


俺と村上はまるで俺の悪巧みを知らない奴が見たら仲のいいほほえましい
カップルにしか見えないかもしれない。
俺自身もそう思うくらい感じがよかった。
そこに、同じゼミの奴が来て
「お前らこのくそ暑いのにいちゃいちゃすんなよ。
見てるこっちが暑くなるよ」
とかなんとか言ってからかってい言った。
「おいおい、そんなんじゃねぇよ」
俺はそいつに向かって言った。

「いいじゃーん」そう言うと村上は俺の腕にしがみついた。
「ひゅーひゅー」やつらはそんなことをいいながら改札に向かっていった。
「じゃーなー」
「おう、じゃ次の発表はお前だからな」
「いちゃつきすぎてレジュメ作れなかったなんて言い訳するなよ」
「うっせーよ、早く帰れよ」俺は奴らに向かってそう言った。


「ねぇケンタにでもよってなんか食べていこうよ~」
「しょうがねぇな、じゃ、行くか」
俺たち2人は誰がどう見ようと完璧に仲のいいカップルのようにしか見えなかった。
大学からの帰り道でこんなことしていれば当然、皆に見られるのは分かっていたはずだった。
しかし、俺は山本を使い英子と仲直り、できれば元鞘に収まる方法を画策していたので
そこまで頭が回らなかった。

そう、俺と村上がいちゃつくのを英子は見ていた。
そんな英子に俺は全く気がつかなかった。

もちろん、このことは後で知ったことだが・・・

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