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動き出した歯車(その17)

私は、先輩の表情を見ながら、ゆっくりとスカートをたくし上げて行く。
やがて、徐々に股間を被う白いものが姿をあらわしていく。
腰まで姿を見せた処で、先輩が私の両腰に手を当て、その白いものをこれまたゆっくりとずり降ろしていった。
すぐに、大事な所が露になる。先輩の鼻先がそこにチョンチョンと当たって、ちょっとくすぐったい。
先輩はなおも、その白い布を押し下げ、足首まで降ろした。

「片足、上げて」

「どうするんですか?」

「ん?こうすれば、無くなる事はないだろ。流石に、女物の下着があっちゃあ、騒ぎになるからね」
そう言うと 先輩は持ち上げた片方の足からパンツをはずすと、半分ひねって、もう片方の足をくぐらせた。
私の股間は、今剥き出し。それを覆っていたパンツが足首に絡まって見えている。
その光景がなんとも淫靡で、興奮させられる。

先輩の指が私の膣内(なか)に入って、グリグリと動き回る。そのたびに『クチュ』と音を立て、汁が私の内腿を伝って零れ落ちた。
もう、こんなに濡れてる。
先輩は指で膣内(なか)かき回しながら、下でクリトリスの辺りを舐めまわす。

「ん……んぁ……ぁぁ」
先輩の舌先がクリトリスの先端を刺激する度に、体中に電流が走る。声が漏れちゃいそう。
いつのまにか、私の手は先輩の頭を私の股間に押し付けていた。
「ぁん……あ…んふ……はぁ……あ…」
抑えようとしても、抑えきれない。漏れ出した声はどんどん大きくなっていく。

「ちょっと香織ちゃん、声が大きい。聞こえちゃうよ」

そうだった。ここは先輩の家じゃない。学校の部室。
本当に誰もいないという保証は無い。それに学校の外に漏れることだってあるんだ。どうしたらいいんだろう。
取りあえず、右手の人差し指を噛んでみる。声が漏れそうになったら、それを強く噛んで、何とか声が漏れる
のを防ぐ。

その間に、何度も体中に快感が走り、体の力が抜けていく。ガクンと膝が折れる。立っていられない。
「ん……く……はぁ……んん……は…ぁあ……んぁ…
いつのまにか腰が、先輩の愛撫に合わせてうねうねと動いていた。私ってこんなにいやらしくなっちゃったんだ。

何度目かの快感の後、一際大きな快感が私の体を貫いた。
「あ、あぁ………あぁぁぁぁぁぁ」
そして私は いった。

体の力が抜け、その場にへたり込む。
「ひぁ?!」
床にこぼれた唾液と愛液のまざりものの上に座った形になる。冷たさと気色の悪さに思わず声をあげた。

「どうしたの?」

先輩がいたずらっ子のような目つきで訊いてくる。もう、知ってるんでしょ。

「え……あの……ちょっと、力が…入らなくて…そしたら、おしりが冷たくって……」

そう言い終わらないうちに、先輩の腕が私の膝を裏から伸び、私は先輩に抱きかかえられた。
丁度、お姫様抱っこの形。先輩の顔が私のすぐ近くにある。恥ずかしくて、ちょっぴり嬉しかった。
先輩は私を抱えたまま、ベンチに座った。私は先輩のお膝の上に抱っこされている。

「それじゃ、いくよ」
そう言って、軽く口付けを交わす。これが私たちのメインの始まりの合図。

先輩は、私の左脚を思い切り持ち上げると、自分の体の右側に回した。
丁度向かい合って抱っこされるような形になる。
私は、両足をベンチにのせ、ベンチの上でしゃがむようにして腰を浮かせられるようにすると、既に臨戦体制
にある先輩の一物を持って私の入り口にあてがい、ゆっくりと体重をかけていく。
「んん…」声が出ちゃいそう。最初に入る瞬間って、とても感じる。
ズブズブと先輩の物が私の膣内に侵入してくる。快感が走る。先輩の物が半分くらい入ったところで、最初左、次いで右とベンチの上にあった足をはずし、先輩の膝の上に自分のお尻を乗っけた。
重力が、先輩の物を私の中のさらに奥へと導いていく。程なくして、先輩の物は全部私の中に飲み込まれてい
った。

もう一度口付けを交わす。今度は舌を絡めて、激しく いやらしく。
先輩は私のブラウスのボタンを一つ二つ外すと、そこから手を入れた。
カップの上から私の胸を揉みしだいていく。後ろのホックを外すまでもなく、カップは上にずれて先端が露に
なる。
すかさず先輩は人差し指と中指の間に乳首を挟むと、両指で乳首を弄びながら、全体を大きく揉み動かした。
だめ……感じる。声がでちゃう。
「んん……んぁぁ…くっ……はぁん」
咄嗟に左の人差し指を強く噛む。その痛みで、なんとか大きな声が出るのが防ぐ。

暫く私の胸を弄んだ後、先輩がストロークを開始した。
私を乗っけている両膝を煽るように上下に動かしていく。それにつられて私の体が上下し、膣内(なか)に入ったピストンが動く。
ストロークは短いものの、速く、リズミカルに動いている。
先輩は、片手は私の胸を揉みしだき、もう片方の腕で私のウエストをしっかりと抱かかえ、結合がが外れない
ように、強く抱きしめていた。

「ん…ん…ん…ぁ…く…ぁぁ」
感じる……気持いい……こんなに気持ちよくなったのって……初めて。

一旦結合を外し、ベンチから離れる。この体位はここで終わり。

「その棚に手をおいて、お尻こっちに向けて」
言われるままに、棚に手を置き、尻を先輩に突き出す。
今度はバックから先輩が侵入してくる。

「はぁ……ぁ……ひぃ」
顔が見えなくて、予想がつかないため、一つ一つの行為に刺激が強まった感じがする。
先輩の手は、一つは私の腰に置いてあり、一つは私の胸を弄くっている。
と同時に、私の膣内(なか)では、先輩の物がピストン運動を繰り返している。
もう…だめ…いっちゃいそう。
先輩もそろそろ、いきそうなのか、ストロークの速度が急ピッチに、激しくなってきた。

「は…は…ぁ…あぁ…あ……いく…いく…いっちゃう」

「はぁ…はぁ…はぁ…いく…いくぞ…で…でる…でる!!!」

二人ともほぼ同時に絶頂に達した様だった。
『ドクッドクッドクッ』
先輩の精液が私の膣内(なか)に注ぎ込まれていく。お腹の中が熱くなる感じがした。

行為の終わりに、もう一度キス、これが終了の合図。
昨日から感じていた、モヤモヤは、すっかり晴れていた。


「ねえ香織ちゃん、本当 何があったの?僕に相談できる事だったら、言って。一緒に解決したいから。それ
とも、言えない事?」

帰り支度の最中、先輩から訊かれた。
これは、私とひろクンとの間の事。今までだったら絶対に先輩には話さなかったと思う。なのに、この日に限っては、話すことが、ごく自然な事のように思えて……私は、昨日の事を、先輩に話した。

「うーん、一学期のころから、ずっとピアノを聴いてもらってたから、そのお礼も兼ねて、彼女を招待したんじゃないかな?」

先輩の答えは、予想に反して、ごく常識的なものだった。

もうちょっと
「それは酷いね、香織ちゃんが可哀相だ」
とか
「そんな奴は、香織ちゃんの恋人の資格無しだ」
なんて事言ってくると思ってたのに……ちょっと寂しい気がする。


「でも、僕だったら どんな事情であれ、香織ちゃんを呼ぶけどね。僕だったら、一番好きな娘に聴いてもら
いたいもの」
その後、遅れてきた答えに、パッと明かりが点いたように嬉しさを感じ、暫く後に、その意味にハッとした。
もし、それが普通の考えなら、それは……

私の中に、ある種の諦めのような感じが沸き出ていた。
やっぱり私、……ひろクンとはだんだん、遠くなっていってる。
何となく釈然としない、納得のいかないものを感じたものの、頭の中では、『それはそれでしょうがない』と自分自身に言い聞かせていた。


自分がアイツにしてきた事、今の私とアイツ、私と先輩の関係を考えれば、アイツが他にガールフレンドを作
ったとしても、それは当然のことだから。
お互い、他に異性の友達を持ちながらの付き合いになっても仕方の無い事だと思った。


私は、自分の本当の気持に気付いていない。
そして、自分の覚悟が頭の中の薄っぺらい思考回路から出てきたとても甘っちょろいものだった事を、結末が自分にとってどんなに辛いものかを思い知らされる事になる。


私の目の前にある、大きな背中。
硬くて、ごつごつして、でも暖かくて優しい背中。
私は よく この背中に寄りかかって、青空や星を見上げていた。
この背中は、私を乗っけて 長い道のりを 時にはよろめきながら歩いた。何度も、何度も。
その背中は、私が求めるとき、いつも側に居た.。そして、嫌な顔一つせず私を乗せて私の望む場所に運んでくれた。
私にとって、大切な背中。かけがいの無い宝物。
その背中が、私にさよならを告げようとしている。

ダメ!行っちゃヤダ!!
なんとかしなくちゃ。とにかく、どこにも行かないように繋いでおかなくちゃ!
いなくなったら、もう二度とそれに触れる事はできなくなる。
どんな事をしてでも、繋ぎ止めておかなくちゃ!!!

あの日、私がアイツに向かって「痴漢!」て叫んだ日から、アイツの態度が変わった。

あの日、私は先輩と部室でエッチした後だった。
先輩は用事があるとかで、一人で帰っていったため、私が一人残されたところに、アイツと偶然鉢合わせたの
だった。
こんな日は一人で帰りたかったのに、よりにもよってアイツと顔を合わせるなんて…なんて間が悪いんだろう。とはいえ、声を掛けないわけにも行かない。帰る方向が一緒だから、一緒に帰らないわけににもいかない。
その日は練習もキツかった上、エッチも激しくて膝がガクガクの状態だったうえ、私の膣内(なか)に出さ
れたアレの量も多かったため、帰り道の最中、アレが外にたれて来ないかと、気が気でなかった。(転びそうに
なって アイツに支えられるたびに、ビクビク反応していた)
そのため、アイツの家との分かれ道まできてホッとしたところに いきなり抱きしめられたため、混乱してし
まった。
先輩に抱かれた直後に、別の人と肌を触れ合う事に嫌悪したこともある。



やめて。やめてよ。今日はだめなの。ダメ!出てきちゃう!!
その手を振りほどこうとしたけれど、手には力が入っていて振りほどけない。
何で?なんでなの?いつもは、「嫌」って言えば すぐ止めてくれたのに、その日に限って止めてくれない。
それどころか、腕にますます力が入って、より一層強く抱きしめられてしまった。
もう完全にパニックになっていた。自分を抱きしめているのが誰なのかすら解らなくなっていた。
後ろからつけてきたストーカーに いきなり抱きつかれたような気がして、体中に鳥肌がたった。
怖くて必死になって暴れ、ようやく抜け出せたところで、反射的に言ってしまった。

「なにするのよ。この痴漢!」て

アイツの態度は変わった。
無理も無い。好きな人から、『痴漢!』なんて言われたら、ショックだもの。神経が細い人なら立ち直れなくな
る事もあるはず。
でも、でもね、ひろクン 聞いて。私はあやまろうと思ったんだよ。あの電話は、『ごめんなさい』って言おう
としてかけたのに……ひろクン、一方的に話しただけで 何も聞かないで切っちゃって、その後は電話に出て
くれなかった。
その後も、メール送ったのに、ちゃんと「ごめんなさい」って書いたのに。
見てくれなかったのかな。

次の日からは、話も出来なくなってしまった。
目が合った途端、何処かに消えていなくなる。
朝は、ぎりぎりまで席に来ない。昼休みも、何処に消えてしまうのか、何処を探してもいない。放課後は、私が部活があるから、顔を合わせるタイミングは殆ど無い。
加えて電話は電源切られてる。いつかけても『圏外』のアナウンスが流れるだけ。メールしたって、返事すら
よこさない。
ああ、一学期の終わりに戻っちゃった。
最初はそう思った。


でも、すぐにそれが間違いだという事に気付かされた。

アイツと会わない日が何日か後だった。
部活が終わって、着替えの最中に同僚から聞かされたのだった。

「ねぇ、香織、こういう事言うのも何なんだけどさ…あんた、田川君とは、別れたの?」

「へ?」
唐突な話に素っ頓狂な声をあげてしまった。
確かに、ここ数日アイツとは顔を合わせていないけど、それだけでそんな噂がたつとは思えない。それに彼女は7組、1,2組の私たちの様子は、フロアが違うし、見えない筈。なんでそんな話になるのか、見えない。

「何よ、急に。何処からそんな話が出てくるわけ?」

「ん?……いや……だって、見ちゃったから」

「見たって、何を?」

「その……田川君と遠野さんが仲良く一緒にお弁当を食べている処を」

「そう……そういう事してるの。…ハハハ、…よし、こんど会ったらとっちめてやる」
できる限り冗談めかしく軽い答えを返す。私には、それに怒る権利はないから。
取り乱しはしなかったと思う。
自分がしてきた事を考えると、アイツが他の女と一緒に居るくらいでショックを受けるなんて、おこがましい
と思った。
我ながら随分と冷静な対応が出来たと思う。
実際にその光景を見るまでは。


どんな顔をして食べてるんだろう…
半ば興味本位、半ば自分にけじめをつけるため、同僚から聞いた アイツらの場所を覗いてみた。
学校の一番奥にある図書室脇の藤棚、そこで にこやかに話をしながら昼食を採っている二人を見た。
ちょっと 胸にズキっとくるものを感じながらも、じっとその光景を観察していた。
ところが、アイツの手にある弁当の入れ物が目に入ったとき、今までの感情が全て吹き飛んでしまった。
アイツの体に似合わない 慎ましやかな大きさの弁当箱。仕舞うときに 女物と解る可愛らしい模様がチラッ
と見えた。
どう考えてもアイツが家から持ってきたとは考えられない。恐らく、いや多分きっと隣の女の人が作ってもっ
てきたものだ。
心臓を鷲掴みされるような、激しい痛みを感じた。
と同時に体中の血が沸騰したかのように、全身が熱くなっていく。

女の娘が 異性の友達にお弁当を作って渡す、それが何を意味するのか、あのニブチンにも解らないはずない。
中学のときに一度経験があるもの。
好きでない人にお弁当なんて作るはずが無い。
なのに、それを受け取ったという事は……
アイツは優しいけれども、こういう所は結構冷静だ。断れなくて、変に気を持たせるような事はしない。
(現に、中学のときは、二回目以降はしっかり断ったもの)

ここに来て、私はようやく自分の置かれている状況がわかった。
馬鹿だ。私は、大馬鹿だ。
こんなになるまで、気付かなかったなんて……違う。本当は気付かないふりをして、事をほったらかしにしていただけだ。

アイツは小さい頃からずっと私の側にいた。
それがいつのまにか、側に居るのがあたりまえになっていた。
だから、先輩と初体験した後も、アイツにそれを告げた後も、アイツは私の側に居るとばかり思っていた。


アイツが私の側からいなくなる事なんて考えてもみなかった。アイツの隣は、過去も未来もずっと私の指定席、
そう信じていた。

初めてアイツが私の側から居なくなることを実感し、恐怖した。
ううん、違う。側から離れたのは私。私がアイツの側から離れて、先輩のところへ行ったんだ。
いつでも戻れると思っていたのに、いつのまにかそこは他の人が座っていた。

泥棒!そこは私の居場所。勝手にそこに座らないで!!
心はそう思っても、理性が私にブレーキをかける。『お前にそんな事を言う資格は無い』と。

受け入れ、祝福しようとする理性と、二人に割って入って大切なものを取り戻そうとする感情、二つの思いが激しくぶつかり合い、その荒波にゆられて 吐き気がした。
胸がつまって、中のものを吐き出しそうになる。
眩暈がして立っていられそうにも無かった。
慌てて、回れ右をして、自分の教室に戻る。席に戻って、机に突っ伏すと、外に対する感覚が急に無くなって
いく。
気が付くと、すでに放課後になっていた。
その日は部活をさぼって、真っ直ぐに家に帰った。
先輩と放課後会う約束だったけれど、それもすっぽかした。後でメールが来たので適当に返事したけれど、ど
んな事書いたかも覚えていない。

遠野さんのお弁当攻勢は一日だけじゃなかった。
教室の近くの流し場でアイツが弁当箱を洗っている光景を何度も見ている。
アイツが他の女の持ち物を甲斐甲斐しく洗っている。
その光景に激しく嫉妬した。耳たぶまで熱くなったのを覚えている。
アイツに話し掛けても、まともな返事が返ってこない。しつこく訊けば『相手が違う』って言われるだけ。
そんな……どうしてそんなに冷たい態度なの?
あの時、『痴漢!』なんて言ったから?


だからなの?
私のこと、嫌いになっちゃった?もう、どうでもいいの?
ね、はっきり言ってよ。
はっきり言ってくれれば、まだ踏ん切りがつくのに。このままじゃあ、とても諦めがつかないよ!!
ねぇ……もう、ダメなの?

見られてた。
先輩と部室でエッチしているところを、ひろクンに見られていた。
そんな……一番見られちゃいけない人に見られていたなんて……
そうだったんだ。ひろクンがあんなになったのは、痴漢騒ぎだけが原因じゃなかったんだね。

好きな人が、自分以外の誰かとエッチしてるところを見たら、そりゃショックだよね。
さらに、その人から『痴漢』呼ばわりされたら……こうなって当然だよね。

ごめん。ごめんなさい。私、あなたがこんなにも傷ついていること解ろうとしなかった。。
馬鹿だよね。自分が同じような立場になって初めてわかるだなんて、自分勝手もいいところだよね。
これで踏ん切りがついた?……やっぱりだめ。とても諦めることができない。
自分が悪いのに、なのに元の鞘に収まりたいなんて、我侭な自分の感情がどうしても押さえられない。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
謝りたい。
どうすれば、謝れるの?どうすれば、許してくれるの?どうすれば……もとの二人に戻れるの?
ね、言って お願い。言ってくれれば何でもするから。どんなことでも、やるから。

-「だからさ、お前とは会わないようにするよ。もし、たまに顔を合わしても、声 掛けないでくれ」-
そんな……もう、元には戻れないの?
嫌だよ。絶対に嫌!
この手は、あなたが今の言葉取り消すまで、ぜぇーーーったいに離さないんだから。
この手を離して欲しかったら、今晩眠りたかったら……さよならはやめて。


さよなら……だけは、やめて。お願いだから。
何だってするから、何度でもするから……だから、私の側から居なくならないで。
どんな関係でもいいから、あなたの側に居させて。

返事は返ってこない。
ひろクンはいいの?二人バラバラになっても、いいの?
私の体を好きにしてもいいって言ってるのに……それでもだめなの?
さっき、私のことはまだ好きだっていってたよね。
好きなのに、さよならなの?本当に我慢できるの?
私はダメ。ひろクンなしの日常なんて、とても耐えられない。
我慢しなくていいんだよ?私のこと、抱きたくなったら、好きに抱いていいんだよ?それでも、我慢するの?

もしか……もしかして ひろクン、遠野さんの事………好きなの?

「遠野さんが支えてくれるから…………頑張れるの?」

「そうかもしれない」

全身の力が抜ける。
全ては、無駄な足掻きだった。この人は、既に 私の方を向いていない。
こっちが体だけの関係だけでもと望んでも、この人はそれすら望んでいない。
絶望的だ。
もう、どうすることも出来ないの?

「それじゃ」
アイツはそう言って、私に背中を向け、家に向けて帰っていった。
私は遠ざかる背中をただ見送るだけだった。


「フゥーーーーーーーーーーーー!」
大きく息を吸って、胸の中の空気を一気に吐き出す。
こうすると、一瞬ではあるけれど、胸に張り付いたモヤモヤを解消する事ができる。
それに、息をするのも億劫で、時折こうして大きく呼吸しないと酸欠で倒れてしまいそうだった。

此処の所、一日中溜息をつき通し。アイツに振られてから、ずっとこんな調子だ。
授業の内容なんて、てんで頭に入らない。
部活も、ボーっとしていて何度もヘマやらかすものだから、キャプテンから当分の間練習に出てこなくて良い
って言われた。
先輩とエッチもしていない。
何度か誘われたけれど、全然その気になれなかった。
本当に、こんなになるなんて思ってもみなかった。
自分で予想していた以上に重症だった。
それだけ、アイツの存在が大きかったわけだ。

一体、なんでこんな事になっちゃったんだろう。
アイツは私が好き。
私もアイツが好き。
なのに、こんな事になるなんて……

アイツは言っていた。
「私とアイツの『好き』の意味合いが違う」って。
アイツの『好き』は、恋愛対象としての、一個の異性に対する『好き』。
対する私は、アイツの事を恋愛対象としてみていなかった……んだろうか。
確かに、最初にアイツから告られた時、そういう感じだった。あまりにも身近すぎて、恋の相手になるのか、
不安だった。
だから、あの時は「好きだけど、恋人同士のそれとは違う。今は恋愛対象のそれとしては見ることはできない」って言った。


私は、素敵な恋がしたかった。
ドキドキワクワクするような、ちょっとでも会えないと切なくて苦しくて、そんな恋がしてみたかった。
そういう恋の相手としては、アイツは相応しくない。
一緒にいても、ドキドキしないし、会えなくて苦しくなるような事など微塵も沸かない。
私の恋の基準からは大きく外れた存在だった。
高校に入った当初は、恋愛対象としてはアイツは私の眼中には無く、だれか私を恋へと誘ってくれる素敵な
男性は居ないかと、目を皿のようにして探していた。
そんな時、先輩と出会った。
先輩は、格好良くて、優しくて、スポーツマンで……そんな人のすぐ近くに居るだけでドキドキするときめき
を感じた。
と前後して、アイツと遠野さんの噂が流れて、アイツに対してちょっとした嫉妬心を抱いた。
そしてすぐに先輩から声をかけられ、誘われて、嵌ってしまった。
こういう時って、本当 気味が悪くなるくらい一つの方向に物事が動いていく。まるで、誰かが裏で糸を引い
ているみたいに。

アイツの事を『男』として見るようになったのは、多分アイツのところに看病しに行ったときからだ。
あの時、初めて弱々しい所をみて、『護ってあげたい』と思うようになった。
そして、その後のデート。
アイツと肌が直に触れ合う度に、男を感じた。
これからアイツとも恋愛関係になっていくんだろうか、なんて思ったのに……
自分の気持に気付くのが、本当に好きな人を恋の相手と認識するのが遅すぎたんだ。
アイツに対する自分の感情が、本当の気持に気付かせるのを遅らせたんだ。
アイツへの気持。
アイツと居ると、安心する。
アイツと居ると、気持が落ち着く。
嫌な事があっても、アイツと一緒にいるだけで、嫌な事を忘れることができた。
どんな事があっても、アイツは私のそばに居る。たとえ全世界の人が私の敵になっても、アイツだけは私の味
方になってくれる。そう信じていた。

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