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大きなもみの木の上で(その8)

きっと、噛んだのはただのシマヘビか何かなんだろう。
毒蛇だったら、こうして30分近くもあんなことしていられるわけが無い。
万里子は今、アソコのすぐ近くで蠢く亮の口撃に、目いっぱいじらされながら…高ぶっているんだ。

「りょ、亮くん… お願い…ここ…」
「は、話…かけ…な…」
「え…」
「お、俺も何か、変…なんだ…」
「へ、変って…」
「ち、ちんこ…うっ!」

当然亮が体を震わせ、万里子の方に倒れ込んだ。
そしてその口は遂に、万里子の秘所へ…

「う、うああああああああっんっっっ!!」
「く、あああああああっ!!」

ひときわ大きな声で泣く万里子。
そして、聞いたこともないような声を張り上げる亮。
びくんびくんと震え…

二人して腰が砕けたように、へたりこんでしまった。


「あ・・・ああ・・・りょう・・・くん・・・?」

「な、なんか俺・・・いい年こいて・・・もらしちまった・・・」

「おもらし・・・したの?」

「・・・・・・」

「・・・したんだ・・・おもらし」

「た、頼む中村・・・このこと・・・健二には・・・秘密にして・・・」

朦朧としながら亮が懇願する。
亮はおしっこを漏らしたとでも思っているらしい。

――だけど、万里子は知っているだろう。
女の子なら、この年齢の女の子なら、道徳の時間に教わっているはずだから。
亮に、何が起きたのかを――

「…いいよ…」

少し回復したのだろうか。
万里子の口調は前よりもちゃんとしていた。

「私のこと、万里子って…名前で呼んでくれるなら…内緒にしておいてあげるよ」


万里子には、そんなつもりは無かったのだろう。
だが今、万里子は亮に告白と同時にプロポーズもしたのだ。
亮は… 亮なら、自分の言ったことを違えることなんてしない。


『俺、決めてるんだよね』
『女の子を名前で呼ぶのは、将来、お嫁さんにだけだって』


だから…万里子のその言葉は、愛の告白なのだ…

「OK・・・」
僅かな力を振り絞り、亮は万里子に返事をした。

OKだってさ。万理子
亮の奴、付き合うっていってるよ?
しかも、結婚を前提に。

(万里子を噛んだのが、毒蛇じゃなくてよかったなー…)

いらぬ心配、本当にいらぬ心配を、本当に余計心配をしながら、僕はその場を後にした。
とりあえず爆発寸前の股間を開放するために。


泣くのは、それからでいいや。




あれからどう過ごしたのか、というと。

競争は結局僕と渡部さんが勝った。
亮と仲村さんはあまり悔しそうじゃなかったな。

確かスイカも食った。
渡部さんが家からかついできたらしい。
味は…どうだったっけ。

しばらく談笑して3時ごろに片付け、帰途に着いた。
何故か僕と渡部さん、亮と仲村さんの組み合わせで4人座席に座った。
…偶然か?

で、僕は今、自宅のベッドで呆けていたりする訳だが。
「はぁ……」
寝返りをうち、溜息。
じっと壁を見る。
そしていつもの謎かけを繰り返す。

僕の家と万理子の家との距離。…約5分。
亮の家と万理子の家との距離。…約5秒。

この差が意味するものは何なんだろう。

「勝ち目無し…ってことか」
万理子との仲を大逆転させるべく計画した今日この日、僕は謎かけの答えを知った…



「だいたいあまりにも違いすぎるじゃないか!」

ばふん、と枕を殴る。

「亮はあったか料理で、僕は冷めたスープかよ!」
(そんなのはいいがかりだ)

ばふんっっ!
「おそろいのTシャツだって? 見せびらかすんじゃねぇ!」
(亮は僕の分も買ってきてくれただろ?)

ばふんんっっ!!
「今日の為に、どれだけ僕が苦労したか、わかってんのか!」
(結局は全部渡部さんのお膳立て。僕は何か貢献したか?)


「初めての射精が、僕がエロ画像で、亮が万理子の股間に顔を埋めてかよ!!!!!」

ぽ…
…ふ

「……ちくしょう……」


悲しくて泣きたい。
でも情けないので泣けない。
だから寝よう。
眠って眠って、あまりといえばあまりな形で終わった初恋を忘れることにしよう。


8月8日…母の日。
嘘だ。
つまりあれから3日が過ぎていたりする。

「おーーーーっす健二、遊坊主ぅーーーーーー!!」

極寒ギャグにのせて亮が僕を遊びに誘いに来る…そんないつもの光景。

もう平気か?自然に笑えるか?

…自信が無い。
無いから居留守だ…
そんなけっきょく積極的逃避行動を、僕は取ろうとした。

「ちょっと健二。亮君と万理子ちゃん、遊びに来てるわよ」

と思っていたところに姉さんがやってきてそれも叶わず。
そっか、今日は部活休みなんだっけ。
仕方なく僕は重い腰を上げた。


「どうしたんだよ。遅かったじゃん」
「悪い。ちょっと昼寝をね」
「えーっ、健二くん夜更かしでもしたの?」
「ちょっとね。でももう平気だよ」

僕の嘘を見抜くでもなく、二人は心配してくれる。
二人は優しい。
それは疑うまでもなく…優しい。



「へっへー、俺なんか9時には寝てるぜ?」
「亮、それ早すぎ」
「亮くん、それはちょっと早すぎなんじゃ…」
僕と万理子が、揃って亮にツッコミ。
これも、いつもの光景…

「な、何だよ何だよ健二も万理子も! 夜更かしは美容に悪いんだぜっ!」

来た。
ついに聞いてしまった。
亮の寒いギャグのことではない。

『万理子』

確かに今、亮は万理子のことを名前で呼んだ。
それはつまり、

『女の子を名前で呼ぶのは、将来、お嫁さんにだけだって』

この公約が、実行されているということだ。

万理子のほうを見ると、それを聞いて、特に反応は無い。
そこからは、心情を読み取ることはできなかった。

(もう、呼ばれ慣れてしまったのかよ…)

絶望的な気分。
もう…この場にいるのは……嫌だ。


「悪い。今日は僕、パス」
にべもなく言い放つ。
「えっ、何でだよ健二?」
「け、健二くん、どうしたの?」

二人しての攻撃なんて…
もう、
勘弁してよ!

バァン!!

僕は二人の顔も見ず、ドアを叩きつけるように閉めた。
…閉めてしまった…




しばらくドアを叩く音が聞こえたが、やがてそれも聞こえなくなった。

僕は後悔しているのだろうか?
それすらわからなかった。


「ちょっと何よ健二! あんな乱暴にドア閉めて!」
「……」
「健二…?」
怒鳴りにきた姉さんだったが、僕を見て、心配そうに覗きこんできた。

そして…

「…どうしたの?」

ぽふ、と姉さんが僕を優しく抱きしめてくれる。

「二人とケンカでもした?」

優しい言葉。
優しい仕草。
いつもの姉さんじゃないみたいだ。


「…姉さん…」
「ん?」
「う、うわぁぁぁ…姉さぁぁぁん…うわぁぁぁぁぁ……」

情けないと言わないで欲しい。
この悲しさは、本人でないとわからないんだから。

僕は姉さんの胸で、堰が切れたかのように泣き続けた。

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