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動き出した歯車(その26)

職員室の手前で急ブレーキをかけて足取りを緩め、乱れた呼吸を無理やり整え、努めて冷静な表情で中に
入る。

「失礼します。音楽室の鍵を借りにきました」

けれども、返事は聞こえない。席には音楽の教師はいなかった。
くっ!こんな時に。
愚痴を言っても始まらない。やむを得ず、引出しの中を探る。荒らしと間違われない様、慎重な手捌きで。
周りの教師たちは、俺の表情に異常なものでも感じたのか、遠巻きにしてジロジロ眺めているだけだった。

鍵は見つからなかった。
あそこの鍵は、スペアが無いのか?もう、手は無いのか?
諦めようとした時、思い出した。
かつて、遅くなって職員室にまで鍵がかかってしまった時、事務員室に鍵を持っていったことを。
そうだ、もしかしたらあそこに有るかもしれない。

事務室へと足を向ける。廊下には何人か教師がいるため、走れない。歩く歩調を速め、できる限り早く着
くように急ぐ。なれない歩き方に焦りばかりが募る。この廊下はいつの間にこんなに長くなったんだ?

ようやくたどり着いた。
ドアを開け、勢いをつけて叫ぶ様に声をだす。

「すみませ―ん。音楽室の鍵を貸して下さい」

事務員の人がいぶかしそうな目つきでこちらに向かってくる。

「音楽室の鍵なら、音楽の桐山先生がもってるでしょ。そっちから借りて」

「それが、先生の机には鍵が無くて……先生、いらっしゃらないから どうすることもできなくて……
お願いします!!!」
頭を膝に擦り付けんばかりに拝み倒す。とにかく鍵が無ければ、どうしようもない。

「お願いします!!!」

「先生から借りて」

そんな押し問答が暫く続いた後、根負けしたのか 事務員の人は 鍵を貸してくれた。
ブスッと不満げな表情なのは、相変わらずだったが。

『ありがとうございます!!!』
ちょっと大袈裟に最敬礼して感謝の意を表すと、音楽室へ向けてダッシュした。
頼む、間に合ってくれ。


扉は、開いていた。
中に人は無く、窓から指す西日に赤く染まる教室が 寂しく拡がっていた。
まるで 最初から扉に鍵など掛かっていなかったかのように、
まるで 最初から中に人などいなかったかのように。
扉は間口を大きく開け、これから待ち人が来るのを待っているかのような佇まいだった。

さっき聴こえていたのは気のせいだったんだろうか?
そもそも、俺はさっき此処に来ていたんだろうか?
今日は、今 はじめて此処に来たんじゃないか?
それなら、彼女も直に此処にくるに違いない。それまではピアノでも弾いて待っていよう。

いつもの様にピアノに向かって歩を進める。目の前には、いつも景子が座っている席。
ふと床に目が行った。

タイルの床にこぼれた、水滴のようなもの。近寄ってよく見てみると、それは水ではなく、
半透明に濁り粘り気を帯びていた。

辺りに 微かに生臭いような、汗臭いような、女の子から出る独特の甘いような 匂いが漂っている。

胸が痛い。心臓が破裂しそうなほど、鳴っている。
頭が痛い。体中の血液が みな頭へ集中し、破裂しそうだ。

気のせいなんかじゃない。さっき、此処には人がいた。
俺は、確かに此処に来ていた。
そして、中にいる人の声を聞いていた。

そこにいたのは、俺の彼女と、彼女の元彼……中川先輩・・・・・・だと思う。


そして、そこで………そういう事があったんだ。

どうして?どうして?どうして?
俺が悪いのか? 俺は何をしたんだ? 景子に振られるような何を、俺はしたんだ?
やり場のない怒りが湧き起こり、手当たり次第に拳をぶつけたくなる衝動に駆られる。そしてその直ぐ後、
絶望感が全身を覆っていった。
全身の力が抜け、視界が歪む。

家に着いた時、俺の顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていた。


部屋のベッドに横たわり、手に持った携帯のダイヤルを機械的に押す。
スピーカーから流れる『圏外』のアナウンス。
いったん切って再度ダイヤル。
変わらず、流れるのは同じ言葉の繰り返し。もう、何十回、いや何百回同じ事を繰り返しているだろう。



その日、景子からの連絡はなく、次の日から景子は学校に来なかった。

一週間が過ぎた。
相変わらず彼女からの連絡はなく、彼女の携帯にかけても『圏外』のアナウンスが流れるばかりだった。
一体、彼女は何処に行ってしまったのだろう。
彼女の家へ行って見ても、中で明かりが点っている様子はなく、誰もいないかの様にひっそりと静まり返って
いた。(カーテンや、調度品やらで、中がもぬけの空ではないのを確認できたのがせめてもの幸いだが)
こんな状態で学校へ来ても、やる気なぞ起こる筈もない。来るだけでも上等、来ても一日中机に突っ伏して寝
るのが関の山だった。
当然、学内に噂が流れない訳がない。曰く、『田川が遠野景子を妊娠させて、景子は転校した』だそうだ。
ばかやろ。もしそれが本当だったら、俺がここにいるかっていうの。
噂を一々否定して回るのも面倒臭くてほっておいた。
それからさらに三日後の事だった。

「お前が田川か?」
いつものように机の上に突っ伏している俺の頭の上で声がした。
顔を上げると、目の前に見慣れない男子生徒が二人、立っていた。上着の襟に付いたバッジを見る。どうやら、
二年生らしい。どちらも髪を短く刈り上げ、顔は日に焼けて浅黒い。体つきも締まっていて、一欠けらの贅肉
も見えない。どう見ても運動部、それもかなり厳しく鍛えている方の部類だろう。

「そうだけど、何か?」

「ちょっと来い」
二人は俺の席の両サイドに立って、俺に起立を促す。どう見ても逃がすつもりが無いのは明らかだ。


「嫌だと言ったら?」

「あんまり手間を取らすなよ」
二人のうちの一人が答える。言葉は柔和だったが、目付きは鋭く、笑っていない。
此処で拒否して騒ぎを起こすのも面倒なので、素直に付いて行く事にした。一体何の用があって……まあ、大
体察しはつく。こちらも言いたいことがあったから、却って探す手間が省けて都合がいい。
二人に挟まれるようにして教室を出た。周りの人は、チョロチョロと覗いているけれども、こちらに直接に視
線を向けることはしない。やはり騒動に巻き込まれるのは嫌なのだろう。
二人に連れられ、校舎を出て、ついた先は 予想通りサッカー部の部室前だった。

「田川をつれてきました」

返事は無い。けれど、中に人がいるのは間違いない。一体何人? 二人?三人?それとも……首から上が熱く
なり、全身の筋肉が引き締まって行く。

「入れ」
返ってきた声は、一人だけ。けど、油断はできない。
つれて来た上級生に入るように促され、ドアを開けて中に入った。
中は、分厚いカーテンが掛けられ、真っ暗で何も見えない。目を凝らして中を凝視していると、『バタン』とい
うドアが閉まる音がし、続いて鍵の掛かる音がした。

しまった!
中の様子を探るのに気を取られて、後ろを警戒するのを忘れていた。
と、視線が自分の背中に言った瞬間、暗闇で何かが動いた。


え?……と思うまもなく、顎に強烈な一発を打ち込まれた。
目の前でフラッシュを炊かれたかのように、原色模様の斑紋がチラチラと浮かび上がる。脳を激しくゆすぶられ、意識が半分刈り取られそうになった。
と、そこへ、第二撃が、俺の右わき腹に。
途端に、胃の中のものが逆流しそうになる。呼吸が止まる、息が出来ない。
堪らずその場にうずくまった処に、大きな何かが高速で接近してくる。
何だ?………足?……ヤバイ!
咄嗟に両肘を顔の前に突き出して、頭を保護する。……間一髪間に合った。肘に、肩に重たく『ドスン』とい
う衝撃が走る。……一瞬遅れて激しい痛みが走った。
痛みが引くのを待つ暇もなく次の一撃が顔前に迫る。だめだ、ブロックできない。
慌てて床の上を転げて交わす。
そのまま2、3回転転げて相手と距離をとると、慎重に上体を起こした。

肘、肩の痛みはなかなか引いていかない。特に右の肘は、そこから手先までしびれてしまって使い物になりそ
うもない。こんな所に次の攻撃がきたら一環の終わりだ。
慎重に、相手に厳しい視線を送りながらゆっくりと体を起こす。自分のダメージを今 相手に悟られたくない。
一秒でも時間稼ぎになってくれたら それでいい。今はとにかくこの腕が少しでも回復する時間が欲しい。

意外にも相手は襲って来なかった。慎重なのか、余裕の現れなのか。

ようやく目が慣れてきた。
徐々に暗がりが明るくなっていく。
そこには、見覚えのある顔……中川先輩が一人、激しい怒りの形相で立っていた。


誰なのかは、わかっていた。
けれど、何故先輩に殴られなければいけない?
俺からしてみれば、先輩に訊きたい…というか問い詰めたいことはあっても、先輩からこんな事される謂れは
どこにもない。

理不尽な仕打ちに、怒りが湧き起こりだす。

「先輩……いきなり、何をするんで…」

「うるせぇ!!」
俺の言葉が終わらないうちに、先輩の叫び声にかき消された。
先輩の眉が一段と釣りあがる。

「人の女に、手を出しやがって!」

手を出した? 俺が? 先輩の女に?
おかしい。景子は当の昔に先輩と別れた……それも先輩から捨てられた……筈。
今更、そんな事を言われる筋合いはない。

中川先輩、あんたの彼女は香織だろ?

「手を出したって……先輩、景子は 俺の彼女です。先輩が何を思っていようが、俺は…
「景子じゃねぇよ!」
俺の言葉を遮って、いらついた口調で先輩が吼える。
景子じゃないのなら、一体誰の事を言っているんだ? 俺は、景子としか 付き合っていないぞ。

狐につままれたような俺の表情に ますます苛々を募らせたのか、先輩は素早く間合いを寄せ、俺の胸倉を掴
むと、語気鋭く低いドスの利いた声で言った。


「お前、香織とやっただろう?」

何を言っているんだ、この人は?
何か勘違いしているんじゃないのか?
それとも、香織のやつ 他の男と……

「やってませんよ。俺…・
「とぼけんじゃねえ!」
言い終わらないうちに、俺の声は先輩の怒鳴り声にかき消される。
次の瞬間、拳が飛んできた。
流石にそう何発も殴られるわけには行かない。幸い肘と肩の痛みは大分引いている。
パンチをブロックすると同時に肘で胸倉を掴んでいた手を叩き落し、2、3歩の距離を開けた。

「この……よけんじゃねえよ」
先輩の表情は、相変わらず怒りに満ちている。『落ち着いて』なんて言ってもとても聴いてもらえるような感じ
じゃない。
とはいえ、こっちまで熱くなるわけにはいかない。とにかく、相手の言うことに冷静に受け答えしていくだけだ。

「そう言われても、何の謂れも無いのに 殴られるわけには行きませんよ」

「まだ しらばっくれるつもりか?ねたは挙がってるんだ。いい加減にしろよ」

「すみません。本当に身に覚えの無い事なんで……先輩…香織と何かあったんですか?」

「そうまでとぼけるのなら、教えてやるよ。お前、香織とはやってないんだよな?」
そう言うと 今までずっと厳しかった先輩の表情が崩れ、何処となくいやらしさを帯びた、相手を見下したよ
うなにやけ顔に変わった。


「ええ、一度もやってません」

「それじゃあ、何で一度もやってないやつの名前を、俺とやってる最中に言ったんだ、香織は?」

「?!…………」
香織の奴、何言ったんだよ。
確かに、もしそれが本当なら、勘違いしても無理はない。
だけど、どう説明すりゃいいんだよ。

一瞬でも口篭もったのがいけなかったようだ。
『プッ』と噴き出す様な声が漏れ聞こえ、先輩の口元が釣り上がる。と同時に目が鋭く 悪魔が格好のおもち
ゃを見つけた時のように、輝いた。
相手はどうやら証拠を突きつけられて、うろたえたと取ったらしい。

「やっぱり、言い返せなくなったか」

反論しようにも証拠がない。
とても証拠なしでは 今のこの人には聞き入れてもらえないだろう。

いつのまにか先輩に対して釈明しなければいけない立場に立たされていた。
腹が立つ。何で俺が先輩に言い訳して聴いてもらわないけないんだよ!
しかし、このまま何も言わずに認めたことにされてしまうのはもっと嫌だ。だからとにかく徹底して否定する
しかない。理由も論理もへったくれもない。

「俺は……やっていませんよ」

「ほう、まだ言うか」

「何度でも言いますよ。俺は、やっていない」

「ただ、『やっていない』て言われて、信じると思ってるのか?」

「別に、あんたが信じようが信じまいが、やっていないのが真実ですから」

「開き直るんじゃねぇ。この、糞生意気なガキが!」
言葉と同時に左手が飛んで来た。けれど、不意打ちをくらったさっきとは違う。相手の攻撃がはっきりと見え
る。遅い。これなら、余裕でかわせる。
体を開いてパンチをかわすと、素早く先輩の背中に回り 体勢を入れ替えた。

「この!」
振り向きざまのパンチを軽くスウェーでよける

「くそ!」

「この!」

「逃げるんじゃねぇ!」
続けて二発目、三発目とパンチが繰り出される。それを、寸前でかわしながら、徐々に後ずさりしていった。
攻撃が当たらないのが苛つくのか、一回毎に先輩の声が大きく荒くなっていく。

ドアまではもう1メートルもない。
後ずさりしながら、チラチラとドアのノブを見てみたが、内側から鍵を開けるのは簡単に出来るように見える。
さっきは暗いのといきなり鍵を掛けられたので、焦っていたけれど、これならドアを蹴破る必要は無いだろう。
その分、相手の攻撃をかわすのに集中できる。
外に出られれば、何人いようと やり方はいくらでもある。
あと、少しだ。


「ずいぶんと余裕あるじゃねえか。俺が相手じゃ、反撃する気も起きないかよ」

「別に、そういう訳じゃないですけど」

「空手二段だか何だか知らんが、なめんじゃねえぞ。この盗人野郎が!」

「何度も言いますが、俺はやってません」

「強情な野郎だ、ったく……まあいいさ、あんな尻軽女。こっちも適当に遊べたし、丁度いい。お前に返してやるわ」

何を言ったんだ?、この人は?

「どういう……事ですか?」

「はぁ? 頭悪いな。 だから、返すって言ってるの。お前、香織の事好きなんだろ?良かったじゃねえか」

訳が解らない。さっきまで『人の女に手を出した』と言って殴りかかってきたのに、いきなり『返す』って…
…この人、一体何を考えているんだ?

「そんな……彼女は物じゃないんですよ。いきなり 『返す』って言われたって、素直に『はいそうですか』言える訳……」

「うるせえな。お前が要る要らないとか、お前の気持ちなんか関係ねえんだよ。俺が要らなくなったから、捨
てる。唯それだけだ。 唯、その代わりに、景子は返してもらう。 いいな? 人の女寝取ったんだ 駄目だ
とは言わせねえよ」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中で「カチッ」と何かの音が聴こえた。


何なんだこいつは?…許せない。
景子の想いを知って利用して、捨てて。
そして今度は散々 香織をもてあそんだ挙句、香織が信じられなくなったからって 景子とよりを戻すから返
せだと?ふざけるな!人の事を何だと思ってる!!

全身が熱くなる。心臓が高鳴り、手足の先が小刻みに震える。
次から次へと沸き起こる怒りを抑えて、拳を握って構えた。来い!お望みどおり徹底的にやってやる!

先輩がニヤリと口元を歪める。
「ようやく、その気になったか」

その言葉には答えず、じっと相手を見据える。 その前に訊きたい事がある。今度はこっちの番だ。

「だから、ですか?」

「なんだよ……」

「この間の音楽室、景子としたのは、こういうわけですか?」
先輩は 一瞬怯んだ表情を見せたものの、直ぐに冷静な顔に戻った。
「だとしたら、どうなんだ?」

「許せない……」

「盗人のくせしてよく言う。人の女寝取ったくせして、その仕返しに取られた途端に『許せない』だ……

「俺はやってない!」
先輩の科白が終わるのを待たずに叫んだ。こんな奴のいう事なんか聞いている暇はない。
「やっていないのに、あんたは俺の彼女に手を出した」


「さっきも言っただろ?『そんな話信じられない』、と」

「こっちも さっきも言った筈だ。あんたが信じようと信じまいと、事実は変わらないんだよ」

「だったら、どうするんだ?」

「景子は渡さない。香織も、あんたのような奴の玩具にさせてはおかない」

「一年坊主が生意気な事言ってんじゃねえ!」
言葉と同時に、先輩の右拳が飛んで来た。
冷静にその拳の動きを見据え、上げ受けで跳ね上げると、がら空きになった先輩の水月に中段突きを叩きこむ。

「グフッ!」という声と共に、先輩の体は二つ折りになり、その場にヘタリこんだ。あっけなさすぎる。
何だよ。散々煽って人を怒らせたくせに、一発貰ったくらいでもう終わりなのか?
駄目だ。たったこれだけで終わらせる事なんてできない。
情けない、立て!これくらいでへたり込んでるんじゃねぇよ!!立てないんなら、俺が立たせてやる!!

床に崩れ落ちる寸前の先輩のわき腹に下段回し蹴りを叩き込む。
今度は 蹴りの入ったわき腹を支点に、先輩の体は"く"の字に折れ曲がり、そのまま壁に激突していった。

ガシャンという大きな音と共に、壁に作り付けのロッカーの上に乱雑に置かれたボールやら、スパイクシュー
ズやらがぼろぼろと床に落ちた。

「中川、大丈夫か?!」
今の音に部の同輩の危機を感じたのだろうか、急にドアが開き、3,4人程中に飛び込んできた。
さらに外にも10人前後の人間がたむろしている。

まずい!中に入られた。外ならともかく、流石にこの狭い部室の中でこれだけの人数を相手にはできない。
どうやって突破しようか……いずれにしても、腕の一本くらいはやられるのを覚悟した方が良い……


「やめろ、お前たちは手を出すんじゃねぇ!」
思いもよらない言葉だった。どういうことだ?

「中川……」

「やめろよ。これは、俺とこいつの二人だけの問題だ。お前たちには関係ない」

「だけどよ。お前がやられてるの、黙って見てるわけには……」

「だから、それが余計なんだよ!……もし、お前らが手を出したら……これが外に漏れたらどうなる?後輩が試合できなくなっても、……ボールを蹴れなくなっても、いいのかよ? 少しは考えろ!」

「だけどな……おまえもサッカー部……

「俺一人くらい、どうとでもなる。ここにいるのは、"元"サッカー部員と、何処の部にも入っていない一年生
だ。"たまたま"ここの部屋が空いていたから、勝手知った気安さからここを使った。そして昔のコネをつかっ
て相手を呼び出した。外にたむろしていたのは、たんなる野次馬根性。ただ修羅場が見たかっただけ。……い
いな!」

何だよ先輩。何でこんな処で後輩想いの事言ってるんだよ?
こんな言葉が吐けるのなら、何で香織の言葉は信じてやれない?何で景子を棄てたり寄りを戻したり、自分の
気分で振り回す?

「……よそ見をするんじゃねぇ!!」
先輩がなにか叫びながら殴りかかってきた。
けれど、もう既に最初の勢はない。ヘロヘロのパンチだ。避ける程でもないパンチのはずだった。

唯、間が悪かった。

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