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カウンセリング -1-


「えー、それでその彼氏はり倒して出ってたの?」
「せ、先輩声が大きい」
平日の夕方はお客さんも少ないから、いつもおしゃべりタイムだ。
今日も美由紀先輩相手に恋愛相談。

美由紀先輩とあたしは高校時代、吹奏楽部でいっしょだった。
でもあたしが1年の冬休み、
当時3年生で受験を控えた先輩は突然学校を辞めて連絡がつかなくなった。
生徒の間では、顧問の小暮先生との不倫のせいだとか、
受験ノイローゼになったとか色々噂になったっけ。
でもたしかに、夏の大会まではキラキラ輝いていて女子からも人気があった先輩(実際バレンタインのチョコは学校一って豪語してた)が、
冬休みにはいる前は激やせしてちょっと怖かった。
で、あたしも無事高校を卒業し今年から都内の大学に進学、
サークルだバイトだってことでアパートの近所のコンビニでバイトを始めたら
偶然に美由紀先輩と再会した。
再会した美由紀先輩は、元の先輩に戻っていた。
っていうより以前にも増してキラキラ輝いていたし、
なんかものすごーく色っぽくなってた。
胸が大きいことにコンプレックスを持ってたのに胸元を強調するようなシャツを着てものすごいミニスカート、
美由紀先輩だからセクシーだけど普通の女の子が着たらただの変態だよ。
当然、バイト仲間やお客さんの中にも先輩に言い寄るバカが少なくなかったけど、
みんなかるーくあしらわれていった。
あたしにも私生活のことはほとんど話したがらなかった。
当然おしゃべりタイムは、あたしのお悩み相談コーナーとなっていった。


「葵は純情っていうか、世間知らずっていうか、
男の子のことわかってなさ過ぎ。
そのくらいの年のこってエッチすることしか考えてないんだから。
その気がないなら、誤解されるようなことしちゃ駄目だよ。」
「えー、でもDVDみてたら膝の上に頭乗せてくるから、
よしよししてあげたら、
頭ひっくり返してまたの間に顔を埋めようとしてきたんですよ。
そりゃあおこりますよ普通。」
「ハハハハ…。一人暮らしの男の子の家で二人っきりでビデオ見てる時に、
膝枕許してくれたらOKだと思うよ、ふ・つ・う」
先輩が小馬鹿にした口調でいってきたからちょっとむっとして、
「あたしは、結婚するまでバージンでいいんです。
だいたい先輩ビデオじゃなくてDVDですよ。ふっ・つっ・うっ。」
って店内に響き渡るような声で言い返すと先輩が
「いらっしゃいませ」
え!もしかして今のお客さんに聞こえた?
真っ赤な顔で頭を上げると店にはあたしと先輩以外誰もいなかった。
「もう、先輩っ!」
怒りとあきれが混じり合ったような顔で先輩をにらむと
「さ、仕事、仕事」
と笑いながら奥に入っていった。



あたしとあたしの彼氏の聡との出会いは、
高校2年生までさかのぼる。
当時、クラスの女子の間で一番人気だったのが聡
剣道部次期主将であり春の大会では県ベスト4、
後一歩で全国大会ってとこまでいった。
見た目はジャニタレ風、
頭は悪かったがこれで人気が出ない方がどうかしている。
あたしはっていうと、そこそこ男の子にはもてたと思う、思いたい。
ラブレターなるものも何通かもらった。
メールアドレスも頻繁に聞かれたが返事がめんどいので返さないでいた。
当時はクラブ一筋っていうか男子に興味がなかった。
友達には、ちょっと潔癖性なんじゃないってよく言われたっけ。
実際小学校6年生の時に、お父さんのベットの下からイヤラシイ写真集を見つけて以来、
それがちょっとトラウマになって男の子を避けるようになってた気がする。
友達としてバカやってるならいいんだけど、
ちょっとでも男女の関係の臭いがしてくるともう駄目だった。
実際、男子の間では真性のレズだから絶対落とせないって噂が流れてたらしい。
で、バレンタインデーに誰にもチョコをあげなかったらまた変な噂が流れると思って、
クラス一番人気、女子の9割まで義理でも本命でもあげていた聡にとりあえずチョコをあげた。
我ながら無難な人選だと思った。
その後、ホワイトデーにおかえしをもらったわけだが、
あたしは明らかな義理チョコにまでお返しなんてまめな奴だなーなんて思いながら、
ありがたくちょうだいした。


高3になって、どうしても東京に出たいあたしはゴールデンウィーク明けにはクラブを引退し、
死ぬほど勉強した。かなり名の通った大学でないと絶対に
うちの親は地元の大学にしとけっていうに決まってるから、必死になって勉強した。
そんなあたしを横目に聡は秋になっても
クラブの後輩を指導したりして就職活動とかもしているように見えず。
どうすんだろとか思ってた。
っていうのは嘘で他人を構っている余裕もなく、
後からそういえばって感じで思いだしただけなんだけどね。
勉強の甲斐あって、某有名私立大学に合格したあたしは、
地元の国立しとけっていう親の反対も無事にクリアーし(試験をさぼって図書館で本を読んでただけなんだけどね)
晴れて今年の4月から一人暮らしと、
東京での大学生活を勝ち取った。
入学式も終わり、クラス分けのオリエンテーションにでるために一人で席に座っていると、
後ろの席から
「これで3年連続同じクラスだよな、いや大学は4年間同じだから7年か葵」
って声が聞こえてきた。
え、って後ろを振り返るとそこに聡がいた。
「あんた、大学間違えてない?」
って思わずいってしまうと
「ひっでーなあ、こう見えてもやるときはやる男やちゅーねん。」
って変な大阪弁で返してきた。
「剣道も勉強も手抜きせず。がんばったからね。
12月からさすがに部には通ってなかったけど。」
「夏大あきらめてゴールデンウィーク明けで引退したあたしに対しての嫌みか。おい。」
って返すと、さすがに苦笑しかしてこなかった。
それでも、あたし達は高校の同級生ってこともあり、
一緒の授業を取り、一緒のサークルに入り(大学に進学したのは、剣道を辞めるためだったらしい)、
一緒に飲みに行ったりした。


でも、あたしの性格のこともありアパートの住所は教えなかったし、
聡の家に遊びに行くときも複数で行き二人きりになることを避けていた。
無意識のうちに親密になるのを避けてたような期がする。
そのころ、アルバイト先で美由紀先輩とも再会することとなった。
聡はバイトもせずに
「剣の道とラケットの道は相通じるものがある」
とかいってサークルのテニスにのめり込んでいった。
まあ、そんなこんなで大学生活を楽しんでいたのだが、
学園祭の打上げの帰り聡があたしが下りる駅で突然一緒に下りてきて
「中川さんからつきあってくれっていわれたの本当?」
って聞いてきた。
「まあ、ね」
ってあたし。
「どうするの、つきあうの?」
って聡。
あえて二人きりになることを避けてきたのに
突然二人きりになってちょっとむっとしたあたしが
「そんなこと、あんたには関係ないじゃん。だいたい、あんたの駅は四つ先だよ」
って返すと急に聡があたしの腕をつかんで
「高2のホワイトデー覚えている。」
っていってきた。いきなり腕を捕まれて心臓が口から飛び出してしまいそうなほど、
ドキドキしながらも妙に冷静に
「あー、腕時計をくれたやつね。あんたもまめね、
バイトもしてないみたいだし実家って結構な金持ちなんだったけ。」
と返した。
「僕がいくつチョコもらうか知ってる?三桁はいくんだよ。
全員に時計なんか返してたらいくら小遣いもらっていても足りるわけないじゃん。
ホリエモンでもあるまいし。
葵が好きなんだよ。」
って言いながらいきなり唇を重ねてきた。
急なことに頭が真っ白になってその後のことはよく覚えていないのだが、
聡に言わせるとあたしは彼を思いっきり突き飛ばして、
涙目で走っていったらしい。


わけがわからないままアパートに帰ると、
すぐに美由紀先輩の携帯に電話をした。
「先輩、聞いてください」
泣きながら、美由紀先輩に事情を話すと何時間もだまって話を聞いてくれた。
今考えると、電池切れするのだから充電しながら電話してくれてたんだな、きっと。
ひとしきり話して落ち着きを取り戻すと先輩が
「で、あなたはどうしたいの」
って聞いてきた。
「どうしたいって……。」
「よく休憩時間に大学生活にことを話してくれるけど、話の9割は聡くんのネタだと思うよ。」
「そうですかぁ」
自分自身意識したことがないつもりだったので、改めて先輩に言われると、
急に意識しだしてすっとんきょな受け答えしかできない自分がいた。
「もう一度、心の中の自分と会話してみて、
答えを出せば、真実の答えが出てくると思うよ。」
って先輩は言い残して電話を切った。
電話を切った後、先輩に言われたことを思い出して心の自分に問いかけてみると、
なにか心の底から
「聡が好き、大好き。きっと好き。大学で再会したときから、
ううん最初にあったときから、ずっと好きだった。」
って声が聞こえてきた気がした。いいえ、気じゃなくて本当に聞こえた。

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