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カウンセリング -5-

「精神と肉体と常識のコントロールか……」
帰りの電車の中で、
先生に言われた台詞を思い出しながら自分なりに考えていると、
パパパッパッパー、間抜けな音楽が車内に流れた。

携帯マナーにするの忘れてた。
だいたい聡の指名した着メロって間抜けなんだよ。
あたしは、考えているのをじゃまされてたのと気恥ずかしさで、
ちょっとムっとしながら電話に出た。
「おい、葵。今日はどうしたんだよ。
明日サークルのボックスで言訳するって、
俺が誰ほど心配してたかわかってるのかよ。
昨日は昨日で突然メールで時間変更するし。
その後、電話してもでないし。
最近のおまえってどうかしてるよ。
本当に俺のこと好きなのか、なあ葵」
って電話の向こうから聡が怒鳴ってきた。
「ごめんごめん。
今日、バイトの先輩、聡に話したことあるよね美由紀先輩。
彼女に紹介された店に行くことになったの。
先輩は2時間ぐらいっていってたけど、
あたしのせいでこんな時間までかかちゃったの。
何度も電話しようと思ったけど、携帯いれた鞄を、お店に預けたから…。
ごめんごめん。何回言ったら気が済む。
だいたい、あたしもこの間のこと許したわけじゃないよ。
とりあえず、電車の中だから切るね。詳しくは明日。
後30分ぐらいで帰るから、
心配なら確認のお電話でもしたら、
でもあたしはシャワー浴びてたり寝ているときに
掛かってきた電話を無理してでる趣味はないけど。
最後に一言だけ、聡、愛してるよ。
言われないとわかんない、ばーか」
かなり頭にきてたのでそう一気にまくし立てると、
携帯を切ってドライブモードにした。


車内を見てみると、酔っぱらいのおっさん二人組がこっちを見て笑ってる。
最後の愛してるの声が大きかったのかな、恥ずかしー。
「常識のコントロール」
あたしは、心の中でそうつぶやいた。
「聡に、大声で愛してるって言うのは平気なのに、
酔っぱらいのおじさんに聞かれるのは恥ずかしい。
例えばあの二人がサボテンだとして…」
酔っぱらいのおじさん2人組を見ると。
こちらにウインクなんかしながら合図してきた。
気持ちわるーい。
やっぱり、付け焼き刃じゃ出来ないか。
て、今日したことロールプレイでそんなんじゃないし。
とりあえず寝たふりして、駅に着いたら全力で帰ろう。
あたしは電車が駅に到着するやいなや、
全力で電車を降り走って家に帰った。
帰りながら
「例えばあの二人はサボテン、サボテン」
って呪文のように唱えていた。
家について、時計を見るともう12時半をまわっていた。
あたしはシャワーだけ浴びると今日のことを思い出すまもなく寝ていった。


次の日、あたしの足取りは重かった。
まー軽いわけはなかった。
色々言訳考えたり、正直に話しそうかとも考えたけど、まあ出たとこ勝負。
大丈夫、聡は底なしにやさしいから、きっと許してくれるよ。
なんたって、眠れる 美 女を3年半も待ってくれた王子様なんだから、きゃー。
とか自分を鼓舞しながらボックスに向かった。
いつもなら必ず誰かいるはずのボックスに、今日は誰もいなかった。
不思議に思いながら、鞄をロッカーに入れて会議椅子に座ると、
テーブルの上に一通の手紙が置いてあるのが見えた。
葵へって書いてある?まさかねぇー。
手に取ると、確かに葵へって書いてた。
なに、まさかドラマとかで見るみたいにお別れの手紙じゃないよね。
だいたい、あたしたちの場合、
別れても新学期に出会うし、今更別れても…。
とりあえず、手にとって読んでみよう。
あたしは、ドキドキしながら手紙を開けた。
手紙にはあたしに出会ったときのことや、
あたしに惹かれたこといろんなことが書いていた。
別れの手紙だ。きっと別れの手紙なんだ。


あたしは涙目になりながら、それでも読むことを辞めなかった。
手紙の最後のページに、
「俺は、葵と出会えて本当によかったよ。
今でも愛と感謝の気持ちは変らない。
でもどうしても、いやだからこそ葵に言わなくちゃならないんだ。
これを読んだら、窓の外を見てくれ。
今でも、大好きな葵へ」って書かれていた。
あたしは昨日わけのわかんない占い師の所に行ったことを本当に後悔した。
一週間前のこと。
そういえば年末に喧嘩したときは絶対にあたしの方が悪いのに聡が謝ってくれたっけ。
なにしてたんだろ、あたし。
10分位大泣きした後、落ち着きを取り戻した
あたしは書かれてることを思い出して我に返り、
窓の外を見るためにカーテンをあけた。


窓の下を見ると、サークルのみんながいてその中心に聡がいた。
へ?
「あおいー。驚いたか。ばーか。
本気で泣いてんじゃねーよ。
愛してるよ、心の底から。
これからもよろしっく。」
って聡がサークル棟全体に響き渡る声で怒鳴ってきた。
「ばーか。絶対に許さない。
お望みなら、別れてあげるわよ。
さ、と、し。
あ・い・し・て・る」
あたしは、涙と怒りと呆れと笑いときっと全部足した本当のあたしの顔で聡に怒鳴り返した。
もちろん、サークル棟全てに響きわる声で。
「俺も高校時代の大切な先輩の用事なら、
お前との約束より優先するかもしれないもんな。
今日から一週間毎日、家に晩飯を作りにくる。
来週の日曜、ミニスカートはいて俺とディズーニーランドで夜までデート
で許してやるけど、どうだ」
「ばーか。一週間前のことがあるだろ。
あたしはまだ許したわけじゃないよ。
デート代はあんたのおごり。
ミニスカートをはいてほしいなら、
あたしにプレゼント。
いっしょに買いに行く時間を今週必ず作る。
で手を打ってやるよ。
今日は、何食べたい、聡・く・ん」
「ハンバーグかなあ。
じゃあ、商談成立だな。
さあ、皆さんお手を拝借、よー!!」
聡の周りには誰もいなかった。
みんな呆れたんだ。そりゃそうか。
でも、春の暖かい風が二人を包んだ。
「それはそうと聡。あんた今日追試でしょ。
もし落ちたら、来年からあたしのこと葵先輩って呼ぶ羽目になるよ。いいの」
「おっと、そうだった。
じゃあ、今夜楽しみにしてるよ。
いつもはケチャップだけど、ちゃんとデミグラスソース作ってくれよ。
葵先輩」
「ばーか」
聡は走って校舎に消えていった。


「聡くんってほんと格好いいよね」
いつの間にか上がってきた友達が、声をかけてきた。
「まあね。」
あたしは否定もせずのろけてしまった。
本当に格好いいんだもん。
のろけたんじゃなくて事実を冷静に答えただけ、まあねと。
さあってと、今日はバイトもないし。
腕によりをかけて作るぞ。
あたしはそそくさとボックスを後にしてスーパーへと急いだ。

学校をでる瞬間心の中心から

「例えばボクが葵くんの恋人だとしたら…」

って おじさん の声が聞こえてきた気がしたが、
その時のあたしは気にとめることもなかった。



「ごちそうさま。あー、美味かった」
「お粗末でした。」
追試の終わった聡が帰ってくると、あたしたちは一緒に食事を作り、
そして食事をしながら一週間の穴を埋めるかのように喋った。
「で、その美由紀先輩ってのに紹介してもらった占い師、えーと…」
食後のお茶を飲みながら聡は昨日の遅刻の理由をしていると、最後にそう聞いてきた。
「博仁先生ね」
「そうそう、その博仁先生に、なに占ってもらったの?8時間も…」
聡が下世話な顔で興味津々にあたしに聞いてきた。
「さっきから8時間じゃなくって、1時間半位予定よりオーバーしてしまったっていってるじゃん。
で、なーんかばつが悪くなって言訳の電話できないまま先輩とそのまま食事に行ってしまったて。
ごめん、わざと言ってる」
「ごめん、ごめん。俺だって心臓が破裂しそうなくらい心配してたんだから、
そのくらいの嫌みいわせてよ。で、3時間以上も何相談してたの」
猫舌の聡はお茶をふうふうしながらそう続けた。
「いろいろよ。将来のこととか、学校のこと、バイト先の人間関係のこと…」
本当の相談内容を聡に言えるはずもなくあたしは無難な答えを返した。


「俺のことは。俺の」
「もちろん恋愛相談もしたよ」
恋愛相談しなかったてのも不自然だし、あたしは素直にそう答えた。
「内容は、内容」
「うーん、高校時代の夢はツアコン、でも地元の旅行会社をみても温泉地のパンフレットしか置いてなくってこれはやばい。
温泉地の宴会場でおじさんたち相手にお酌するのが私の夢なわけない。
だから絶対東京に…」
「そうじゃなくって、将来のこととかじゃなくって、俺とのこと、俺との。
わざと言ってる」
聡はあたしの口調をまねしながら、そういってきた。
「はは、何聞いたんだろ。えーとあたしが水瓶のO型で、聡が天秤座のBだから…。
相性はよかったのかな、悪かったのかなあ。あれー。聡の総画と天画が…」
あたしが焦りながらしどろもどろになってると、
「その先生って、何で占うの占星術?姓名判断?」
って意地悪そうに聞いてきた。
「よくわかんないよ。あんたとのことなんて占ってもらう必要ないもん。
もう別れるから。でも今度は、ちゃんと聞くようにするよ。ばーか」
あたしはごまかすために、この場を冗談で切り抜けることにした。


「今度って、また行くの?」
ちょっと、マジな声で聡が聞いてきたから。びっくりして
「うーん。機会があればね。でも、まあ占いなんて興味がないから行かないかな、もう」って返した。
「ときに聡、あたしがコーヒー党って知ってて、何でアールグレイなんか食後に出てくるんだ」
あたしは、場の空気を変えるために話題を変えた。
「えー、コーヒー切らしてるから今日の帰りに買っててメールしたら。
テーブルの上にこれが置いてたんじゃん。買い間違えた?ぼけてる、葵」
「おかしいなあ。モカブレンドっていつも決めてるから、無意識のうちに手に取ったとき間違えたのかなあ。
誰か棚に返すとき間違えたのかなあ。」
あたしは、買い物したときのことを思い出そうとしたが、いつものことなので思い出せるはずもなかった。
でも、このベルガモットの甘酸っぱい香り最近どっかで嗅いだ気がする。
どこでだろ?いい香り。頭の中が真っ白になりそう。
「まあ、たまには紅茶も悪くないね」
あたしが意識を取り戻すために自分に言い聞かせるように独り言をつぶやいた。

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