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大きなもみの木の上で(その6)

8月5日 (晴れ)

今日は亮くんと万理子ちゃんと渡部さんと4人で
遊びに行きました。
みんなで泳ぎました。
魚を取って、焼いて食べました。
とてもおいしかったです。

「はい、終了」
僕は夏休みの宿題の一つである絵日記を書き終え、
大きく伸びをした。

出発まであと1時間。
遊び疲れた状態で宿題なんてやる気が起きるわけが無い。
だから前もってやっつけたのだ。

「さて、そろそろ支度するかな」
僕は昨晩用意したナップサックを押入れから引っ張り出した。
この中には、今日を楽しむ為の小道具が色々入っているのだ。

これら駆使して万理子と急接近を果たす。
ぶっちゃけそれが今日の僕の主たる目的なのだが。


約束の時間のきっかり10分前に僕は万理子の家に到着した。
既に亮と万理子はもみの木前に集合している。
久しぶりに見る万理子の姿に僕の胸は高鳴った。

「おーい、亮、万理子ちゃーん!」
「おー健二ー!久しぶりだなー」
「健二くん、一週間ぶりだね。遊びにこなかったから心配したよ」
「ごめんごめん。ちょっと用事でね」

今日の為に奔走したこの1週間、僕は二人と全く顔を合わせていない。
その間、色々な変化が二人にはあったようだ。

亮はいつもに増して日焼けの度合いがアップしていた。
ま、休み明け3日前まで毎日遊びまわるって二学期に行ってたしな。

万里子は少し髪を切ったらしく、両のおさげが少し小さくなっていた。
そんなおさげがちょっと横にはねているのが何とも可愛らしい。


そして…あれ?

何故か、二人とも同じ柄のTシャツを、着ている…?

何だ、これは……?


「あれ、そのシャツカッコいいね。どうしたの?」
僕はさりげなく(?)そのことを亮に尋ねてみた。
「これか? 昨日ウニバーシャルシティに遊びに行ってさ。そん時に買ったんだ」
「万理子ちゃんも?」
「私は亮くんにおみやげでもらったの」
「そうなんだ」
「心配すんな。健二の分もちゃーんとあるぞ」
そう言って亮は自分の鞄から同じ柄のシャツを取り出し、僕に渡した。
「これで分身の術ゴッコができるな!」
などと喜ぶ亮だったが、僕はとりあえずは着ずに貰っておくだけにした。

(3人同じ柄のシャツで行ったら、渡部さんが仲間はずれになっちゃうな…)

そんなことを考えての行動だ。

僕は何で彼女に気をつかっているんだろう。

水泳部の渡部沙希さん。
3日前に知り合いになったばかりだ。
僕にとっては今日のセッティングを引き受けてくれた恩人。
だが、「僕ら」にとっては今回かぎりのゲストにすぎないのに。
どうして僕は…



電車、バス、徒歩と重ねること2時間半。
僕らは目的の場所に辿り着いた。

「見ろよ亮! 水が透明だぞ!!」
恐ろしく透明度の高い水。かなり深い所でも底まで見えている。
「…そうだな」

「ほらほら万理子ちゃん! 魚がいっぱいいるよ!」
じっと水面を凝らして見ると、魚の群れがあちこちに。手ですくいとれそうな位だ。
「そ、そうだね」

「そして、周りには誰もいないぞ!」
「……」
「……」
あまりのイメージどおりの風景にはしゃぐ僕に対して、二人は何故か冷めているご様子。

「あれ、みんなどったの?」
そんなところに、別行動の渡部さんが遅れてやってきた。

「凄いでしょ。 こんな水が綺麗で、魚がいっぱいで、人がいない川なんて滅多に無いよ」

……
そうなのだ。
渡部さんが紹介してくれた穴場、そこはとある山中を流れる川だった……


「わははは、冷ーめーてー!」
「きゃあっ、水飲んじゃった!」

大いにはしゃぐ亮と、その横で水と戯れる万理子。
ピンクのフリルのワンピース型の水着が良く似合っていた。
彼女は(ピンク+フリル)の組み合わせが好きなようだ。
そんな様子を、僕はその様子を少し小高い岩場から眺めていた。

そして僕の隣には、何故か渡部さんが。

「やれやれ…何とか納得してくれたな」
「説明するの、大変だったよねぇー」
「ごめんね渡部さん。世話かけちゃって」
「アッハハハ、藤井くんの言ってたような海なんて、今時ある訳無いじゃない」
さもおかしそうに笑う渡部さん。

彼女には、僕が口から出まかせを言って困っていることを話していた。
何も説明しないままで協力を求めるのは難しいと思ったからだ。

そんな僕に呆れもせず、渡部さんは他人には秘密にしていたこの川を紹介してくれた。
「海」でないこと意外、全て僕の要望に合致しているこの川を。
本当ならいくら感謝してもし足りない位だ。
なのに僕は、横にいるのが彼女であることに不満を持っていた。


「でもゴメンね。海じゃなくって」
「そ、そんなこと! 十分すぎるくらいだよ!」
「アタシがたまに練習にいくのって、この川くらいしかなくてね」
そう言って渡部さんはぺろっと舌をだしてはにかんだ。
「……」
「あ、あのね…」
「え?」
「アタシの水着姿…どうかな?」
しばしの間を感じ取ったのか、渡部さんは強引に話題を変えてきた。
くいっ、と頭に手を当て、胸元を見せつけるかのように、ポーズを作る。
が、お世辞にも胸があるとはいえない彼女に、今日着ている白のビキニは少し無理があった。
「ああ、似合ってるよ」
「ホント?」
「うん。セクシーだよ」
心にもないことを言う。
が、
「う、嬉しいな… 藤井くんにそう言ってもらえるなんて…」
彼女は顔をこれ以上無い位ほころばせた。
そんな彼女から漂ってくる香り。
出来立てのチーズのような万理子のそれとは違い、何と言うか…日なたの香りがした。


「おーい、二人とも泳ごうぜー!」
向こうから亮が僕らを呼ぶ。
丁度いい。これをきっかけに河岸を変えよう。
「行こっ、藤井くん!」
と思っていた僕の手を渡部さんが取る。
ぎゅっ、と握られた手の感触を、僕はその時いいな、って思ってしまった。
(万理子の手もこんなに柔らかいのかな…)
同時にそんなことも考えていたりした。


「すごいすごい! こんなにいっぱい!」
籠の中には計5匹のイワナ(だろう)。
それを見た万理子が感嘆の声をあげた。
この日のために研究を重ねた仕掛けは大成功。
その後、みんなが満足するくらいの魚を捉えることができのだった。

ふふふ、ここまでは作戦通り。本番はこれからだ。


「で、これからどーする?」
食事を終えた亮がそんなことを切り出してきた。
「ちょっとふやけてきたしね」
万理子も泳ぎにはそろそろ飽きてきている様子だ。

「じゃあさ、少し山の中を探検に行かない?」
そこで僕はそんなことを切り出した。
先に渡部さんから聞きだしている山の中の色々なスポット。
そこへみんなを案内するつもりなのだ。

「さんせーい!」
真っ先に手を上げたのは渡部さんだった。
「お、いいな。そうするか」
「う、うん。 ちょっと怖いけど」
みんなも概ね賛成らしい。
ならばここで作戦開始だ!

「じゃあさ、こういうのはどう?
 くじ引きでペアを作って、目的地まで競争するってのは」

「あ、それ面白そう」
意外にも万理子がのって来てくれた。
「いいぜ。負けないからな」
「アタシだって」
亮を渡部さんもやる気まんまんだ。
そこで僕はかねてより用意していたモノをサックから取り出した。

それは、ティッシュをこよって作った、4本の紐。
実はこれにはちょっとした仕掛けがしてあり、
どう引いても僕と万理子がペアになるようになっているのだ。


「じゃあ、このくじで…」
「最初はーーーーグーーーーー!」
唐突な亮の掛け声。
え?
じゃんけん?
「じゃんけん、ほいっ!」
みんなが同時に手を出す。

僕:チョキ
亮:グー
万理子:パー
渡部さん:グー

あ、あれ?

「おい健二。組を作るときはグーとパーだろ」
「そうだよ健二くん」
「ゴ、ゴメン」
思わず僕は謝ってしまった。
って、違う!僕はこのクジを…
「よーし、も一回いくぞ。じゃんけん、ほいっ!」


みんなが同時に手を出す。

僕:グー
亮:パー
万理子:パー
渡部さん:グー

「よーし、んじゃ行くか!」
「渡部さん、目的地はあの山のてっぺんでいいんだよね?」
「うん。そうそう」

あれよあれよと言う間にことが進み、
気が付けば、亮と万理子はさっさと出発してしまっていた。
で、僕と渡部さんは取り残されてしまう。
あ、あれ?あれれ?
「さ、私達も早く行こ」
そう言ってまたもや渡部さんは僕の手を取ってきた。
「この山はアタシの庭みたいなものだから、絶対勝てるからね!」
頼もしい渡部さんの言葉。だが、それも僕の耳には届かない。

何が間違っていたんだろう?
こんなはずじゃなかったのに。

僕はこの後、そのことを嫌という程思い知るのだった。


ぎらぎらと照りつける夏の日差しを、山道に多い繁る木々の枝葉が優しく散らしてくれる。

「ほらほら藤井君、あの花すっごく綺麗だよ!」
目に映る全てを堪能しながら渡部さんが歩く。
渡部さんは水着の上から濡れるのも気にせず、Tシャツとジーンズを羽織っていた。
彼女曰く、
「すぐ乾くしね」
とのことである。

そんな彼女の少し後ろを、僕は死んだ魚の目をしてついていっていた。

(何で、僕はこうなのだろう)
(僕が仲良くしたいのは、渡部さんじゃなくて万里子なのに)

僕を慕ってくれている渡部さんには悪いけど、僕の気持ちは揺るがない。


だって、気付いてしまったから。


初めての出会いで、亮に先に助け舟を出された時、
万里子と亮がお隣同士だと知った時、
二人お揃いのTシャツを着ているのを見た時、
亮が万里子と連れ立って先に山道に入っていった時、

僕は、亮に嫉妬していた。

それは言うまでもなく、僕が万里子を好いているからに他ならない。

その証拠に、万里子の裸を想像するだけで、おちんちんが一瞬で大きくなる。
そして、出しても出してもそれは収まらない。
…僕が、力尽きるまで…

現にほら、今だって、

(ああ…万理子…)

僕は歩きながら、万里子の裸を想像した。

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