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動き出した歯車(その25)

その後、暫くはお互いの都合がすれ違う日が続いたこともあり、会うとすぐエッチ という展開になる事
は無かった。
抱きしめあってキスをして お互いの気持ちを確かめ合ってそれぞれの家路へと別れる日々、より深い肌
の触れ合いの無い、セックス抜きの日々は、苦痛の日々だった。
けれども、理由は何であれ、我慢することができたのは、大きな自信に繋がったように思う。
やればできる。今は苦しくても 努力していけば、証を求めなくともお互いの愛を確認することができよ
うになる。
セックスだって、互いに相手の愛の証拠を求めるためだけのものではなく、互いの相手に対する愛を確認
するためのセックスに変わっていくはずだ。
そうさ、そんな日は 実はすぐ近くに来ているのかもしれない。
ゴールは近い。その時は、二人手を繋いで笑ってゴールのテープを切ってやるさ。



この時の俺は、知らなかった。
数日後、そのゴールがはるか彼方に蹴飛ばされるのを見せられることになるとは。

「ふざけないでよ!!」

その声は、おそらく景子が生まれてこの方一番大きな声だった。
その声に、目の前に立つ男は勿論、自分自身もビックリしてその場に凍り付いて身動きできない程だった

二、三十秒程だろうか、二人の間に微妙な沈黙が流れた後、ようやく景子の方から話を切り出した。
「ふざけないで。私を捨てたのはあなたでしょう?よくもそんなことが……」

「ごめん。その時のことは謝る。でも、ああでもしなけりゃ、お前 諦めてくれないと思ったから」

「それ、……どういう……事?」

「いや、……お前はやっぱり妹だった。大切だけど、汚したくなかったんだ」

「そんな……じゃあ、何で私を抱いたの?」

「本当はね、お前を抱く気は無かった。けれど、あの時断ればお前、自殺でもし兼ねない雰囲気だったか
ら……だから、しかたなく……」

「『仕方なく』って……私の事、嫌だけど無理やり抱いたの?」
「淳ちゃんから誘ってきた事もあるよね? それもやっぱり『仕方なく』なの?」

「い……いや、俺も男だし……さ、性欲はやっぱりあるから……」
「何よそれ……それじゃ私が馬鹿みたいじゃない。勝手に好きになって、舞い上がって、無理やり関係結
んで、結局あなたの性欲処理の道具にされただけ。挙句の果てにあんな終わり方で捨てられるなんて」


「捨てたつもりは……無い。性欲処理の道具にしたつもりもない。あの時は、お前とセックスするのを
止めたくて、でも、すんなりとは行かないと思っていたから、ああいうやり方しか考えられなかった。
結局お前を傷つけて無理やり終わらせただけになっちまった。自分でも最悪だと思っている。すまない、
許してくれ」

「……ね、教えて。あの時在った女物の下着は何だったの? あれは、私を諦めさせるための細工だったの?」

「いや、あれは……誘われれば、悪い気はしないし」

ふっと 景子の口から深い溜息が漏れる。

「何だかんだ言っても、私にとって最悪の形で振られた事には変わりないんだよね」

「ごめん。ちゃんと気持ちを伝えれば、こんな事にならなかったんだよな。あの時のことは、本当にすま
ないと思ってる。解ってくれ、大切だから、大事にしたいから抱きたくないっていうのもあるんだよ」

「そんなの解んないよ。……それに、私たちもう、終わったんだよ、今更 なんで私の処に来るの?」

「だめなのか?……何とかならないのかよ?……頼む、元に戻ってくれよ」

「もう、遅いよ、とっくの昔に終わったのに。こんな未練たらしい科白、淳ちゃんの口から聞きたくなか
った。昔の淳ちゃんは、やさしくて 周りにちゃんと気配りができる人で、少なくとも こんな事を言い
に来る人じゃなかったのに。何が……あったの?」

「ん……いや さ、俺 ちょっと余裕無くしちまって」

「どういう……事?」

「俺、プロのサッカー選手目指してたのは、知ってるだろ?」

「うん。淳ちゃんからさんざん聴かされたもの」

「それでさ、スカウトが来たんだけれど、それがJ2の下の方のしか来なくてさ、しかもサテライトから
だって言うんだよ」

「……」

「自惚れなのは解っているけど、ショックだった。自分はもっと上手いって、もっと高く評価されてるっ
て思ってた」
「でも、そこで頑張って活躍すれば もしかしたらJ1から声がかかるかもしれないし、自分の力でチー
ムをJ2からJ1に引き上げるのも悪くないって思った。それで そのチームの合宿に参加したんだ」
「そしたら、J2の、しかも、去年JFLからやっと上がったばっかりの、それも サテライトなのに、
俺なんて全然かなわないんだよ。俺より上手いやつがゴロゴロしてるんだ。もう ショックでさ、ムキに
なってやってたら、膝 やられちまって、おかげで選手権は予選で負けちまうし……解るだろ?こう言う
時、誰かにいて欲しくて、だからお前に戻ってきてほしいんだよ」

男の訴えかけるような眼差しに景子の心がグラグラと揺れだす。
――駄目。こんなと事で気持ちが揺らいじゃ――
男に動揺を悟られない様、努めて平静な表情を作り上げる。

「それ、妹に言う言葉じゃないよ。淳ちゃん、彼女いるじゃない。そういうのは、彼女に言わなきゃ」

「言えるんなら、とっくにそうしてるよ。言えないから、お前に言ってるんじゃないか」


男が語気を強めて叫ぶ。男にも余裕は無く、それ故真剣であることが、景子にも感じられた。

――彼女に言えないって、一体何が……――
「彼女と……伊藤さんと、何かあったの?」

「あいつ……香織のやつ、浮気してる」

「嘘!」

「嘘なもんか。ちゃんと証拠だってあるんだ」

「どんな……証拠?」

「あいつさ、こともあろうに、俺とやってる最中に他の男の名前、呼びやがった」

「!!……」

意外な事に、伊藤香織が複数の男と関係しているという噂話は無かった。
勿論、二股の話は当然校内に飛び交っている。景子だって、その話は何度も耳にしていた。けれども、
その話だって景子が彼と付き合いだした頃から、とんと聞かれなくなっていた。
それどころか、二股解消の頃、落ち込んでいた香織にアタックを掛けてあえなく撃墜された男子が何人も
居る、という噂さえ流れていた。

という事は、香織の浮気相手というのは景子が知る限り一人しかいない。
景子の顔色が変わる。それを見て取ったかのようなタイミングで 男が言葉を投げつける。

「そうだよ、その間男はお前のよく知ってるやつだよ」

「やめて」

「そいつは、俺と香織が付き合っているのを知っていて、手を出したんだ」

「やめて!」

「そいつの名前はな」

「やめてってば!聞きたくない!!」

「田川博之。お前が今付き合っているやつだよ」


景子の脳裏に、あの日の事が浮かぶ。
彼から聞かされた、その前日の彼と香織とのやり取り。彼を諦めていない香織と、香織の言動に心を揺ら
す彼。そんな彼を失う事に恐怖し、それがきっかけで結ばれた事。
しかもその直後、自分の失態が原因で彼に拭えない不信感を与えてしまった事。

此処のところ、彼とのすれ違いの日々、その間に関係があったという事は考えられなくもない。
というか、疑えば 怪しいところは沢山ある。……けれど、証拠はない。あるのは、目の前の男が言った
言葉だけ。

なのに、彼の言った言葉を心から信じることができず、男の言葉に心を揺れ動かされる。
何故、最愛の人を信じることができないのか、自分が嫌になる。
心の中でギリギリの抵抗を試み、疑念を無理やりにねじ伏せて、景子は言葉を搾り出した。

「彼女には……訊いたの?」

「ああ、訊いたさ」

「何て言ったの?」

「勿論、『やってない』て言った。……その後、ずっと謝ってばっかりだった。『ごめんなさい、信じて欲
しい』て」

「淳ちゃん……彼女のこと、信じてあげられない?」

「信じられるんだったら、こんな所にいるわけ無いだろ。……そりゃ、信じたい。信じたいけど、駄目な
んだよ。信じようと思えば思うほど、香織とあの一年坊主が仲良く抱き合っているところが目に浮かんじ
まうんだよ!!!」



景子の目に、男が小さく見えた。……かつて憧れ、愛した存在。その時は大きく、強く、厚く、やさしか
った。包まれ、守ってくれている感じがして、安心感があった。
その同じ人物が目の前で肩をまるめ、苦悩し、声を震わせて助けを請うている。そのあまりの違いに、思
わずその肩を抱き寄せたくなる感情が沸き立つのを、景子は慌てて封じ込める。
――私がこの胸に抱きしめる相手は、この人じゃない!――

「でも、……私は淳ちゃんの妹でしょ?妹にこういう事吐き出しても、聴いてあげる事くらいしかできないよ」
「やっぱり、こういうのは恋人じゃないと」
景子の心は崩壊寸前だった。これ以上話を続ければ、目の前の男への気持ちと彼への気持ち、どちらが本
当なのか解らなくなる。

けれど、男にはそんな都合は通用しない。

「いや、だから妹じゃなくて……恋人同士に戻れないかって言ってるんだよ」
景子の心臓が『ドキン!』と一拍強く鳴り響く。と同時に切ない気持ちと激しい怒りが一緒くたになって激
しく彼女の頭の中で渦を巻いた。

「……馬鹿にしないで。あの時私を捨てたのは、妹にしか見えないからだったんでしょう?そう言ってお
いて、今更恋人同士ですって?いい加減にしてよ!」

「な……何だよ?!」

「貴方は、淳ちゃんじゃない!! 貴方は……あなたは、私の知っている淳ちゃんじゃない!!」
「私の知っている淳ちゃんだったら、たった一言の失言で恋人を信じなくなって、昔捨てた女と、それも
妹同然の女と寄りを戻して、しかも恋人同士になろうだなんて、そんな浅ましい心はもってないもの。
……こんなのは、私の淳ちゃんじゃない!!」



男は、景子の剣幕に気押されていた。
人生で初めて経験する挫折がきっかけとはいえ、脆くも折れた自分の心の奥を見透かされ、何の反論も出
来ない事に、苛々を募らせるばかりだった。
せめてもの反撃なのか、景子へ言葉を向ける。

「お前はどうなんだよ。お前は、あの一年坊主を信じられるのかよ?」

急に自分に質問を振られたことに、景子はハッとなった。……そう、自分は彼を信じられるのか?この男
のことを、憐れと同情するほどの余裕があるのか?
……考えた。
今の関係を壊したくないのなら、答えは一つしか無い筈なのに。なのに、すぐに答えを出すことはできず、
堂堂巡りを繰り返している。

出した答えに、景子は苦渋の表情を浮かべた。

「私は……信じる。 証拠が無さ過ぎるもの、信じるしかない」
声は震えていた。涙腺は崩壊寸前で、ちょっとつつけば、涙が溢れ出しそうだった。

「そうか……景子は、彼氏を信じるんだ……強いんだな」
観念したのだろうか、今までとは打って変わって、男の表情は優しく、少し悲しげなものになっていた。

「馬鹿な事を言い出してごめん。もう行くわ」
そう言ってドアへ向けて歩き出す男の足取りに、景子は今更ながらに気付いた。足を少し…いや大分引き
摺っている。表情もひどく辛そうだった。

「淳ちゃん……その足……」

「だから言っただろ?怪我したって。靭帯伸ばしちまったんだよ」

「……ひどいの?」

「医者が言うには、全治3ヶ月だってよ。最近リハビリが始まったんだけど、これが痛いのなんのって……」
おどけた口調で話す男の顔に余裕は見られなかった。

「淳ちゃん……」
景子が、男の肩に優しく指先を這わせる。

「景子……」
男の手が景子の頬に触れると、景子の両手がその手を掴み、自分の頬に押し当てる。まるで愛しいものを
扱うかのように。

景子が何故そんな事をしたのか、おそらく本人にすら説明のできることではないだろう。
昔愛した男にまだ愛情が残っていたのだろうか?もう、博昭の事は 良くなってしまったのか?
言えるのは、そういう事をした という事実だけ。

けれど、さらに一つだけ言える事は、その行為は男の平常心を失わせるには十分過ぎるもの という事だった。

その瞬間、男の理性が弾け飛んだ。

「景子。景子!」
男の腕が荒々しく景子の細い体に巻き、自分の体に引き寄せ、密着させる。


「……淳ちゃん何するの?!、嫌……やめ……て」

景子は必死で抵抗した。必死で暴れ、ちょっとでも隙があればその腕をかいくぐって、今度こそ鍵を開け
て外へ出るつもりだった。
けれども、その身は未だに男に絡め取られたまま、ただ力なくその腕を押しつづけていた。

力が、入らない。
嫌なのに、彼に見られたら困るのに、思い切り力を入れることができない。

「景子……駄目なのか?何で?……たのむ。今は、お前しかいないんだ。……お前もいなくなったら、俺
は……」
男の声が頭の後ろで囁かれる。初めて聞く、元彼の泣きそうな声。その声が耳に入る度に、景子の腕から、
全身から力が抜けていく。
付き合っている人がいるのに、かつて愛した人に迫られ、それを許そうとしている自分に景子は吐き気が
を催した。
けれど、どんなに嫌でも、どんなに自分を責めても、体はいう事を聴かず、ただ男のされるがままになっ
ていた。

「景子、景子、けいこ、け い こ………愛してる」
男は、景子の名前を連呼し、その両手で、景子の体中を弄っている。右の手は、胸を揉みしだき、左の手
は膝から内腿へと、擦る部位を徐々に上にあげながら目的地を目指していた。

いつのまにか、景子の体は反応し、ショーツに大きな染みを作っていた。

――何で?……何でなの?……何で彼の手じゃないのに、体は反応するの?――
せめてできる事は、この行為に、悲しみの表情と、涙を男に見せる事だけ。
男にこの涙の意味は伝わったのだろうか。
零れる涙を、男の指が拭い……囁く。
「彼氏のことは、忘れろ。 昔の二人に戻ろう」


耳をどんなに強く扉に押し当て、神経を集中させても、中の様子は聞こえなかった。
ただ、中に人がいるだろうという事と、中の人が話をしているだろう という事がわかるだけ。
もっと良く中の様子がわかる方法は無いだろうか?
どこか隙間らしきものはないかと、扉を隅々まで舐めまわすように探っていると、後ろでクスクスと笑い
声が聞こえた。
後ろを振り向くと、女子生徒が二人、俺の姿を見て なにやら笑いながら話をしている。

いかん、これじゃ単なる変質者だ。もっと他の方法を考えないと。
そう思って音楽室を後にしようとした時、ゴツゴツと誰かが歩く音が微かに聞こえた。
慌てて耳をドアへ押し付け直す。人が見てようと構うもんか。恥も外聞も言ってられない。

聞こえてくるのは、相変わらず耳の穴の中で反射するノイズが殆ど。その中で、かろうじて誰かの話し声
が聞こえた。

『景子、景子、けいこ……』

その男の声は、誰かはわからない。……いや、中川先輩で間違いないだろう。

さっき聴こえたのは、景子の筈……。

ドキン!と心臓が高鳴る。胸が痛い。嫌な予感が頭に、胸に、そして全身に急速に広がっていく。心臓は
急速に動悸を速め、全身の血管は拡張し、体全体が熱くなる。一体中で何が起こっているんだ?

全神経を耳に集め、中の様子に耳をすませる。けれど、何も聞こえない。
いっそのこと、ドアを蹴破って中に入れたら、と思う。けれど、厚く重い防音扉は、普通の人間が蹴って
簡単に破れるほどやわな存在ではない。
どうすればいいんだ?


中では、何か良からぬことが起こっている気がしてならない。とにかく、今止めないと取り返しのつかないことなる。

根拠は無い。けれど、それは間違いないと本能が叫ぶ。
けれど、この鍵が開かない限り、どうにもならない。一体、どうしろって言うんだよ!!

は、鍵。……そうだ、スペアがあるはずだ。そのある場所が考えられるのは……
俺は、この扉に背を向け、一目散に走り出した。



男の指が、景子の股間に喰いこみ、クチュクチュと音を立てている。
反対の手は、カップの中に潜り込み、優しく乳首を愛撫していた。

「ぁ……ぁあ、……ぃ……ゃ……」
口からは、断続的に喘ぎ声が漏れ、下の口からは大量の愛液が漏れ出し、彼女の履いた下着は既にびしょ
濡れになっていた。

壊れたような、うつろな彼女の視線の先には、何も写っていない。ただ、目の前の風景が拡がっているだ
け。目尻には涙の流れた痕が何本か頬から顎 首のあたりまで続いていた。

「フッ」
シニカルな笑い声が、景子の口から漏れる。

『そう、私はこんな女。好きな人がいるのに、とても大切な人なのに、他の男に股を開き 股間を濡らす、
いやらしいメス豚』

『ねえ、田川君、あなたは私がこんな事をしていると知ったら、きっと嫌いになるでしょうね?』
『私は、貴方を裏切って取り返しのつかない事をした』
『貴方には、もっと良い、人がいるはず。私なんかは、貴方には相応しくない』
『私はもう、貴方に顔を会わせることなんて 出来ない』


『……さようなら……』

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