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メグ姉と僕 -1-

「トシ、この唐揚げ食べた?」
 僕は黙ってうなずく。
 「ね……どう……だった?」
 テーブルに乗った豪華なオードブルと、タッパーに入ったそれをちらちら見比べていた彼女は少し心配そうに僕をのぞき込む。
 僕はひとことも発しない代わりになんどもうなずくと、少し安心したような 表情になると同時にちょっと頬を膨らませた。
 「もう、口いっぱい頬張るなんてお行儀悪い」
 「そんなに怒っちゃだめよ、天野さん」澄んだ声はとても楽しそうだ。
 「俊 之君は天野さんの手作りの唐揚げでお口がいっぱいなんですから。
 さっきから そればかりお食べになってます」
 
 「え?ええ?そうなの?そう……なんだ」急に真っ赤になる。
 「そうですよ。天野さん」別の声も肯定した。
 「トシはここのコールドビー フよりも恵美さんの唐揚げのほうがお気に入りみたいですね」
 
 その言葉には僕も赤くなる。
 「も、もう!からかわないでよ!……克也クン!まるでそれじゃ、アタシがトシを餌付けしちゃってるみたいじゃないの!」
 真っ赤になった彼女はカクテルを……最初はそれがアルコール入りということで断固として拒んでいたはずのそれを……一気に飲み干す。
 けれども彼女は、メグ姉はすごくうれしそうだった。

 相当な難関といわれるK高校に合格したらなにかお祝いをしようと言い出したのはメグ姉だった。
 そのK高校の生徒であり、僕よりひとつ年上のお隣さんでちっちゃいころからよく遊んでいた(というか僕を家来にしていた)けれど、
 中学校に入ってからは少し疎遠になっていた……でも僕がK高校を受験するということで、母さんに頼まれて家庭教師を引き受けた彼女が模試の結果をチェックしながらの提案だった。
 確かそれは「息抜き」という名目でメグ姉と一緒にどこかに遊びに行くようになったころ。
 
 近所でも評判になるくらい綺麗になって、ちょっと近づきづらくなっていた天野恵美が
 実はぜんぜん昔のメグ姉……ちょっと乱暴で、おっちょこちょいでお姉さん風を吹かすのが好きで、でもすごく優しい……と変わっていないことを理解した僕が、完全に彼女に恋してしまったころ。
 
 そしていま、僕「たち」はそのお祝いをしている。
 高森真衣、高森克也の姉弟とメグ姉こと天野恵美、それから僕、青井俊之の四人で。
 二〇畳はたっぷりあるホテルのスイートで、克也くんと僕の高校合格パーティが開かれているのだ。


 そのパーティを四人でやることについて、最初メグ姉はあまり乗り気ではなかった。
 「だってさ、アタシが空いてる日ってこの日だけなんだよ。
 そのあと家族でバンクーバーに行くことになってるし。それに高森さんってアタシ、あんまり親しくないんだよ。
 同じクラスだけど、あのひとすごいお金持ちだからちょっと近づきにくくて。そ、それにね。この日はパパもママも一日留守だからせっかくなんだからトシと二人きりで……その、あの……」
 
 そこまで言いかけて携帯越しの彼女はひどくあわてふためいた。
 「ちゃんとした恋人になるまではキス以上はだめ」
 「ちゃんとした恋人になりたかったらアタシと同じ学校にはいるのよ」
 ものすごく真面目で努力家のメグ姉は僕の告白に
 「よかった……トシったら急によそよそしくなっちゃったから。アタシのこと嫌いになったんだと思ってたの」
 と涙ぐんでOKを出しつつも、ある一線を越えることは決して許さなかったのだ。
 
 そのメグ姉がそこまで覚悟していてくれたことに僕はすごく嬉しかったし、それは待ち望んでいたことであったけれど、
 どこか強引なところがある高森克也と約束してしまった僕は折衷案を出すしかなかった。
 つまり昼間は高森姉弟とお祝いをして、そのあと二人っきりでもう一度お祝いをするという提案を。

 「お屋敷」と言われている高森家ではなく、高森真衣が手配した高級ホテルのスイートでそのパーティが行われることにメグ姉は少し疑問を感じていたようだった。
 けれどもその疑念もルームサービスが持ち込んだ山ほどのオードブルで解けたらしい。
 「高森真衣さんがお料理するなんて聞いたことなかったもの。
 だからホテルなのよ」少し傷ついたような、でも少し誇らしげな表情でメグ姉は手料理の入ったタッパーを高級料理の隣に並べながら僕に囁いたのだった。
 けれども最初のぎくしゃくした空気は美味しい料理とアルコール(平然と高森姉弟がルームサービスに注文し、まったく何の問題もなくそれは届けられた)でほぐれてゆく。
 
 「へえ、そうなんだ。志望校が同じっていうことで仲良くなったんだ。トシと克也クンは」
 メグ姉は何度か僕の家を訪ねてきた克也くんにはまだ話しかけやすいらしい。
 
 「そうですよ。やっぱり難関ですから切磋琢磨しないと」
 克也くんは僕を見た。
 「なんだか克也クンってオトナな言葉遣いなのね」
 メグ姉はくすりと笑うと僕の髪の毛を掻き回した。
 「でも不思議。これでわたしは天野さんとお友達になれたんだから」
 高森真衣はメグ姉に微笑んだ。
 「接点がなかったものねぇ、高森さんとは」メグ姉はまだどこかぎこちなさそうだった。
 確かにキレイだけれどそれ以上に別のなにかの輝きを感じることができるメグ姉と、どこかお人形みたいに見える真衣さんとは僕にも別世界の人間に見えた。
 
 「これからはもっと仲良くなれますわ。だってみんな同じ学校の生徒になるんですもの。きょうだいと……」
 彼女はくすくす笑う。「恋人同士で」
 メグ姉は真っ赤になった。僕と目が合ってさらに赤くなり、それからぷいとよそを向く。
 高森姉弟が声を立てて笑う。メグ姉は向こうを向いたまま隣に座っている僕に身体を押しつける。
 その瞬間、僕はすごく幸福だった。


 きっと僕たちはあまりの幸せに舞い上がっていたのだろう。
 あるいはアルコールが口を滑らかにしていたのかもしれない。
 メグ姉も僕もお互いの関係や秘密を二人に促されるまま口にしていた。
 僕とメグ姉はまだ一線を越えていないこと。
 生真面目なメグ姉に僕は逆らえないこと。押し倒して強引になど考えたこともないこと。
 
 「もてもての天野さん」
 が実はかたくなに純潔を保っていること。
 秘密を口にするたびに、僕たちは逆に幸福になっていくようだった。
 そっとメグ姉の腰に手を回しても彼女はまったく逆らわず、それどころか僕の肩にほっぺを押しつけてくすくす笑う。
 
 「すっかり仲良しの恋人ですね」
 グラスを手にした克也クンが笑った。そのグラスをかちりとテーブルに置く。
 僕は息を呑む。どこかでなにかが変化したように感じたから。
 「真衣、鎮めてくれない?俊之君と恵美さんにあてられたみたいだ」
 スラックスを指す克也くんにその姉はただ「はい」とだけいうと細い指で彼のベルトをはずしてファスナーを下ろし、下着とスラックスをずらして彼の性器を露わにする。
 メグ姉がかすれた悲鳴を上げた。僕は思わず目を逸らしてしまう。
 
 それは一五歳のものとは思えないほど大きくいきり立ち、ごつごつした性器だった。
 その、僕のとは比べものにならないほどまがまがしいモノだった。
 それに真衣さんが当然のようにつやつやした唇を近づけてゆく。
 「真衣」いままで聞いたことのない冷ややかな克也くんの声。
 「ご挨拶は?」
 真衣さんが凍りつく。ちらと僕たちを見た。その瞳はどこか嬉しそうだった
 
 「……克也さまのおちんちんに御奉仕させていただきます」
 びっくりするほど鰓が張った亀頭にキスをしたあと、ピンクの舌を伸ばして真衣さんはれろれろと先端からにじみ出る汁を舐め回した。
 細い指でペニスと睾丸を嬉しそうに刺激している彼女は自身のスカートの裾からレース地のショーツがのぞいていることなど気にもしていない。
 
 「ふむぅぅぅっ……ふぁ……」
 克也くんの足下に跪き、真衣さんは大きく唇を開けて彼のペニスを飲み込んだ。
 ちゅばちゅば、じゅるじゅる音を立て、お尻をもじもじさせながら一心不乱に彼女は弟の陰茎に奉仕している。
 克也くんのペニスを頬張る真衣さんの唇は大きく開き、引き延ばされた口元は美貌を台無しにして無惨で淫らだった。
 
 「真衣。飲ませてほしいかい?それとも」
 克也くんのつまさきが姉の太股の付け根をぐりぐり刺激した。
 「こっちに注いでほしい?」
  真衣さんはまったく迷わなかった。
  僕たちが見ているにもかかわらず
  「セックス、セックスしてください。真衣の子宮にザーメン注いでください」
  と感涙にむせびつつおねだりするのだ。
  
 「きょうだいなのに、ほんとのきょうだいなのに……」
 メグ姉が熱に冒されるようにつぶやくなか、真衣さんはテーブルに手をついて後ろから弟に貫かれて歓喜の声を上げていた。



 「あれ?二人ともはじめないの?」
 姉の中にまったく躊躇なく精液を注ぎ込み、そのあとまったく硬さを失わない肉棒を彼女に後始末させつつ克也くんは笑った。
 
 「ほんとにまだオコサマなんだから。キスをするだけでせいいっぱいなのかな」
 顎まで唾液で濡らしたまま、僕とメグ姉はぼんやりと彼を見上げた。
 二人の交わりのあいだ、僕とメグ姉はお互いの唇を貪り合っていた。
 もっと先へ進みたい。メグ姉を真衣さんのように貫きたい。
 そう思っていた。そうしたかった。
 けれどもメグ姉のお気に入りのワンピのボタンを外そうとする僕に
 「だめ… …トシ……ココじゃだめ」
 と細い声で懇願する彼女に無理強いすることはできなかったのだ。
 
 「可哀想なくらいになってるよ。俊之クンのそこ」
 克也くんが僕のジーンズを指さした。
 「優しい君の心と違って、君の下半身はケダモノになってるじゃないか」
 克也くんの笑みはいままで見たことがないほど冷酷だった。
 
 その彼の下半身に顔を埋め、陰毛に頬を擦りつけつつちゅぱちゅぱペニスを舐め回していた姉の綺麗な黒髪を克也くんはぎゅっと掴む。
 「真衣、トシくんの可哀想なおちんちんも鎮めてあげるんだ。いいね」
 ちゅぽんと硬いペニスが唇から離れ、唾液のアーチが名残惜しそうに架かった。
 
 靴下だけを残して火照った素肌を露わにした真衣さんがふらりと立ち上がる。
 テーブルの周りをゆらりゆらりと歩いてくる彼女がメグ姉にふんわりと微笑んだ。
 そのまま僕の足下に跪くとファスナーを下ろしてぱくりと銜える。
 
 「う、ふううううっ!」
 女の子みたいな声を出して僕は真衣さんの口の中に放出していた。
 それくらいに彼女の口の中は気持ちよかった。
 温かくてぬるぬるしていて、そのうえ柔らかな舌が動くたびに、僕の頭の中はショートして知らぬ間に腰を突き上げていた。
 
 メグ姉の悲鳴のような制止の声も聞こえなかった。
 とっても綺麗な真衣さんの髪をぎゅっと掴んでもっとしゃぶるようにぜんぶ飲み干すように声にならない命令を下していた。
 だから、力なく「だめ、だめだよぉ、トシ、そんなことしちゃだめだよぉ」
とつぶやくメグ姉の手を克也くんが引っ張って立たせ
「恵美さん、ちょっとこっちで見学しようよ」
と、向かいのソファーへと連れていったときには少しほっとしてしまう。
 これで好きなだけ真衣さんの口を犯すことができると思ってしまったのだ。

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